TOKYO音楽酒場

【9軒目】高円寺・ONE──音楽のジャンルも集う人たちもボーダーレスな酒場

2014.11.26

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく連載「TOKYO音楽酒場」。今回訪れたのは、高円寺駅から少しはずれた商店街にあるお店。クラブのようなバーのような、はたまた立ち呑み酒場のような雰囲気も感じさせる不思議な場所です。

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高円寺南口から長く続くパル商店街。アーケードをしばらく下っていくと、少し開けた交差点にぶつかる。その角を右に曲がると〈エトアール通り〉と呼ばれる路地に出る。通りの中心には、かつてエトアール劇場という芝居小屋があり、その周辺に露店が立ち並んだことから〈夜店通り〉とも呼ばれていたという。芝居小屋はその後映画館となって地元の人たちに長らく愛されたが、現在では大型スーバーマーケットに姿を変えてしまった。しかし、エトアール通りには露店が並んでいた頃の面影を少しだけ残すように、現在も小じんまりとした個人店が軒を連ねる。昔ながらの大衆食堂、サイケな彩りの古着屋、妖しげなニオイが薫るスナック──そんな店たちの軒先を眺めながら歩いていると、うっかり通り過ぎてしまいそうな雑居ビルの地下に、今回訪れる音楽酒場〈ONE〉がある。

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下北沢・BASEMENT BAR、渋谷・LUSHなどのライブハウスの店長を務めてきた小栗堂志さんがオーナーとなって開店したこの店は、2014年12月で7周年を迎える。

「18歳で北海道から上京してきて、最初は少しだけ大崎にいたんですけど、そのあとずっと高円寺周辺に住んでて。20年ぐらい前は今よりも古着屋も多かったり、街の雰囲気もすごく好きで……独立してこの店をはじめる時、もちろん最初は下北沢や渋谷でも探してたんですけど、なかなかいい物件に出会えなくて。で、高円寺あたりもいいんじゃないかって探しはじめたら、今の場所を見つけて。ここは、駅から近すぎないっていうのもいいんですよね。自分でも初めての場所に遊びに行く時、ちょっとわかりにくい場所に自分で探していくっていうひと手間が好きなんで。この通りも今は結構いろんな店も出来てきたんですけど、オープン当初はほとんど何もなかったですからね」(小栗堂志)

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オープン当初に共同経営していた仲間と一緒に、自分たちで内装も施したというロフト調の店内は、余計な飾り付けもないシンプルな印象。この、何にも染まっていない感覚こそ、ONEという店の本質をストレートに反映していると思う。ライブハウスのようでもあるし、クラブのようでもある。また、音楽バーでありながら、場末の立ち呑み酒場の雰囲気さえある。

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「たしかにそういうノリは出したいなって思ってましたね。自分がずっとライブハウスで働いてたしその良さもあるんだけど、もうちょっとゆっくりとお酒飲みながらワイワイできたらってイメージもあったし。それに高円寺といえば、飲ん兵衛の街っていうイメージもありますね。ただ、いわゆる高円寺高円寺した感じにもしたくないって思いもあったりして……僕にとってアイドルのような存在と言えば、横浜・BAR MOVEとか、渋谷・ROOTSとかいろいろ憧れてる店はあります。サウンドの部分でいえば、同じく高円寺にあるGRASSROOTSも欠かせないですし」(小栗堂志)

オープン当初を振り返りながら小栗さんが出してくれたのは、プラカップに入った金宮のウーロン割り。しかも、かなり濃い。カウンターには近くのコンビニで買ってきたスナック菓子が無造作に開けられ、客はカウンター近くでワイワイと談笑しながら、勝手にスナック菓子をつまんでいる。

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「最初の頃は料理のメニューも出したりしてたんですけど、今は俺一人なんでほとんど作ってないですね。プラカップも、いろいろ辿り着いた結果これが一番デメリットが少ないってことでね。洗い物しなくていいし。まあ、ちょっと金がかかるのがアレですけど(笑)」(小栗堂志)

と、大きな図体ながら飄々とした物言いが憎めないキャラクターを醸し出す小栗さん。ぶっちゃけ純粋な酒場として見れば大雑把にも程があるが、このテキトーさが心地良くもある。店でたまに鍋パーティなんかも開かれるそうだが、その気軽さはもはや家飲み的な感覚に近い。そういう意味でも、いわゆるバーやクラブのイメージとも異質な雰囲気をもった店ではある。

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限られたイメージに留まらないのは、ONEで流れる数々の音楽についても言える。ハウスやブレイクビーツに、ギター・ポップ、インディー・ロック、ノーザン・ソウル、レゲエ、スカ、さらには歌謡曲まで、個性あふれるオーガナイザーたちによるDJパーティが連日開催。さらに人時(黒夢)をはじめ、アコースティック・ライブのイベントも定期的に開催。またイベントが無い日も、ONEでDJをする常連たちが持ち寄ったレコードを気ままに流したりと、絶えず面白い音楽が流れている。

「ONEのイベントで長く続いてるのは、毎月最終月曜にDJの佐藤彰さんがオーガナイズしている〈LAST MONDAY〉と、毎月第一金曜の〈FASHION CRISIS〉ですかね。FASHION CRISISは、高円寺在住の外国人コミュニティを中心に、いろんな国の人たちが集まるパーティで。主催のイアンって奴もちょっとだけ日本語喋れるんだけど、ほとんど英語で喋ってくるもんだから、イベントに遊びにきた外国人のお客さんともほとんどコミュニケーションが取れない(笑)。たまに俺はそんなの関係なく日本語で怒ったりしますけどね」(小栗堂志)

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「こんな感じなんですけど、小栗さんってすごく音を聴いてるんです」と語るのは、この店で偶数月の第4土曜に〈Young Fidelity〉というイベントをやっている、GENTAROZさん。

「ふだん会話してても、しょうもない話とか下ネタとかばっかりなんですけど(笑)、音響については一家言ある人だと思う。店ではいろんなDJがプレイするから、上手い人もいれば、盛り上がりすぎて必要以上に音を大きくしすぎちゃう人もいる。カウンターで酒を作りながら、裏で音量やイコライジングをちゃんと調整しているんですよ。で、後日DJプレイについて訊いても、ちゃんと音に対して感想や意見を述べてくれる。そういう部分でプロフェッショナルを感じるし、ONEを信頼できる部分でもあるんです」(GENTAROZ)

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この店で〈KINSKI〉というパーティを定期的に開催しているJudyさんも、ONEについて語ってくれた。

「ONEは音楽も偏ってなくていろんなイベントがあるし、その中で自分がやってるようなインディー・ロックのイベントもあって。小栗さんって、音に関してこだわるところはすごくこだわってるし、DJのプレイもちゃんと聴いてるんです。KINSKIは、初めて自分ではじめたイベントでもうすぐ3年になるんですけど、自分もヘタなことはやれないなって思うし、適当なイベントはここでは出来ない。私にとっても、ONEで自分のイベントをやる意味がちゃんとあるんです」(Judy)

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DJとして〈Vienda!〉など様々なイベントでプレイしているOguriさんも、こう証言する。

「音や機材の部分でこだわるところはこだわってるけど、変に決まりごとが多い訳でもないし、抜くところはうまく抜いてる感じが店の空気にも通じてるんじゃないですかね。僕はONEでは定期的なイベントはやってないんですけど、ほぼ毎週来てて。家も近いっていうのもあるけど、誰がイベントやってるか調べないままフラッと遊びに来ても、いつも楽しく飲める。帰り道に飲みに行こうかなって思った時に、一番に思いつくのがONEなんですよね。バー営業の時なんかは、深い話をしてるお客さんもよく見かけるし、また小栗さんも話しやすい感じの人だから。最初はなかなか入りづらい店かも知れないけど、一度踏み入れてもらえたらそれからは気楽に遊びに来れるんじゃないですかね」(Oguri)

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「そう、ONEに来るようになって、友達や知り合いがめちゃめちゃ増えて。普通は聴いてる音楽のジャンルが違ったり、遊びに行くハコが違うと、交流する範囲も限られてくると思うけど、ここはいい意味ですべてがない混ぜになってる。ONEじゃなかったら知り合うこともなかっただろう人と意気投合して、イベント終わってから一緒に飲みに行ったりすることもあるし。ここでつながった人同士で、新たにイベントをやってたりもしますからね。自分にとっては、ONEで生まれたつながりが一番大きいです」(GENTAROZ)

「全然近くもないのに頻繁に通ってくれる人もいるし、仲間に愛されてるなって思います。音楽もそうだけど、ジャンルやカテゴリーに関係なく、いろんな人が来てくれる。そこで(ONEを中心にした)ひとつのコミュニティとして遊んでくれれば、俺としては最高だなって思うんです」(小栗堂志)

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そういえば、小栗さんのInstagramには、営業中の店内の写真のみならず、営業後に客やDJたちと一緒に渋谷や新宿のクラブに繰り出したり、高円寺の居酒屋や中華屋で明け方までとことん飲み明かす様子がちょくちょくUPされている。店に足を運んでくれた人たちをもてなそうとしているのか、人付き合いが良すぎるのか、それとも、ただただ自分が飲み足りないのに客を付き合わせているだけなのか? その真相はわからないが、ともあれ、みんながみんなとことん楽しんでいるようなのだ──ONEという場所が生み出す心地良いグルーヴの下に、今日もいい音楽と楽しい人々が集う。One Nation Under A Groove♪──なんて連想ゲームを巡らせていたら、今宵のとどめを刺すようにショットグラスが回ってきた。

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撮影/相澤心也




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ONE
東京都杉並区高円寺南3-48-6 第八日東ビルB1
問い合わせ:info@one-koenji.com
19:00〜24:00 不定休
*営業時間はイベントによって異なります。Twitterアカウントなどをご確認ください。
https://twitter.com/onekoenji
http://one-koenji.com/

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