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Fire and Rain〜鬱病を患っていた20歳のジェイムス・テイラーが紡いだ名曲

2017.12.24

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1960年代から70年代のミュージックシーンでは、社会的なメッセージを歌ったアーティストが数多く活躍した。
ボブ・ディラン、ジョン・レノン、マーヴィン・ゲイ、ジョニ・ミッチェル、ピーター・トッシュ、ボブ・マーリィ、カーティス・メイフィールドなどなど…
彼らは皆、ミュージシャンとして繊細でありながらも批判や体制に怖れない精神的なタフさを持っていた。
そんな時代の中で、デリケート過ぎるがゆえに精神科医の治療を受けながら、ごくごく私的な歌をヒットさせた男がいた。
彼の名はジェイムス・テイラー。
70年代前半からシーンを席巻したシンガーソングライターブームの火付け役とも言われている。


つい昨日の朝、君が逝ってしまった事を聞いたよ
スザンヌ…奴らが君の人生を終わらせてしまったんだね
今朝、外に出てこの歌を書いたんだ
誰に送る曲なのかさえ忘れてしまったけど


炎も雨も経験してきた
楽しい日々が永遠に続くかと思えば
友達を見つけられず孤独なときもあった
それでも君にはまた会えると思っていた


この「Fire and Rain」は、彼が1970年に発表した2ndアルバム『Sweet Baby James』からシングルカットされ、全米チャートを3位まで駆け上がった曲だ。
歌詞の内容は、自殺で他界した彼の幼なじみスザンヌへ捧げられている。
スザンヌが亡くなったのは、彼がアップルレコード(ビートルズが設立したレコード会社)と契約して1stアルバムの制作に取りかかっていた1968年(当時20歳)だった。
「これからだ!」というアーティスト活動に支障が出てはいけないという友人たちの配慮もあり、彼は6ヶ月も後になってその訃報を聞かされたという。
訃報を知るところから始まるその歌詞には、苦い経験をしてきた自身の過去、鬱病に悩まされていた体験、薬物中毒との闘いやバンドでの失敗についてが綴られている。

神様、僕に目を向けてください
どうか僕を立ち直らせて
1日でも長く見守っていて欲しいのです
体中が痛み出し、死はもう目の前
どうすればいいのか全く分からない

太陽に背を向け、楽な道を選びながらここまで来た
神様は知っている
冷たい風にさらされるまで人は気づかないのだと
電話越しに将来について語り合ったこともある
でも甘い夢は消えてしまったし
フライングマシーンも今ではバラバラになって地面に散らばっている


曲のタイトルの“Fire”は精神病院における患者へのショック療法のことであり、“Rain”はショック療法の後に浴びる冷たいシャワーのことを表す比喩だという。
歌詞に登場する“甘い夢”とは、アップルレコードから発売したデビュー作の失敗のことだという。
また“フライングマシーンも今ではバラバラになって地面に散らばっている”という意味深な一節があるが、それは彼がソロキャリアをスタートさせる前に活動していたバンド(The Flying Machine)のことが歌われている。
2005年(当時57歳)に受けたNPRでのインタヴューで彼はこの楽曲についてこんなことを語っている。

「幼なじみだった友人の自殺について歌ったんだ。薬物依存と鬱の克服についても歌っているよ。当時20歳を迎えるまでの人生を振り返ったものなんだ。」

炎も雨も経験してきた
楽しい日々が永遠に続くかと思えば
友達を見つけられず孤独なときもあった
それでも君にはまた会えると思っていた

もう一度君に会えると信じていた
色々なことが身に降りかかってくるけど
今はただ君に会いたい
つらいときもそうでないときも…
君にいて欲しかった





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