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追悼・遠藤ミチロウ~稀代の表現者を悼み、語り継ぐ人たちの声と言葉と歌①

2019.05.12

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5月1日に訃報が流れた直後からファンはもちろん、交友のあった方々からのTwitter投稿が相次いだ。








訃報が流れた翌日のブログに「遠藤ミチロウ 追悼」を公開したのは、共演する機会が多かったロックンロール・ピアノマンのリクオだった。
世代的にはひと回り以上も年下なのだが、ソロで弾き語りを始めた時期とリクオがデビューした時期が近かったことから、先輩というよりも同じスタイルでツアー暮らしを続けてきた「旅の同志」という関係だったという。

10数年前、ミチロウさんがツアー中に血を吐いて倒れ、しばらく療養していた時に、ミチロウさんと電話で話した。声を聞いて、まだ本調子ではないのが伝わった。それでも、ミチロウさんは電話口で復帰への思いを語り続けた。「リクオ君、オレは歌えないのが悔しいよ」「いやいや、無理せずたまにはゆっくり休んで下さいよ」そんなやりとりをした。ミチロウさんの「悔しい」って言葉が耳に残った。
「http://www.rikuo.net/topindex/topdiary.html



それからしばらくして、遠藤ミチロウはステージに復帰しただけでなく、年間200本を前後するという過酷ともいえるツアーを再開させている。
しかし、2011年3月11日に福島県の浜通り地方をも巻き込む東日本大震災が発生し、そこから福島第一原発の事故が重なって大量の放射能汚染という、最悪の事態に見舞われた。
今なお続く汚染によって居住が困難とされる区域が生まれて、故郷を追われる人が続出したのである。

そこで立ち上げられたのが福島出身/在住の音楽家と詩人を代表として集まった、福島県内外の有志による「プロジェクトFUKUSHIMA!」だった。
遠藤ミチロウは福島の復興に向けてできるだけのことを為すべく、自ら行動する一方で戦後の日本の在り方に対しても、問題提起することを忘れなかった。


「プロジェクトFUKUSHIMA!」によせたメッセージには、こんな言葉が残されている。

長い歴史の中で育んできた生活、大地、文化が根こそぎ奪われてしまった絶望的な”FUKUSHIMA”の未来に、希望の光を見い出せるのか、見えない敵から奪い返せるのか、と考えると暗澹たる気持ちにならざるを得ません。でも、”FUKUSHIMA”の未来は日本の未来です。そしてそれは 人類の未来であると言っても過言ではありません。日本の中の”FUKUSHIMA”は、世界の中の”NIPPON”な のです。http://www.pj-fukushima.jp/message_michirou.html



しかし2011年以降の遠藤ミチロウについて、リクオはオフステージで消耗仕切った姿をみせる機会が多くなったと述べている。

ミチロウさんは、誰かやシステムを一方的に断罪することはしなかった。原発と同じ時代を生きた人間として、1人1人が意識を変えてゆくことの大切さを訴えた。それは、まさに身を削っての活動だった。なんだかミチロウさんがみんなの罪を背負っているようにも見えて、痛々しかったし、自分に後ろめたさを覚えた。それでも、ステージ上のミチロウさんはいつも全身全霊でエネルギーに満ちていた。その姿にいつも圧倒され震えた。そして泣けた。http://www.rikuo.net/topindex/topdiary.html





1992年に発表したスターリンのアルバム『奇跡の人』で、遠藤ミチロウは山下達郎の「RIDE ON TIME」をカバーしている。
5月1日に明らかになった訃報を受けて、山下達郎は自分のラジオ番組『サンデー・ソングブック』のなかで、追悼の意を込めてこのように語っていた。

スターリンの遠藤ミチロウさんがお亡くなりになりました。ガンだそうで。早い…… 私よりもちょっと年上の方ですけども。遠藤ミチロウさんというと思い出すのがですね、1992年にスターリンのアルバムで遠藤ミチロウさんが私の「RIDE ON TIME」をカバーしてくださったことがあります。
この番組でも1回、かけたことがあります。とってもパンクな『RIDE ON TIME』なんですけども。ご本人の弁によりますと至極まっとうなアプローチだったようで。といってもその時、嬉しくて光栄な思いでいっぱいでありました。
心よりご冥福をお祈りします。日本のいわゆるパンクのパイオニアと言いましょうか、草分けでございます。そういう存在、偉大な存在でありました。











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