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ジャンゴ 繋がれざる者〜歴史の犠牲者たちに映画の中で復讐させるタランティーノの世界

2019.10.04

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ヒトラーをはじめとしたナチスの幹部たちを映画館ごと炎上爆破してしまうという、ユダヤ系の立場からの壮大な復讐制裁劇『イングロリアス・バスターズ』(2009)で、キャリア最高の興行収入を記録したクエンティン・タランティーノ監督。“史実の書き換え”なる新たな手法を見出した彼は、次作で映画オタクである自身のルーツとでもいうべき「マカロニ・ウエスタン」に取り掛かる。

「悪を裁くのは正義ではなく流れ者だ」という世界観を絶対的な美学とするこのジャンルは、言い換えれば監督としての真価が問われる極めてハードルの高い領域。だがタランティーノにとってそれは宿命であり、避けて通れない“映画道”のようなもの。

この愛すべきクレイジーな映画作家は、そこに南部の奴隷制度というアメリカの残虐な過去と向き合うことにも同時に取り組みながら、とんでもなく見応えのある「マカロニ・サザン」を撮り上げた。前作の復讐制裁劇を踏襲した『ジャンゴ 繋がれざる者』(Django Unchained/2012)の完成だ。

アメリカ映画はずっと南部の奴隷制度の実態を描くことを避けてきた。アメリカにとって恥すべき汚点だからだ。俺は歴史の犠牲者たちに、映画の中で復讐させてあげたい。


過去のマカロニ・ウェスタンへのオマージュを忘れることなく、特に本作ではそのタイトルからも分かるように、セルジオ・コルブッチ監督作品(代表作は『続・荒野の用心棒』/原題Django)からの影響が漂う。さらにブラックスプロイテーションやラブストーリーの要素もサンプリングし、唯一無二のクレイジーワールドに到達した。

この種の作品にはお約束の賛否、特に黒人でもあるスパイク・リー監督から猛烈な反論を喰らったりするが、映画に命を捧げるタランティーノはそんなことでは屈しなかった。社会的映画を作ろうとしたんじゃない。誰もやらなかった映画作りに夢中になっただけなのだから。

主役のジャンゴ役はジェイミー・フォックス。ジャンゴを見出すヨーロッパの賞金稼ぎ役にクリストフ・ヴァルツ。さらに映画はもう一組のコンビが登場する。大農園の御曹司役のレオナルド・ディカプリオ、そして奴隷頭役のサミュエル・L・ジャクソン。この4人の凄まじい演技力、そして圧倒的な存在感のおかげで165分の長編も瞬く間に過ぎていく。本作で初の悪役を演じたディカプリオは「この役をやり遂げた今、もうどんな役が来ても怖くない」と自信を深めた。

カルビン役は僕の俳優人生の中で遭遇した最も難しい役だった。僕はこの男の言うこと、やること、信じることに一切共感できない。彼は人種差別者でナルシスト。こんな酷いキャラクターが出てくる脚本は読んだことがなかったよ。


物語の舞台は1858年のアメリカ南部。南北戦争勃発の2年前、リンカーンによる奴隷解放宣言の5年前。自称歯科医のドイツ人キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、実は悪党どもを始末する賞金稼ぎ。旅の通り道で奴隷として売買されたジャンゴ(ジェイミー・フォックス)を自らの商売のために救い出す。

ジャンゴには悪党どもに引き離された妻がいて、シュルツは奪還計画に力を貸そうとする。そのためには資金が必要だ。銃の手ほどきを受けたジャンゴはあっという間に上達し、二人は賞金稼ぎのコンビとなってゴミクズを次々と始末していく。

奴隷となって捕らわれた妻は、今はミシシッピの大農園キャンディランドにいる。そこには奴隷同士を闘わせて殺し合いに興奮するような若き領主カルビン(レオナルド・ディカプリオ)、彼の執事で影の権力者でもあるスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)らがいた。

シュルツとジャンゴは試合用の奴隷売買の話を持ち掛けて農園に侵入することに成功。あり得ない高額の儲け話にご機嫌なカルビンだったが、二人の本当の目的を見抜いたスティーブンによって状況は一変する。果たしてジャンゴは愛する妻を取り戻すことができるのか?……タランティーノは言った。

復讐は物語が進む中で実現する。でもそれはジャンゴが最初から考えていたことではない。彼はまだ旅の途中だ。普通の市民になるための旅の途中でヒーローとなり、恋人を救う。これはヒーローがたどる心の旅なんだ。


映画の予告編


『ジャンゴ 繋がれざる者』

『ジャンゴ 繋がれざる者』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『ジャンゴ 繋がれざる者』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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