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キース・リチャーズ〜“逃亡先”で生まれた最高傑作

2016.05.12

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ブライアン・ジョーンズの死やオルタモントの悲劇など、激動の1969年を終えたローリング・ストーンズの次なる試練は、ずばり“金”だった。

驚くべきことにメンバー全員が破産寸前だったという。原因はバンドの財政を握っていた弁護士アレン・クラインとの金銭トラブル、そして当時のイギリスにおける高額な税金徴収にあった。

こうしてストーンズ一行は1971年4月、南フランスへ“逃亡”することになるが、母国を捨てることは、それまでのファンに愛想を尽かされるかもしれない。バンドにとっては致命傷になるとまで言われ、移住計画は大きな賭けだった。

しかし、頂点を迎えつつあった彼らは心機一転、自身のローリング・スートンズ・レコードを設立(ベロマークで有名)。キース・リチャーズ曰く「音楽のエリート集団に加わったような気分だった」R&B/ソウルの名門アトランティック・レコードと販売契約を果たし、5月にはレーベル第1弾となる『Sticky Fingers』をリリースして、賭けに成功する。

この頃、リヴィエラ海岸が一望できるコート・ダジュールの絢爛豪華な“ネルコート宮殿”で、事実上の妻アニタ・パレンバーグや息子マーロンとともに暮らしていた27歳のキース・リチャーズは、仲間たちと一緒に地中海での気まぐれなボート遊びや極上のドラッグタイムに耽る日々の中、次のアルバム制作を主導していく。

「ロマンチックな場所。時間の感覚がなくなって、まるで夢のようだった」とアニタが惚れ込んだ1890年に建てられたこの別荘には、次第にメンバーやサポート・ミュージシャンたちが長期滞在するようになる。南フランスの田舎町でのスタジオ探しが難航する中、ネルコートはやがて必然的に、常識外れのレコーディングの場へと姿を変えていった。

「マイティ・モービル」と名付けられた8トラックの録音装置を備えた自前の移動式スタジオ。モービル・ユニットのトレーラーがネルコート宮殿の正面玄関に強引に停められ、コンセントにつなげられる。

湿気にまみれた地下室に、好きな時間帯に集まってくるメンバーやゲストたち。巨大な迷路のような空間を行き交いながら、真夜中から朝方にかけて毎日のように続けられる音探しや演奏。

一見無謀とも思えるこうした作業を経ながら、次のアルバム用の曲が出来上がった。ドラッグ漬けだったキースは、この時最長9日間も眠らずに仕事に没頭したという(最後は床に崩れ落ちた)。

イギリスからフランスへ移住し、愛してやまないアメリカ南部の音楽を、自分たちなりの表現で高めた流浪の民の新作『Exile on Main St.』は、華麗かつ危険なロックスターライフを地で行ったキース流儀で作られ、現在では「ストーンズの最高傑作」であるばかりではなく、「ロック史上最強のアルバム」と評されている。

キースは当時を振り返って言った。

「畑を2回耕す時間はないよ。『こんな感じだな』と言って、どんなのが出てくるかやってみる。そこで気がつく。いいバンドにいると、本当に必要なのは小さなアイデアだけだってことに。そしてそれは小さな花火になり、夜が明けるまでには美しいものになっているんだ」


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ローリング・ストーンズ『Exile on Main St.』
(1972)

常識外れのレコーディング
その様子は、ドキュメンタリー映画『ストーンズ・イン・エグザイル〜「メインストリートのならず者」の真実』に詳しい。
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『ストーンズ・イン・エグザイル〜「メインストリートのならず者」の真実』
詳細・発売日

ロック史上最強のアルバム
このアルバムを初体験する時、キングス・オブ・レオンのカリブ・フォロウィルのコメントがその興奮を代弁してくれる。
「フランス産なんて凄い! てっきり毎晩メンフィスあたりでバーベキューして、パーティ三昧かと思ってた」
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キース・リチャーズ自伝『ライフ』
詳細・発売日

キースが歌う「Happy」や極上のカントリーナンバー「Sweet Virginia」アルバムリリース後の全米ツアーより。

*このコラムは2014年2月22日/2015年9月5日に公開されました。

こちらの記事もこの機会にぜひお読みください。

キース・リチャーズと権力との闘い~絶望の淵で天使を見た男

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