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テネシーワルツ物語・後編〜江利チエミが愛した歌、彼女を愛した高倉健

2022.08.04

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戦後間もない1947年頃、日本にはアメリカの文化が怒濤のように流れ込んできた。
当時の若者たちは、アメリカの映画に熱中し、アメリカのポップ音楽に耳を傾けていた。ラジオや街のそこかしこから聴こえてくる耳新しい歌の中でも、この「Tennessee waltz」は、特に日本人の心を惹きつけたという。

1949年、家計を支えるため、12歳の頃から進駐軍キャンプ回りをしながら“歌で稼いでいた”江利チエミが、一人の進駐軍兵士からプレゼントされたレコードが、この「Tennessee waltz」だった。
歌手になることを志していた彼女は、この曲でデビューを果たすことを心に決め、レコード会社のオーディションを受け始めた。
ところが現実は厳しく…どの会社からも不合格の通知しか届かない日々が続く。
背水の陣で臨んだキングレコードのオーディションにようやく合格したのが、14歳の時のことだった。
1950年にパティ・ペイジが録音してから2年も経たないうちに、江利チエミはレコード会社の大人たちをうなずかせて、現実に録音を果たしたのだ。
1951年11月にレコーディングされた、彼女の「Tennessee waltz」は、年をまたいで翌1952年の1月23日に発売された。
当時、キングレコードとしては“14歳の天才少女”として売り込みたかったらしいが、1937年1月11日生まれの彼女は(発売日には)15歳になっていたために「嘘をつくのは嫌だ!」と渋った彼女に対して、レコード会社も折れ…そのキャッチコピーは幻になったという。
これは、彼女の誠実で一徹な性格がよく表されたエピソードとして、後々まで語り継がれることとなる。

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「Tennessee waltz」の歌詞といえば、男性歌手が歌えば主人公は男性に、女性歌手が歌えば主人公は女性になる歌としても有名である。
だが、なぜか江利チエミが歌う日本語訳詞では、主人公が男性になっている。
この日本語訳が生まれたのには、どんな経緯があったのだろう?
当時、彼女のキング入社をゴリ押しした初代・音羽たかし(訳詩のペンンネームで、歴代・江利チエミの担当デレクターが襲名する名)こと和田寿三が「チャンポンで行こう!」というアイデアで、英語と日本語の混ぜ合わせた歌詞でのレコーディングとなる。
そんな中、最初に出来た歌詞が彼女にはどうしても納得がいかなかった。
オーディションに受かったばかりの14歳の少女は、涙ながらにディレクターにこう訴えた。
「この歌詞じゃ歌えない!この歌詞ではワルツに乗らないの…」

そんな幾つかのエピソードが詰まったデビュー曲「Tennessee waltz」を唱って、15歳の少女は日本の歌謡界のスターダムへと駆け上がってゆく…。
その後、雪村いずみ、美空ひばりといった日本を代表する歌姫たちもこの曲を歌い継いでいった。

♪「Tennessee waltz」/江利チエミ



2014年の11月10日に亡くなった高倉健が、江利チエミの元夫であったことは周知のこと。
1959年、彼女は当時新進の俳優だった高倉健と結婚し、幸せな日々を送っていた。
その3年後に、母が父と結婚前に生んでいた異父姉が姿をあらわし、彼女の運命は暗転する。
自宅の火事、実兄の急死と不幸が相次ぎ、異父姉が負債していた数億円に及ぶ借金を背負うこととなり、夫の高倉健に迷惑をかけまいと1971年に離婚をする。
そして、借財の返済も終えた1982年2月13日、東京・高輪の自宅で、脳溢血で意識を失い、吐瀉物が気道に詰まっている状態で発見される。
死因は窒息死だった。享年45。
密葬が行われた2月16日は奇しくも、高倉健の誕生日であり、二人の結婚記念日だった。







それから17年の時が流れ…1999年に高倉健が主演した映画『鉄道員(ぽっぽや)』のテーマソングに「Tennessee Waltz」が使われたのは、こんなエピソードからだったという。
ある日『鉄道員(ぽっぽや)』の製作打ち合せの席で、キャストを含めた関係者が各々にテーマソングの候補をあげていた。
当初、監督の降旗康男は、夫レス・ポールのギターで妻メアリー・フォードが歌う「Vaya Con Dios」という曲を考えていた。
幾つかの候補曲があがる中、製作スタッフから「他に何かありませんか?」と問われた高倉健は、おもむろに「Tennessee Waltz」と答えた。
彼は妻・江利チエミと別れた後、再婚をしなかった。
彼女が亡くなってからも、ずっと墓参りを欠かさなかったという。
高倉健の人柄に深く触れてきた監督は、彼の中に存在する江利チエミの大きさをあらためて知り、映画のテーマ曲を「Tennessee Waltz」に変更した。
そのことを告げられた高倉健は「そんな個人的なこと、まずいんじゃないですか…」と言ったきり、黙りこくったという…。



江利チエミ『決定版 江利チエミ』

江利チエミ『決定版 江利チエミ』

(2011/キングレコード)







こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの音楽活動情報です♪
宜しくお願い致します。












【歌ものがたり2022 雨ニモマケズ風ニモマケズ】




8月6日(土)東京(調布市)柴崎RATHOLE
8月7日(日)埼玉・新所沢LAD COMPANY 
8月19日(金)徳島SOUND SPACE FUN
8月20日(土)徳島Music Bar Ricky 
8月21日(日)倉敷 下津井スタイラス
8月22日(月)兵庫(伊丹) BAR BOILER ROOM
8月26日(金)東広島(西条)HOTEL VAN CORNELL屋上
8月27日(土)福岡(警固)呑処 岡ひろ
8月28日(日)大牟田 陽炎
9月3日(土)田川Diamond Moon
9月4日(日)行橋Rock ‘n Roll Bar Memphis
9月10日(土)米子MUSIC PUB海あに
9月17日(土)京都LIVE&SALON夜想
9月25日(日)久留米 八百屋カフェ農と音1号店
10月7日(金)兵庫(伊丹)HEAVEN`S KITCHEN伊丹昆陽店
10月10日(月・祝)岡山Desperado(Bar side)
10月14日(金)唐津の海賊
10月15日(土)小倉Bar Disa
10月21日(金)八戸Bar FLAT
10月22日(土)能代ハックルベリー
10月23日(日)秋田カウンターアクション
10月29日(土)横浜Bar Brixton Market
10月30日(日)静岡・三島 ぐらBar’s
11月3日(木・祝)群馬・前橋 呑竜横丁 
11月22日(火)札幌SALINAS
11月23日(水)恵庭Mojo Hand 
12月2日(金)大阪 大きな輪
12日3日(土)和歌山OLD TIME
12月4日(日)広島Jammin’ bar
12月10日(土)福岡NIKAI
12月11日(日)北九州・黒崎 居酒屋 中村屋

↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12733736025.html





【THE HUNDREDS 佐々木モトアキ×NOBUYAN’ Special Acoustic Live Tour 2022 “Only 2Men-6Days”】

9月18日(日)大阪 新世界ヤンチャーズ
9月19日(月・祝)名古屋 ROLLING MAN
9月22日(木)福岡 Bar KINGBEE
9月23日(金・祝)福岡 Bar KINGBEE
10月1日(土)新潟 Live Bar Mush
10月2日(日)仙台 Cafe de Lucille

↓チケットご予約&公演詳細・共演者情報はこちら
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【佐々木モトアキ×Keith “唄うたいと雷神” Autumn/Winter 2022 Japan Tour】

11月10日(木)大分・日田Chewing Gum
11月11日(金)佐賀 雷神 
11月12日(土)福岡・雑餉隈ZASSHO JAM
11月13日(日)熊本・八代7th chord
11月19日(土)札幌Log
11月20日(日)釧路 ガソリンアレイ
11月26日(土)高円寺MOONSTOMP
12月17日(土)埼玉・所沢MOJO


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佐々木モトアキの楽曲「You」のミュージックビデオです♪
映像編集、ポートレート(写真)撮影共に、佐々木モトアキ本人が手掛けております。
とてもシンプルな技法ですが、何よりも登場する皆さんの表情が素敵です✨
人が“目を閉じている”表情。
その“瞼(まぶた)に浮かんでいる”誰かの顔。
繋がってゆく“一人ひとりの想い”が、100通りの、いや1000通りのドラマを描いてくれています。





佐々木モトアキ
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【佐々木モトアキ プロフィール】
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