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ニューヨークの夢

2016.12.24

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クリスマス・イヴの夜だっていうのに
酔いつぶれてトラ箱の中
先に檻の中に入ってた爺さんは
「もう、飲めねぇよ…」と俺に向かってつぶやいた
爺さんが歌い出した「The Rare Old Mountain Dew」
俺は歌声に背を向けて眠りについた
そうしたら お前の夢を見たんだ


ポーグスが1987年に発表した「Fairytale of New York(ニューヨークの夢)」は、ボーカルのシェイン・マガウアンと、女性シンガーのカースティ・マッコールのデュエットによるバラード。希望を胸に抱きニューヨークへやって来たアイルランド移民の夫婦を主人公にした、ストーリー仕立てのほろ苦いラブ・ソングだ。リリースされた1987年にはアイルランドでチャート1位、UKチャートでも2位を記録し、その後もクリスマス・ソングの定番として愛され続けている。

この曲の歌詞には、古いフォーク・ソングのタイトルが2曲登場する。「The Rare Old Mountain Dew」と「Galway Bay」、どちらもアイルランドで歌い継がれている伝統的な歌だ。夫がトラ箱の中で聴く「The Rare Old Mountain Dew」は、アイルランドの豊かな自然と、そこで抽出される至高のひとしずく(Mountain Dew) すなわちウイスキーについて歌った曲。酒とギャンブルで身を崩した男が、未来の自分の姿を表しているかのような老人の歌声から、若かりし日の夢を思い出す。同じ頃、寒い夜に一人でろくでなしの夫を待つ妻も、出会った頃の甘い日々を振り返っていた。そんな時、街のどこかから聴こえてくるのが、合唱隊が歌う「Galway Bay」。

ニューヨーク市警の青年合唱隊が
「Galway Bay」を歌っている
教会の鐘の音が
クリスマスの街に鳴り響く


コーラス部分の歌詞に登場する「Galway Bay」とは、アイルランド西部にあるゴールウェイ湾とそれを取り囲む土地の神秘的な美しさを歌った1曲。中心都市であるゴールウェイは中世の香り漂う町並みの、ケルト文化を色濃く残す港町だ。ニューヨークに移り住んだ多くのアイルランド人が、この港から旅立っていった。

大きな夢を抱いていた夫、その夢を信じて人生を共にした妻──夢に破れ年老いた今、貧しい現実を嘆き、互いを罵りあいながらも、それでも変わらぬ愛情を吐露していく。二人の心にいつも流れていたのが「Galway Bay」だった。きっと来年のクリスマスも教会は鐘を鳴らし、街には合唱隊のハーモニーが響き渡るだろう。

「Fairytale of New York」には、愛しさも憎しみもないまぜになった夫婦の絆と、故郷・アイルランドへの変わらぬ想いが幾重にも描かれている。


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ポーグス『If I Should Fall From Grace With God』
ワーナーミュージック(1988年)

若き日のマット・ディロンが警官役でカメオ出演している「ニューヨークの夢」MV。
ポーグス feat.カースティ・マッコール「Fairytale Of New York」MV


*本コラムは2013年12月21日に初回公開された記事を、加筆修正したものです。

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