TAP the SCENE

ストレート・トゥ・ヘル〜ジョー・ストラマーやエルヴィス・コステロらが出演したB級映画

2016.11.02

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それは1986年、映画『シド&ナンシー』がカンヌ映画祭に招待された時から始まっていた。監督のアレックス・コックスが宿泊先のホテルで休んでいると、激しいノックの音がした。ドアを開けると、ジョー・ストラマー、俳優兼脚本家のディック・ルード、カメラマンのトム・リッチモンドが勢いよく転がり込んできた。3人は部屋で酒を飲み続け、喋りまくり、酔っ払って、そして静かになった。

アレックスが朝目覚めると、窓を閉め切ったままエアコンも止まっていて酷い空気が充満していた。インタビューを受ける仕事があったので、3人を残したまま窓を開けて部屋を出た。

戻って来たら、ホテルのプールサイドで二日酔いの彼らが、黒いスーツを着たままヘロヘロでコーヒーを飲んでいた。まるでジム・ジャームッシュの映画に出てくるような登場人物たちに思えたよ。それで人を殺し損ねた人殺しのイメージが思い浮かんだってわけさ。


スペインのアルメニアに出向いて“それらしい”風景を目にすると、そこが昔、チャールズ・ブロンソンの映画で使われた砂漠のセットの廃墟であることを知る。ロケ地としては文句がない。構想は映画化へと向けて始動。アレックスとディックは3日間で脚本を書き上げた。『ストレート・トゥ・ヘル』(Straight to Hell/1987)の誕生だ。

出演するのはクセが強すぎる連中ばかり。サイ・リチャードソン、ディック・ルード、ジョー・ストラマーの主役3人をはじめ、エルヴィス・コステロ、ザ・ポーグス、コートニー・ラヴ、グレイス・ジョーンズ、ジム・ジャームッシュ、デニス・ホッパーらがキャスティングされた。

アレックスはスペイン当局から「過酷な環境下の撮影でみんな気が狂って監獄行きになる」と警告されたが、そんなことよりもミュージシャンの連中が本当に演技できるのか心配だったという。しかし、ジョーは拳銃を扱う特訓を3週間も受ける熱の入れようだった。

『ストレート・トゥ・ヘル』のシムズは、俺のために書かれた役なんだ。服を変えないところなんかさ。『シド&ナンシー』で仕事している時、俺とアレックスは毎日のように会っていた。しばらくすると彼は俺が服を変えないことに気づいた。あの時の俺は何の拠り所もなくて、考えてる間くらい同じ服でいようと思ってたんだ。(ジョー・ストラマー)

ヘビだのサソリだの太陽だのが、俺を消耗させるんだろうと思ってた。演じることは病気のようなもので、伝染するものなんだと思う。「何を言ったらいいんだろう。これは俺が喋っているんだろうか」っていつも自問していた。(エルヴィス・コステロ)


映画はセルジオ・レオーネに代表されるマカロニ・ウエスタンへのオマージュであり、フィルム・ノワールのテイストも加味されている。さらにイギリスらしい政治や権力に対する皮肉が貫かれたB級エンターテインメントに仕上がった。

殺し屋3人組ノーウッド(サイ・リチャードソン)、ウィリー(ディック・ルード)、シムズ(ジョー・ストラマー)は、雇い主であるデードの仕事をしくじって、ノーウッドの妻ベルマ(コートニー・ラヴ)と4人で逃亡することに。道中で銀行強盗をして大金を手にするが、砂漠で車がエンストして立ち往生。

金を埋めた彼らは、丘の向こうで見つけたエル・ブランコへ休息を求めて向かう。しかし、そこは悪党マクマホン一家が牛耳る町。誘惑と宴、騙し合いや撃ち合いが始まろうとしていた。地獄へまっしぐらだ……。

なお、ザ・ポーグスの面々がマクマホン一家のチンピラ役、エルヴィス・コステロがマクマホンの執事役、ジム・ジャームッシュは雇い主デード役、デニス・ホッパーとグレイス・ジョーンズは石油王カップルとして登場している。

予告編。映画のタイトルは、ザ・クラッシュのアルバム『Combat Rock』(1982)に収録された同名曲から


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DVD『ストレート・トゥ・ヘル』

*日本公開時チラシ
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参考・引用/DVD『バック・トゥ・ヘル』、『ストレート・トゥ・ヘル』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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