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バハマ諸島の伝承歌だった「スループ・ジョンB」はビーチボーイズによってスタンダードになった

2019.06.21

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フォークソングのコレクターでもあった詩人で作家のカール・サンドバーグと、フォークやブルースなどを問わずヨーロッパやカリブ海でも録音をしたアラン・ロマックスによって、1920年代に見出された「スループオン・ジョンB」は、バハマ諸島に広まっていた古くからの伝承歌だったという。

それが1940年代から1960年代前半に起こったフォークリバイバル(folk music revival)で、1958年にキングストン・トリオのヴァージョンによって有名になった。
その翌年にはジョニー・キャッシュが唄い、その後もウェイロン・ジェニングスなどのカントリー・シンガーたちが取り上げたことで、スタンダード・ソングになっていく道がひらけた。

キングストン・トリオ 1958年 – The Kingston Trio



ジョニー・キャッシュ 1959年 – Songs of Our Soil


そうしたカヴァーのなかでも後世に多大な影響を与えた決定打が、洗練されたハーモニーでシングルが世界中でヒットしたビーチボーイズのヴァージョンである。

ビーチボーイズ 1966年 – Pet Sounds


ビーチボーイズのソングライターでリーダーだったブライアン・ウィルソンの名前は、1966年の傑作
アルバム『ペット・サウンズ(Pet Sounds)』によってロックの歴史に刻み込まれることになった。

ブライアンはビートルズが1965年に発表したアルバム『ラバー・ソウル』に大きな刺激を受けて、ツワモノ揃いのスタジオ・ミュージシャン集団だったレッキングクルーとともにスタジオに入って、緻密な構成のコンセプト・アルバムとして『ペット・サウンズ』を完成させている。

しかしコンセプト・アルバムの形をとった『ペット・サウンズ』は、歌詞が内省的だったこともあって、それまでのビーチボーイズが打ち出してきた明るいサーフィン・ミュージックや、ホットロッドからかけ離れていた。

あまりにも時代の先を行き過ぎたのではないかとレコード会社は心配し、商品性が低いという理由でそれほどプロモーションに協力する姿勢を見せなかった。



アルバムの7曲目の収められた「スループ・ジョンB」は、アルバムの中で唯一、ブライアンのオリジナル曲ではない。

それはキングストン・トリオのヴァージョンを発展させたもので、コーラスとサウンドが次第に厚くなっていくところや、隠し味のように微妙で繊細なサウンドが斬新かつポップだった。

1年前に録音済みだった「スループオン・ジョンB」を、アルバムに加えるようにと勧めたのは、メンバーの一人だったアル・ジャーディンである。

もともとフォークソングに造詣が深くてこの曲を気に入っていたアルは、ビーチボーイズのレパートリーに取り上げた張本人だった。

若い船乗りが唄うどこか頼りなくて情けない歌詞なのだが、そこはかとないユーモアが感じられて、シングル・カットされると全米チャートで3位まで上昇するヒットになった。


オレはじいさんとふたりで
ジョン・B号に乗り込んだ
ナッソーの街を歩き回り
一晩を飲み明かした
ケンカに巻き込まれちまって
すっかり参ってしまった
家に帰りたいよ

ジョン・B号の帆を上げて
メンスルの様子を眺めながら
岸に待つキャプテンに電話をかける
家に帰らせてくれないか
家に帰らせてくれないか
オレは家に帰りたいんだ
すっかり参ってしまった
家に帰りたいよ


それから50年後、ブライアン・ウィルソンとアル・ジャーディンのヴォーカルによる「スループオン・ジョンB」が、キャピトル・レコードのスタジオでレコーディングされた。
まったく衰えが感じられない二人の歌声に、多くの人たちから称賛の声が上がった。


ビーチボーイズ 2016年




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