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バンバンバザール──福岡に拠点を移して広がった歌と表現、5年ぶりの新作とバンドの現在について訊く

2018.03.29

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1990年の結成以来、全国各地をツアーで駆け回ってきた〈バンバンバザール〉。ジャグ・バンドとしてスタートし、ジャズ、ジャンプ・ブルース、フォーク、カントリー、ラテンなどのルーツ・ミュージックを咀嚼したサウンドに、情緒あふれる歌を乗せたグッド・ミュージックを伝え続けるライブ・バンドだ。

そんな彼らは、15年以上続く完全手作りの野外フェス〈勝手にウッドストック〉の運営や、自ら立ち上げたレーベル〈HOME WORK RECORDS〉からの作品リリース。さらにはアコースティック・ライブやトークイベント、ワークショップなど多様に使えるイベントスペース〈LIV LABO〉を福岡市内で運営するなど、インディペンデントなアクションを展開してきた。

活動拠点を東京から福岡に移したりと、さまざまな変遷を経て生まれたのが、ニュー・アルバム『えとらんぜ』。5年ぶり15作目となる新作について、そして地方へ移住することで広がった表現について、リーダーの福島康之(ボーカル/ギター)、黒川修(ベース/コーラス)に語ってもらった。



──2013年にアルバム『ラブレター』をリリースして以来、5年ぶりの新作となるわけですが、この5年間はバンバンバザールにとっても、大きな変化があった年月でした。

福島 もともと福岡に〈LIV LABO〉を作ることになったのに合わせて、自分たちで運営するレーベルや会社自体を福岡に移すっていう動きになって。その中で福岡県出身の黒川が、地元のFM局でラジオ・パーソナリティとして生放送の番組を持つ話もあって、だんだん流れが西向きになってきたんだよね。

──2013年に福岡市にオープンしたLIV LABOは、どういった目的を持って設立されたんですか?

福島 自分たちの人間関係も活かせたり、あとは新しいものを発信できる、その場所自体がメディアになれるようなものを作りたいなって思ったのがきっかけ。それは、僕らがずっと続けてきた〈勝手にウッドストック〉でやってたようなことを、定点でやりたいっていう考えがまずあったと思う。それを作ろうとした時に、東京だったらどうなんだろうって感じもしたし、地方は地方で逆に〈村〉っぽくなっても面白くない。あの都市だったらどうだろう? 田舎だったらどうだろう? と、いろんな選択肢を考えた中で、福岡はすべてにおいてベストだった。都市で人の出入りもあるし、文化状況を考えても、今から何かを作るんだったらいいかなって気がしたんだよね。

参考記事:陸の孤島は音楽の桃源郷? 15回目を迎えた日本一快適な野外フェス「勝手にウッドストック」

黒川 それに福岡って、ライブをする会場の選択肢が少なかったんですよね。こじんまりしたカフェだともの足りない。かといってライブハウスだと規模が大きくなりすぎる、その中間がぽっかり抜けてた。バンバンバザールはカフェみたいな小規模のライブも全国各地でよくやるんですけど、僕らはそういうの得意だから、どんな場所でも自分たちで機材を持ち込んでライブができるけど、みんながみんなそういうバンドばっかりじゃないので。そういったニーズも見越して、リーダーはLIV LABOを作ったんだと思います。

──実際、東京のバンドがライブやトークイベントを行ったりと、各地のバンドと福岡の音楽ファンのハブとして機能しつつありますよね。

福島 僕らもLIV LABOを作ったおかげで、会ったことがなかった下の世代のバンドマンと知り合えるし、LOFT PLUS ONEで開催されるトークイベントをやってる人たちにも、自由な発信基地として使える場所って認知されてきたしね。イベントがない日はダンススクールのレッスンに使ったり、ウクレレの教室があったり。フラメンコの教室に通ってる地元の人が、LIV LABOっていう場所自体を気に入ってくれて、ここで開催されるライブを観に来るようになったり。場所っていうものから、いろいろ生まれてくるんだなって実感してます。


──黒川さんはもともと福岡県北九州市出身で、上京後バンバンバザールに加入して東京を拠点に活動していましたが、2014年にUターンで福岡市に移住して。福島さんは東京都新宿区出身で、2015年に福岡市に移住されました。ここ4、5年ぐらい、福岡という町はカルチャーや生活の部分での注目度が高くなっています。

福島 都市だけどコミュニティが小さくて、まわりに海や山もある。そういう環境のよさもあるから、移住してくる人も多かったと思いますね。

黒川 程よい距離感で、関東だったら湘南に引っ越すみたいな感覚で福岡をチョイスする人も増えてるのかも。住んでみると、同じ1時間の使い方が全然変わりますしね。

福島 うん、福岡に引っ越してから、時間増えたような気がする。それもあって、やっとニュー・アルバムの制作に取り掛かれた感じもあるからね。僕らの気持ち的にも、無理にアルバムを作らなきゃいけないって思わなくなってきたし、自然に、目の前で変わってくる情景を捉えられればいいなと思って。移住も含めて刺激になったし、自然に考える時間ができるようになったのが、この2、3年に起こったこと。自然に音楽に取り組んでいける環境が、だんだんとカタチになっていったのかな。

──アルバムを定期的に作らなきゃいけないとか、リリースがないと話題にならないとか、いわゆるバンドの定説みたいなものとは違う方法論を、バンバンバザールは身をもって実践してきたバンドですよね。もうひとつの変化といえば、メンバーが福島さんと黒川さんの2人体制になって、ツアーごとにいろんなミュージシャンを招き入れた異なる編成でライブを行って、サウンドに多彩なバリエーションが生まれた。

福島 そうすることで、音楽的にはかなり自由になった部分があるんだよね。いろんな編成で、違ったメンバーといつもセッション的に捉えながら演奏できるから、毎回ライブが面白いんですよ。

──ミュージシャンではないので想像つかないんですが、ああいう風にライブごとに編成の違うのはやりにくくないんですか?

黒川 やりにくくはないですね。毎回違うから「今日はここがこうだったね!」って楽しんでる。

福島 たぶん、そこには到達点を見出してないのかもね。

黒川 逆に、到達点を目指してる編成もあるんですよ。ホーンセクションを入れた〈バンバンバザールDX〉編成なんかはパッケージとしての到達点を追求するんだけど、普段やってるライブは、知ってる仲間と楽しみたいって感覚が強いから。体調が悪かったら体調悪いになりにがんばってる演奏されて、逆にグッとくるみたいな(笑)。「昨日飲みすぎたな」なんて音がして(笑)。プロとしてどうかっていうのはあるかもしれないけど、精一杯やってるからグッとくるんですよ(笑)。もちろんやる気がない人は雇ってないですから。

福島 基本的には一生懸命やってる、だけどダメな人みたいなね。そういうのを楽しめるようになったのは、完全にベテランの領域に入ってしまったのかなとも思うけどね(笑)。俺らも若い頃、そういう先輩たちを見てて、かっこいいなって思ってたからね。そういう憧れの大人になってきちゃったのかな、残念ながら(笑)。


──そういった編成の変化や、ライブの変化を踏まえつつ今回のアルバム『えとらんぜ』を聴かせてもらうと、今までとは毛色の違うサウンドや曲調を、楽しんで取り入れてる感覚がわかるような気がします。1曲目の「Stranger」からブラジリアン・ポップスというか、MPB的なアプローチが新鮮な驚きを感じさせます。

福島 10年以上前、カチア・ウェルネックさんというブラジル人シンガーが来日する時、バンバンで何かやりませんかって話があって。ちょうどその頃、映画『ロスト・イン・トランスレーション』を観ていて、日本に来た外国人があてどなく彷徨うみたいな。そのイメージで曲を作りたいなって思ってたんだよね。結局、それはリリースすることもなく10年ぐらい経っちゃったんだけど。最近になって福岡に移住してから、バンドのツアーで初めて自分が東京に泊まることになったんですよ。その時泊まったホテルに外国人がたくさん宿泊してて。今まで散々乗ってたはずの地下鉄に乗ってどこかの街に行く時に、自分が東京にいるのに〈ストレンジャー〉みたいに感じてるのを覚えて、ふと「この感覚、あの曲のことじゃん」って思い出して。今の心境とぴったりフィーリングがあったので、あらためて日本語の歌詞を書き直して仕上げたんです。

──そういうストレンジャー感というか、知らない土地に行って違和感や窮屈さを味わいながら過ごす感じって、今回のアルバム全体に通じる感覚で。福島さんが福岡へ移住して、新しい土地に馴染んでるのか馴染んでないのか、まだ自分でも曖昧な感じみたいなものが歌に滲んでいる。

福島 それはやっぱり、移住してからこそ思うことで。東京のことを端からみる感覚っていうのも、自分の中にはなかったわけだから。福岡は福岡で、今まで見てた福岡と、 実際に住んでみて感じる福岡も違うから。そうやって暮らしって変わっていくのかなって。だけどバンドで動いてる間は、今まで通りフラットな感じなんだよね。そこもこれまでは感じたことがなかったけど、旅暮らしの心地よさだったり、バンドやっててよかったなって感じる部分もあった。結局、自分の生きる場所ってどこなんだろうとか、それをずっと探すのが人生なのかなとか、自分の中でちょっとずつわかりはじめて来ていて。移住したことも含めて、そういうことを考える時間だったのかもしれないね。

──コミュニケーションの方法はたくさんあるし、発信する方法にしても東京の一極集中じゃなきゃいけないってこともない。バンバンバザールは、それを逸早く実践してきたバンドだなって思うし、最近になって時代が追いついてきた感じもありますよね。

黒川 もしくは、こっちのペースが落ちましたかね?(笑)。僕らはどこに住んでてもいいって、福岡に住みはじめたじゃないですか? で、リーダーも福岡に引っ越してきたんですけど、俺の家の50m横なんですよ(笑)。そんなことあります? 同じ駅、同じ番地って、そりゃないぜって思いましたよ(笑)。なんせ俺の家から出て、一番近い自動販売機の横なんですから。

──そりゃ、いくらなんでも近すぎる(笑)。


福島 そういえば、このアルバムのレコーディングに入るちょっと前に、ムッシュかまやつさんが亡くなって。ムッシュの曲に「サンフランシスコ」っていうのがあるんだけど、その歌詞にガーンとやられた時期があった。サンフランシスコに行ったけど思い出すのは日本のことで、「どこで暮していても/生きる悲しみは/変らない同じもの/ここまで訪ねてわかったよ」って歌詞があって、それがなんかおおーってきてしまって。旅行してて思う違和感とか、その街に暮らしてみてわかる違和感とか、あるいは東京にいながらも感じてる違和感とか、なんとなく数年の間でいろんなことを思ったし、そういうのを探しながら暮らしてるのかなってことを歌にしたかったのかもしれない。「Stranger」なんかは、まさにそこをテーマにして作った曲ですね。

黒川 サウンドも面白くなればいいなって思って、最近手に入れた大正琴を入れてみたんです。オリエンタルなものとグローバルなものが雑然と同居してる感覚というかね。

──昭和の歌謡曲に通じる折衷の美みたいなものも感じるし、さらにはブラジルに移民した日経の人のサウダージまで思いを馳せるような仕上がりになって。

黒川 ちなみに「Stranger」はアルバムにはイノトモちゃんをフィーチャーした日本語ボーカルver.になってますが、配信限定でカチアさんが歌うポルトガル語ver.もリリースされてます。この曲はアルバムに入れることが最後に決まったんですけど、あらためてレコーディングしてみたら、リーダーが言ってみたいに、自分の居場所だったり、人生の置き方の軸になる曲になったなって思って。アルバム全体のまとまりにも合点がいく曲になりましたね。


──ストレンジャー感を感じる曲としては、ラストを飾る「春」も印象的ですね。

福島 これは思いきり福岡ローカルな内容で、なんせ家の近所の公園が出てきますからね(笑)。うちの息子が近所の公園に行って、友達に向かって標準語でしゃべってたり、あとじゃんけんの仕方が違ってたり、そういうことでうまく友達に馴染めないみたいな場面を見たんですよね。それが、なんか可愛らしいなって思って。ふと横を見ると学校をさぼってる中学生がいて。「お前も人生いろいろあんだな」なんて眺めてる俺は俺で、平日の昼間にしみじみしてるっていう、なんかその日がストレンジャーの集まりみたいな公園になってて。今思うと、この曲を一番歌いたかったのかもしれないね。

──今回のアルバムは、ソウル・フラワー・ユニオンのギタリスト高木克さんや、ブルームーンカルテットなどで活躍するドラマー木村純士さん、Bloodest Saxophoneの甲田伸太郎さん、イノトモさん、コロリダスのしみずけんたさんなど、ピアニストの小林創さんやFumingさんなど、バンバンバザールのライブでもおなじみのミュージシャンをはじめ総勢15名のミュージシャンが参加。7曲入りというコンパクトな作品ですが、サウンドのバラエティに飛んだ仕上がりになってますね。

福島 トータル感みたいなのはあんまり考えてなかったかもね。ちょっと前だったら、「70年代前半のカントリーロックのテイストで」とか、「ナット・キング・コール『アフターミッドナイト』の空気感にしたい!」とか、サウンドの方向性を決めてスタジオに入ってた気がするけど、今回はまったくなかったね。

黒川 僕らも福岡を拠点にしているから、福岡と東京を行き来しながら何度かにわけてレコーディングやダビングをしたので、スタジオもエンジニアも多岐に渡ってて。

福島 最終的なミックスは立川眞佐人さん、マスタリングは中村督くん(POTATOスタジオ)に仕上げてもらったんで、全体的な統一感は作れたと思うけど、レコーディング作業的にはいろんな場所でやってたから、どうなるかと思ったけど。さすがにみなさん達者な人たちだから、こっちからもオーダーすることなくともバッチリな演奏を決めてくれて。録音も離れながらやってたし、黒川は福岡にいるけど俺は東京に残ってダビングやミックスの作業したり。行ったり来たりしながら、結果どこで出来上がったんだろう?って。

黒川 業務連絡はLINEで、音源のやりとりはDropboxで。時代も変わりましたよ。

──物理的な距離と人間関係の距離って、関係なくなってきた感はありますよね。

福島 人と人との距離感みたいなところも、全体的なテーマとしてあるかもしれない。前に途中まで作ってた曲を掘り起こして、今のフィーリングとリンクさせて完成させたのも、時間や距離を超えるっていう、ここ何年かでぼんやりとイメージしていたことだったと思うし。



──そうして完成した『えとらんぜ』を通して聴き終えた印象としては、バンバンバザールのメロウな部分が際立っているのと、あと福島さんの歌が今までよりも前面に出てる感じがしました。

福島 そんなにこだわったわけでもないんだけど、今回は歌にフォーカスしてミックスしてくれたところはありますね。

黒川 今回の2、3個前のアルバムぐらいまで、サウンドがいっぱい詰まりすぎてて、歌が埋もれてる印象もあったんですよね。だからCDとライブのギャップがあった。でも、今回は演奏もミックスも含めて、ライブ・フィーリングで強く出してやってるから。

福島 以前は音像の方に意識が向いてたので、歌もその中の一部みたいな感じに考えてた。だけど、今回は楽曲をどういう風に聴かせるかってところに力を入れたから、歌にフォーカスが向かったのも当然だと思うし。なんかね、ようやく自分で歌を歌える感じがしてきたというか。歌い手として、少し自信がついてきた気がするんです。ギターでもベースでも、何年も演奏することでその楽器が馴染んでくるみたいな感覚ってあるじゃないですか? それと同じような意味合いで、時間がかかったけど、自分にとって〈ボーカル〉が馴染んできたというか。一体何年やってきたんだって話なんだけどね(笑)。


バンバンバザール『えとらんぜ』

バンバンバザール
『えとらんぜ』

(HOME WORK RECORDS)


バンバンバザール「Stranger feat.Catia Werneck」

バンバンバザール
「Stranger feat.Catia Werneck」

(HOME WORK RECORDS)


Live Schedule
4月6日(金)東京・中野・BRIGHT BROWN

4月7日(土)千葉・千葉 キレドベジタブルアトリエ

4月8日(日)東京・曙橋 Bar461

4月13日(金)大分・宇佐 Michiyard Cafe

4月14日(土)福岡・北九州 小倉・Mr.Lefty’s

5月4日(祝)佐賀・佐賀城下JAZZ FESTIVAL

5月11日(金)静岡・浜松 エスケリータ68

5月12日(土)愛知・西尾 さんがい亭

5月13日(日)愛知・名古屋・栄ミナミ音楽祭
5月16日(水)沖縄 宮古島 Big Chief「福島松井の GO 宮古島」

5月18日(金)沖縄・浦添 groove

5月19日(土)沖縄・那覇 桜坂劇場ホールB

5月20日(日)沖縄・石垣 すけあくろ 

official website
http://www.ban-ban-bazar.com/

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