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レミー・キルミスター27歳〜初めて踏んだアメリカの地、L.Aのホテルで書いた楽曲“モーターヘッド”

2023.12.05

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ヘヴィメタル界の重鎮モーターヘッドのボーカル&ベースを担当し、HR/HMシーンにおけるカリスマ的存在だったレミー・キルミスター。
1945年、彼はイギリスのスタフォードシア州ストークオントレントで生まれ、ウェールズのアングルシー島で育った。
少年時代からライヴ通いし、駆け出し時代のザ・ビートルズのステージを実体験している。
1960年代、マンチェスターでバンド活動をスタートさせた彼はロンドンに出ると、ジミ・ヘンドリックスのローディーを経験することとなる。
北インドの太鼓の一種“タブラ”を使用した異色ロックバンド、サム・ゴパルでボーカルとギターを担当した後に、1972年(当時26歳)にサイケデリックロックバンド、ホークウインドにボーカル&ベーシストとして加入する。
翌1973年(当時27歳)から約2年間にわたり同バンドの全盛期を支えたが、ドラッグの問題などで1975年に解雇される。

「ホークウインドってのは、当時としちゃドえらい見世物だったと思う。いわゆるピッピー風のラブ&ピース的グループとは一線を画してたんだ。強烈な色とりどりの照明を大量に使いながら、バンド自体はショーの間ほぼ全編暗闇の中に居たんだよ。俺達の頭の上では壮大なライトショーが展開していた。18のスクリーンを使って、溶けてゆくオイルとか、戦争や政治的なシーン、奇妙な標語やアニメーションなんかを次々に流すんだ!」


彼らがステージに登場すると、大音量の演奏が響く中、ダンサー達がメンバーの横でのたうち回り、アシッドで飛びまくったオーディエンスがフロアで踊りまくっていた。

「あのバンドに入って一番良かったことは、イングランド以外の場所で沢山プレイする機会を得られたことだ。俺はそれまでほとんど長期で旅をするなんて経験がなかったからな。俺にとって人生初の海外ライブは、パリのオランピア劇場だった。機動隊がゲシュタポみたいに出動してきやがって暴動になりかけてたショーを中断させたんだ。」


1973年、彼は27歳を迎えた年に初めてアメリカへと渡った。

「あれは確かアルバム“Spase Ritual”をリリースした直後だった。俺はすぐにアメリカが好きになった!際限のない馬鹿騒ぎだったぜ!イギリス人の俺にとっちゃ、とてつもねぇエルドラド(黄金郷)に辿り着いたような気分だったよ!」


彼らの最初の全米ツアーは、フィラデルフィアからスタートした。
そこからニューヨークへと北上し、ヘイデン・プラネタリウムでプレイをしたという。

「ちょうどコホーテク彗星が接近中だったんだよ。わかるだろ?俺達はそういう宇宙的なバンドだったからな!俺が初めてアリス・クーパーに会ったのもあの時だったし、スティーヴィー・ワンダーも来てたな!」


バンドはアメリカ大陸を横断しながら、ほぼ絶え間なくアシッドを摂取していた。
L.Aに辿り着いた時、彼はその景色と自由な空気に心から感動したという。
そこで彼はバンドのために“Motorhead“という曲を書いた。
サンセット大通りのハイアットホテル。
そこはレッド・ツェッペリンが破壊行為を繰り返したことでも有名になったホテルだった。


「俺は朝の7時半から、ハイアットの部屋のバルコニーで、頭のてっぺんから声を張り上げてたんだ。通りをパトロール中のパトカーが何度か停まって、警官が降りてきてたな。だけど呆れたように首を振って、また車に乗り込んで去って行ったよ。」


その二年後、彼は北アメリカをツアー中にコカインの不法所持で逮捕される。
以前から彼の暴走っぷりを煙たがっていたメンバーは“渡に船”とばかりに俺をクビにした。
同年にあたる1975年、彼は大音量で演奏するフリークアウトミュージックをコンセプトにした自らをフロントマンとするバンド、モーターヘッドを結成する。
ホークウインド用に書いていた楽曲名をそのまま流用してバンド名もモーターヘッドと命名した。

「俺は新しいバンドでMC5のような速くてささくれだった音を打ち出したかったんだ。そこにリトル・リチャードとホークウィンドの要素を放り込んだようなのを目指したわけだ。結果としてほぼそれに近いバンドができたもんな!モーターヘッドは根本的にブルースバンドなんだよ。」




<引用元・参考文献『レミー・キルミスター自伝 ホワイト・ライン・フィーヴァー』レミー・キルミスター(著)田村亜紀 (翻訳)/ロフトブックス >





【佐々木モトアキ プロフィール】
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
http://www.tapthepop.net/author/sasaki

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