前回の【キース・リチャーズ語録①〜バンドを去ったミック・テイラーに届いたキースからの電報】に続くキースの名言集第2弾。
ロックスターのイメージを創り上げた男の人生はこれまで何を語ってきたのか。ローリング・ストーンズの長い歴史の中で、数々の苦難を乗り越えてきたキース流の生き方から絞り出された言葉の数々。
彼を知る者はそのトラブル続きの生活や経緯を知っている人にとっては心に奥深く染み込むことだろう。そして彼を知らない人であっても、キース自身が発する言葉や言い回し、エピソードは実に魅力的なので、そのへんにあるベストセラー小説よりも多くの術や知恵を教えてくれるだろう……それでは今回も様々な書物に記録されたキースの言葉に耳を傾けてみよう。
●祖父との原点
“ガスじいさんの家に遊びに行くと、ピアノの上にいつもギターが置いてあった”
ロックスターの心の原風景がここにある。キースの祖父のガスは、女所帯の中で唯一の男の子であった孫のキースをとても可愛がった。「でもただそこに置いてあるだけで、じいさんはギターのことを一言も口にしたりしなかった。数年前、叔母さんと話していて、ようやく分かったんだ。ギターがそこに置いてあったのは、俺が遊びに来るって分かった時だけだったって。俺がいなくなると、じいさんはすぐにギターをケースに戻したっていうんだ。あのギターは家の風景の一部だった」
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キース・リチャーズが祖父との幼少時代の想い出を綴った心温まる絵本『ガス・アンド・ミー』
●愛するバンドのこと
“最高の曲ってのは、最高に美しい偶然によって生まれるんだ”
「ロックンロールってのはインタラクションの賜物だ。それは人と人との間で響き合う偶発的なテンションやコミュニケーションから生まれる。曲っていうのはレコーディング・スタジオのどこにも落ちちゃいない。そいつは奇跡のテレパシーだ」。1971年の伝説の地下室レコーディングはその証。
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キース・リチャーズ〜“逃亡先”で生まれた最高傑作
“自分の可能性とストーンズの可能性がはっきりと分かってきたんだ。『ベガーズ・バンケット』以来、すっかり自信がついたよ”
1968年はストーンズが原点回帰した年。67年の前作がサイケデリック時代に歩調を合わせたものに対し、荒々しいストーンズ・サウンドが聴ける『ベガーズ・バンケット』は72年まで続く真の黄金期の幕開けだった。この年、キースのギタープレイも冴え渡り、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」「ストリート・ファイティング・マン」「悪魔を憐れむ歌」などがリリースされた。
“メンバーはもう昔みたいにすぐ角を曲がったところに住んでいて、いつでも訪ねていけるってわけじゃなかった”
ストーンズはあまりにも高額な税金で破産寸前となり、1971年にイギリスから南フランスへ移住。流浪の民の時代へと突入した。キースの家ネルコート宮殿でメンバーたちがほとんど泊まり続けてレコーディングされた『メインストリートのならず者』以降のことを指摘している。「あの頃難しかったのは、地理的に離れたところにいるメンバーをどうやって集めるかってことだった。あれ以来、いいレコードを作るのが難しくなっちまった」
“アルバムジャケットは酷くなる一方だ。でも中身はどんどん良くなっている”
キースとミックが不仲になり始めた『アンダーカヴァー』あたりから確かに酷くなったような気がする。
“太陽がある。月がある。空気がある。そしてローリング・ストーンズがいる”
キースの十八番のセリフ。
●偉大なるアイドルたち
“チャック本人を除けば、俺は誰よりもチャック・ベリーのナンバーをうまくやれるぜ。でもある時、チャック・ベリーをやめて、キース・リチャーズをやることにしたんだ”
“二度と一緒にやりたくないと思ったのは奴だけだ”
“俺は奴のやり方を受けて立ってやる。屈辱的な振る舞いにだって、耐え抜いてみせるぜ”
マディ・ウォーターズと並ぶキースのアイドルと言えば、チャック・ベリー。昔は楽屋で殴られたこともあった。1986年の映画『ヘイル・ヘイル・ロックンロール』はチャック・ベリーのための映画だったが、ベリーのどんなワガママにも精神力と忍耐力に鍛え続けるキースの姿が収められている。それでもキースは自分のアイドルにこんなFAXを送っている。
「こう言わせてくれ。俺たちにはいろいろあったが、あんたを凄く愛してるぜ! あんたの作品はホントに素敵で、見事なくらい時代を超えている。あんたみたいのがもう一人生まれないこと願ってるよ。もう一人いたら、人生、興奮させられ通しになっちまうからな! あんたも俺のことを同じように思ってるかもしれねえけど」
●揺るぎない友情
“俺たちが間違った時に、これからは誰がそれを指摘してくれるんだ?”
イアン・スチュワートが亡くなってショックを受けた時の言葉。才能あるイアンはストーンズのメンバーだったが、雰囲気やルックスが合わないという理由だけでマネージャーから解雇されてしまった第6のメンバー。ストーンズとは以来、ツアーやレコーディングを通じてずっと一緒だった。1985年12月のその日、キースはイアンと会う約束をしていて、ホテルで待っていた。するとチャーリーから電話が入る。「スチュを待ってるのか?」「そうだよ」「それがな、あいつは来ない」。キースは彼が死んだことを知ったという。86年の『ダーティ・ワーク』にはイアンのピアノソロが最後に収録された。
「デビュー前。みんなでリハーサルする時、あいつはいつも自分のバイクが盗まれてないか窓からチェックしてたよ。片方でバイクを見て、片方でピアノを見てるんだ。そんなことをしてても絶対に音は間違えなかった。夜になって街の女が姿を見せ始めると、『あんな女とやりたいな!』なんて言いながら、それでも絶対に音だけは外さなかったんだ」
●束の間の恋
“あの時だ。深い喪失感を初めて味わったのは”
「ただ、ソングライターは裏切られてもその題材で歌を書いて慰めを見出せる。吐き出すことができる。あらゆることが何かに繋がる。断ち切れたままのものなんかない。経験になる。想いになる。要するに、リンダは「Ruby Tuesday」なんだ」
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キース・リチャーズの胸が張り裂けそうな恋から生まれた「Ruby Tuesday」
●権力との闘い
“「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」は、あれは心の叫びだった”
1978年、ストーンズ絶体絶命と言われたキースのトロント裁判の渦中に『サム・ガールズ』を録音。キースの当時の心境が反映された曲。
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キース・リチャーズと権力との闘い〜絶望の淵で天使を見た男
“俺はもともと制服ってやつとはソリが合わないタチでね”
“俺自身が実験室だったこともある”
キースが言うと、説得力がある。
●音楽について
“シンセサイザーとインターネットは、本当は秘密にしておくべきだったと思う”
名言の一つ。どちらも良くも悪くも音楽と社会を変えてしまったのだから。
“音楽を聴くことも芸術活動の一つだよ。音楽を聴いていれば、人は健全な精神を保てるね”
本当にその通りだ。
●60年代を想って
“1967年っていうのは、みんなにとって変革の年だった”
1967年。イギリスのロックスター潰し強化の一環でキースの自宅レッドランズにガサ入れ。ドラッグ裁判に巻き込まれていく。「ドラッグ・カルチャーが爆発したのもこの年だ。みんながその手のことを喋り始めた。そして俺たちは一年中、警官やら裁判官やらとの揉め事に耐えて行かなきゃいけなかったんだ」
“ああいうことがあって、落ちる時はどこまでも落ちていくんだってことを学んだ。心の準備だけはしとかなきゃいけないんだってね。俺が1967年から学んだのは、きっとそういうことだよ”
●そして人生
“自分自身は冷静に眺めた方がいいぜ。カッコ良くなりたいって思う時点でもうカッコ悪いからな”
“キース・リチャーズは、何だって一度はやってみるんだ”
さらに「何か他に経験したことのないものがあるんなら、ぜひやってみたいもんだね」。
知っている人ならニヤッとしてしまう。
“日々どんどん展開していく人生がいいね。それは魅力的なストーリーであり、素晴らしい一冊の書物だ”
キースは続ける。「これから先の人生について考え巡らせるのが好きなんだ。一体何が起こるんだろうかってね。3分の2くらい読み進めて、早く結末を知りたくてしょうがないけど、とりあえず先延ばしにしてるところだよ」
(こちらもオススメです)
【キース・リチャーズ語録①〜バンドを去ったミック・テイラーに届いたキースからの電報】
(キースに関する主な書籍)
『ライフ キース・リチャーズ自伝』(キース・リチャーズ著/2010)
『ガス・アンド・ミー』(キース&セオドラ・リチャーズ著/2014)*祖父との想い出を綴った絵本
『キース・リチャーズ 彼こそローリング・ストーンズ』(バーブラ・シャロン著/1982)
『キース・リチャーズ 俺はここにいる』(スタンリー・ブース著/1993)
『トーク・イズ・チープ』(ミック・セント・マイケル著/1994)
『キース・リチャーズの不良哲学』(アラン・クレイソン著/2005)
『聖書 キース・リチャーズ』(ジェシカ・パリントン・ウエスト著/2009)
『キース・リチャーズ、かく語りき』(ショーン・イーガン編/2013)
『悪魔を憐れむ歌』(トニー・サンチェス著/1979)*元ボディガードによる暴露本
*このコラムは2016年10月に公開されたものを更新しました。
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