TAP the ROOTS

アートとパクリの狭間で

2015.09.03

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「それは確か、僕がマリブ・ビーチの家を借りたばかりの頃だから、1974年か75年のことだ」と、イーグルスのドン・フェルダーは回想している。

ビーチに面した家には7月のカリフォルニアの陽光が差し込み、開かれたままのドアからは爽やかな風が吹き込んでいた。
完璧なウエストコーストの1日だった。
ドンはリビングルームのチェアに腰を下ろし、アコースティックの12弦ギターを爪弾いていた。そして、あのオープニングが生まれたのである。

「ホテル・カリフォルニア」のプロモーション・ビデオでは、6弦と12弦のダブルネック・ギターを手にしているドンだが、あのアルペジオの響きは、最初から12弦ギターの響きだった。
気持ちのいい倍音は、爽やかな風に乗り、家の外へと流れ出ると、やがて波に溶けていった。



ドン・フェルダーとジョー・ウォルシュの2本のギターから始まる「ホテル・カリフォルニア」は、イーグルスの代表曲であり、1970年代のウエストコーストを代表する名曲だが、この曲にもいわゆる盗作騒ぎがあった。

まずは。次の曲を聴いていただこう。
ジェスロ・タルで、「We Used to Know」。



ジェスロ・タルはアルバム『日曜日の印象』で1968年にデビューしたイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド。
「We Used to Know」は、彼らのセカンド・アルバム『スタンド・アップ』に収録されていた作品である。
一耳瞭然、ジェスロ・タルのそれとイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」、ふたつの楽曲はほとんど同じコード進行である。
それだけなら偶然で片付けられるだろうが、イーグルスはかつて、ジェスロ・タルの全米ツアーの前座をつとめたことがあるのだ。

ジェスロ・タルのフロントマン、イアン・アンダーソンはかつて、BBCラジオのインタビューで「ああ、私は今でも著作権料の振込みを待っているんだがね」と言って笑ったことがある。
「ホテル・カリフォルニア」が盗作とならなかった要因のひとつは、イアン・アンダーソンの懐が広かったことだろう。イアンは、別のインタビューで次のように語っている。

「私は『ホテル・カリフォルニア』という作品が、私の作品から何らかのアイディアを拝借したとは思っていない。これまでに一度も使われていないコード進行を見つけるのは至難のわざだ。それに歌というものには、それ以外の要素がたくさんあるものだからね」


そして、それ以外の要素、それこそが、「ホテル・カリフォルニア」を盗作ではなく、アートとして、名曲として人々の記憶に残っていったのである。

「僕ら自身、ずいぶんと様々な解釈があることに驚いている」

イーグルスのドン・ヘンリーは、「ホテル・カリフォルニア」が聞く人によって、まったく違った聞き方をされていることについて、そう語っている。百人百様の「ホテル・カリフォルニア」。次回は、その歌詞の魅力について触れてみたい。

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