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ハードロックを入り口にカントリーとフォークに辿り着いた藤原基央 〜BUMP OF CHICKEN「ガラスのブルース」〜

2019.03.11

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1999年のファースト・アルバムのリリースから、今年で20周年を迎えるBUMP OF CHICKEN(バンプ・オブ・チキン)。
デビュー以来多くの音楽ファンやバンドに影響を与え、今なおトップクラスの人気を誇るロックバンドだ。

彼らの楽曲はその時々において大きなヒットを記録し、性別や年齢、時代を問わず聴き継がれている。
BUMP OF CHICKENが作り出す音楽の根底には、彼らが高校時代に出会ったアメリカの音楽たちがあった。

メンバーの4人は全員千葉県佐倉市の出身。ヴォーカルの藤原、ギターの増川、ベースの直井、ドラムスの升は保育園の頃から同じ環境で育っていた。
なかでもソングライターである藤原は、小学生の時から音楽にのめり込む。

それは彼が小学校低学年だった頃、姉の影響で一緒にMTVを観ていたときだ。
ガンズ・アンド・ローゼスやエアロスミスのような派手なロックミュージシャンたちに心を奪われたという。



藤原はそのことがきっかけで、テレビを通して様々なアーティストを聴くようになった。

やがて彼は中学生になり、仲の良かった直井や升をバンドに誘い、現在のBUMP OF CHICKENの前身となるバンドが結成された。
のちにギタリストとして幼馴染の増川が加わり、小学生の時から顔なじみだった4人で活動していくことになる。

彼らはパンクロックにのめり込み、グリーン・デイを彷彿させるような英語詞の楽曲を制作していた。
その傍ら、各々の好きな音楽ジャンルのコピーバンドも定期的に続けた。
藤原は自ら音楽の原点であるハードロックを自ら演奏するうちに、コピーしてきたバンドたちのルーツにも興味を持ったという。

「ハードロックの人がやるバラードが好きだということに気付いて。古き良きアメリカの匂いっていうか、ジーパンが破れている感じっていうのかな(笑)。『この感じ、なんだろう?』って思って。」


(音楽ナタリー インタビュー『BUMP OF CHICKEN 結成20周年を飾る新作と20年の礎たるルーツミュージック』より)

「古き良きアメリカの匂い」に辿りついた彼は、ハードロックの源流であるカントリーやフォーク、そしてブルースと出会ったのである。
藤原はオールマン・ブラザーズ・バンドやママス&パパスのような、カントリーやフォークをロックと結びつけたアーティストの音楽を聴くようになる。




そうした彼の探求はオリジナル楽曲にも反映されていく。
1997年、カントリーやフォークの土着のメロディと90年代のロックが持つ繊細な荒々しさが同居した楽曲「ガラスのブルース」が誕生した。
藤原はこの曲で初めて、日本語の歌詞を書くことに挑戦している。



一匹の猫の物語を通して死生観を描いた言葉と、カントリーやフォークにも通ずる哀愁と温かみを兼ね備えたメロディ。
そして荒々しい演奏の中で響く藤原のしわがれた声は、まさにBUMP OF CHICKENにしかない魅力を感じさせるものだった。

この楽曲でアマチュアバンドコンテストの全国大会で優勝した彼らは、わずか17歳ながらもインディーシーンで注目を集める。
そして1999年にはデビューアルバム『FLAME VEIN』をリリース。
1曲目には「ガラスのブルース」が収められた。
そこから約1年でメジャーデビューを果たし、トップバンドへの道を駆け上がっていく。

デビューから20年が経った今も、BUMP OF CHICKENのライヴではほぼ毎回「ガラスのブルース」が演奏される。
ルーツの探求とオリジナリティの模索の果てに生まれたこの楽曲は、彼らの原点であり続けているのだ。

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