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尾崎紀世彦の大ヒット曲「また逢う日まで」の誕生エピソード

2024.03.06

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1971年(昭和46年)3月5日、当時28歳だった尾崎紀世彦の「また逢う日まで」(日本フォノグラム)が発売された。
同年の洋楽/邦楽ヒットソングといえば…

【洋楽】
1位「Joy To The World 」/ スリー・ドッグ・ナイト
2位「Maggie May」/ロッド・スチュワート
3位「It’s Too Late」/キャロル・キング

【邦楽】
1位「わたしの城下町」/小柳ルミ子
2位「知床旅情」/加藤登紀子
3位「また逢う日まで」/尾崎紀世彦

NHK総合テレビが全番組カラー化を実施し、『仮面ライダー』の放映がスタート、第48代横綱・大鵬が引退表明し、マクドナルド日本第1号店が銀座にオープン、そしてアポロ14号の月着陸に世界中が湧いた年でもある。

若かりし頃の尾崎は「芸能界は嫌いの上に大がつくほど。歌う場所があるからいるだけ。」と、公言していたという。
英会話を学べるホテルマンを養成する専門学校に通っていた時に、ハワイアンバンドを結成。
続いてウエスタンバンド、コーラスグループ「ザ・ワンダース」にギター担当で参加。
解散後にナイトクラブなどで歌っていたところ、オーディションに通りデビューへの切符を手にする。
それは1970年のことだった。
心機一転、ソロ歌手としてキャリアをスタートさせた彼にとっての2ndシングルとなったのが同曲である。
楽曲のクレジットには、日本の歌謡/ポップス界の作家陣で最高峰とも言える阿久悠(作詞)と筒美京平(作曲)の名が記されている。
この歌は当初、三洋電機のルームエアコンのCMソングの候補曲として筒美京平が作った曲にやなせたかし(アンパンマンの生みの親)が歌詞を付けて、女性歌手の槇みちる(60年代を代表する元祖アイドル的な存在)がレコーディングをしている。
しかし、スポンサーの方針変更により最終段階でボツとなり、その後、同じ曲に阿久悠が安保闘争で挫折した青年の孤独をテーマにした歌詞を付け「ひとりの悲しみ」というタイトルで作り直す。
それをズー・ニー・ヴーというグループが歌ってリリースしたのだが…後に黄金コンビとなる阿久・筒美をしてもヒットにはいたらなかった。


当時、尾崎紀世彦を担当していたプロデューサーがこの曲を聴き「このメロディーをどうしても彼に歌わせたい!」として、阿久に詞の書き換えを求めたところ、阿久は「一度出したものを変える気はない」と拒否。
それでもあきらめなかったプロデューサーの熱意に押される形で阿久は書き換えを承諾する。
歌詞の内容を学生運動に夢破れた青年をテーマにしたものから、同棲していた部屋から2人が出て行く男女の別れのシーンを描いたものにガラリと変え、タイトルも変更して作り直すこととなる。
発売からすぐに火がつき、オリコンチャート1位を獲得。
当時、この歌が有線放送やテレビやラジオから流れない日はなかったという。
同年12月31日に、尾崎は第13回日本レコード大賞・大賞と第2回日本歌謡大賞・大賞をダブル受賞する。
阿久・筒美コンビとっても、最初の日本レコード大賞受賞曲となった。
同日に開催された『第22回NHK紅白歌合戦』に尾崎は白組トップバッターとして初出場している。



60年代後半、世界では若者達の文化や価値観が大きな“転換期”を迎えたと言われている。
そして1970年代初頭…日本では安保闘争・学生運動の熱が少しずつ冷めてゆく中、一部の若者たちの間には得も言われぬ敗北感と挫折感が漂い始めていたという。
同棲生活を送りながら青春の日々を過ごしていた恋人達が、いつしか寂しさや虚しさを感じ…別れてゆく。
そんな恋人達の姿が、当時の“時代の空気”とマッチングしていたのかもしれない。




こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの活動情報です♪

【佐々木モトアキ公演スケジュール】
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【佐々木モトアキ プロフィール】
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【TAP the POP佐々木モトアキ執筆記事】
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