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シティ・ポップスの原点となったシュガー・ベイブの「DOWN TOWN」、そして80年代の幕を開けたEPOのカヴァー

2024.04.25

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日本のポップスの歴史のなかでも最も輝いているアルバムの1枚として、21世紀になってますます評価が高まっているのが、シュガー・ベイブが残した唯一のアルバム『SONGS』だ。

シュガー・ベイブは山下達郎、大貫妙子というアーティストを輩出した伝説のグループである。

彼らが所属していたレーベルのナイアガラは、はっぴいえんど解散後に大瀧詠一が立ち上げたインディーズ・レーベル。
発売元のレコード会社もまた大手ではなく、独立系のエレック・レコードだった。

自らのレーベル「ナイアガラ」を立ち上げるにあたって、大瀧詠一は第1弾としてシュガー・ベイブのアルバムを発売する計画を立てた。
山下達郎が当時の流れを、このように説明している

僕らは最初1974年の1月に、はっぴいえんどの所属事務所「風都市」に入ったんだけど、給料を一銭ももらえなくて。2月になっても3月になっても給料が出なくて、そのまま風都市はつぶれちゃった。
〈中略〉
それで4月にデモテープの録音を始めるんだけど、スタートした時点では東芝と契約するって聞いてたのが、夏が終わる頃、いきなり契約先がエレックになったと言われて。連れて行かれたエレックのスタジオは、新宿のごく普通のビルの2階にある天井の低い、まあ練習スタジオに毛が生えた程度の場所でね。


こうした不吉なスタートに、山下達郎は最初から不安を隠せなかったという。
それでも発売日は1975年4月25日に決まり、レコード番号はNAL-0001となった。
ナイアガラ・レーベルからの第一弾を意味している。

数少ない当時の音楽業界誌への広告を見ると、レーベルとして力が入っていることは伝わってくる。

しかし、今でこそ決して色褪せる事のない名盤だと評価が高いこのアルバムだが、当時はシュガー・ベイブがデビューしたことも、ナイアガラ・レーベルの第一弾であったことも、一般にはほとんど話題にすらならなかった。

レコードはマニアックな音楽ファンからは注目されたが、アルバムチャートの100位以内にランクされることもなく、シュガー・ベイブは1976年に解散してしまう。

山下達郎と大貫妙子はその後、それぞれソロのシンガー・ソングライターとしての活動へと移行していく。
その結果、この『SONGS』が唯一のアルバムとなってしまったのである。

しかしながら発売から40年以上を経た現在でも『SONGS』は魅力ある名盤として、多くの音楽ファンに親しまれている。

その理由としては、山下達郎と大貫妙子がソロとして成功を収めたことで、2人が在籍していたシュガー・ベイブに注目が集まったことが挙げられるのだろう。

だが山下達郎によれば、自らレコーディング・エンジニアを担当した大瀧詠一による音作りがあったからこそ、現在までこの作品が生き残ってこれたのだと述べている。

大瀧さんは実は当時のメジャーなレコード会社のエンジニアとは違って、独学で技術を習得したんだけど、ロックの音の録り方の本質はわかっていた。
〈中略〉
当時の歌謡曲的なスター歌手最重視の編曲ノウハウ、録音ノウハウでは、ロック的な拡張性は望むべくもなかった。この作品が曲がりなりにも40年間生きてこられたのは、大瀧さんがエンジニアだったという要素がとても大きいんですよ。


エレックが倒産したためにマーケットから消えた『SONGS』は、その後も何度かメーカーを変えて再発されているが、特筆すべきは1994年のものだろう。

山下達郎が自ら当時のナンバーを歌うコンサート『TATSURO YAMASHITA Sings SUGAR BABE』をはじめ、大々的にプロモーションが行われてオリコンのアルバムチャートでは3位の大ヒットとなった。

これによってシュガー・ベイブが活動していた当時を知らない若者たちにも広く受け入れられ、名盤としての評価が決定的なものとなったのだ。

またアルバムのリード曲としてカットされたシングル「DOWN TOWN」の存在も忘れてはならない。
ここからは80年代以降に始まった「DOWN TOWN」の、一般への広がりについて述べておきたい。

当時の漫才ブームから生まれた人気者のビートたけしや明石家さんまらが出演した『オレたちひょうきん族』は、土曜の夜に圧倒的な強さを誇っていた人気番組『8時だョ!全員集合』を逆転して、80年代を代表するバラエティ番組となった。

そこに貢献したのがテーマソングに選ばれた「DOWN TOWN」で、シンガー・ソングライターのEPOがカヴァーしたヴァージョンだった。

「土曜日の夜はにぎやか」「それでも陽気なこの街」といった歌詞のフレーズは、この番組のために作ったかのようにぴったりだったので、子どもから大人までが口ずさめる楽曲となったのである。


その後も「DOWN TOWN」は数多くのアーティストにカヴァーされているが、中でも評価が高いのが2010年の坂本真綾によるものだ。

山下達郎のツアーを長年サポートしている難波弘之(キーボード)と三谷泰弘(コーラス)が参加していることもあって、自らがDJを務めるラジオ番組『サンデー・ソングブック』で発売直後に紹介したのだが、服部隆之によるアレンジが強烈な素晴らしいカヴァーと激賞していた。


※文中での発言は音楽ナタリーの『シュガー・ベイブ「SONGS -40th Anniversary Ultimate Edition-」発売記念 山下達郎インタビュー』からの引用です。
https://natalie.mu/music/pp/sugarbabe

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