1985年に甲本ヒロトと真島昌利の二人を中心に結成されたザ・ブルーハーツ。同年12月24日。年の瀬も押し迫ったクリスマスイブの日に、彼らは東京・都立家政の『スーパーロフトKINDO』でライブを行った。
そして、会場にきた観客全員に「1985」という曲を録音した自主制作のソノシートをプレゼントし、その曲をライブでも演奏した。
ブルーハーツの誕生と「1985」について、甲本ヒロトはインタビューに答えてこう語っている。
ブルーハーツ組んだ年なんですよ。その年に“1985”っていう曲を作ったんです。で、それはもうブルーハーツ元年。日本のロック元年だと、僕は、その時もまだ誇大妄想狂だから(笑)。ロックンロールにおける日本代表・ブルーハーツだと思ってたわけですよ。ライブ・ハウスでやってるくせに(笑)。そう思ってたからね、そういう曲を作ったんですよ。で、その曲をもう1985年過ぎたら演奏しないつもりだったんです。で、じゃあ残すんなら今しかないなと思って、録音してソノシートを作ったんです。
しかし、「1985」は最初に公になった音源にもかかわらず、1995年に解散した直後に出たベスト・アルバム『SUPER BEST』に収録されるまで、長らく幻の曲となった。
1985年という年は「いじめの時代」の幕開けである。全国の小・中学校で「いじめ」が横行しているというニュースが何度もとり上げられ、「いじめ自殺元年」ともいわれた。
そして、8月12日には世界最大の航空機墜落事故が起きている。日航ジャンボ機に乗っていた540人の命が奪われたが、その中には日本でただ一人、全米チャート1位に輝いた「SUKIYAKI」を歌った坂本九がふくまれていた。
日本という国が「帳簿上」だけの金持ちという奇妙な状況に放り込まれて、「経済至上主義の時代」が始まったのも1985年からだ。ニューヨークのプラザホテルで行われた日・米・英・仏・西独による先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議で、ドル高是正のため各国が為替相場に協調介入することで合意した。
アメリカの貿易赤字と日本・西独の貿易黒字による国際収支の不均衡を、円高ドル安を容認することで是正しようとするのが目的だった。その結果、物を消費することが日本政府によって奨励されて、知性を欠落させた「大衆の時代」が始まっていく。それが1990年代のバブル崩壊にまで、土地本位制とともに突き進んでいったのである。
「1985」の歌詞に織り込まれていたのは、目には見えてこない恐怖や危機に対する警鐘だった。
1980年12月1日発売のアルバム『SURF&SNOW』で、松任谷由実は「恋人がサンタクロース」を発表している。それは大ヒットした映画『私をスキーに連れてって』の挿入歌に使われたこともあって広く浸透し、山下達郎の「クリスマス・イブ」と並ぶ国産クリスマス・ソングの定番曲になっていく。
それから5年後、ブルーハーツは「サンタクロースのおじいさんの命が危ない」と叫んだ。そして、その叫びを「1985年だけの曲」だとして自ら封印する。
「1985」の最後に甲本ヒロトは、ブルーハーツ元年が日本のロック元年だという宣誓を述べている。
「1985」は、それから32年の歳月を経た2017年の12月に「THE BLUE HEARTS アナログEP17枚組BOX」として、当時と同じソノシートによって再現された。

(注)甲本ヒロトの発言は1992年5月号「Rockin`On Japan」の「20000字インタビュー ヒロトのすべて!!」からの引用です。
(写真・井出情児)
●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから
TAP the POP協力・スペシャルイベントのご案内
【オトナの歌謡曲ソングブックコンサート in YOKOHAMA】開催

1917年に開館した横浜の歴史的建造物「横浜市開港記念会館」(ジャックの塔)で、昭和の名曲を愛する一流のアーティストが集ってコンサートを開催!
昭和に憧れる若い人からリアルタイムで昭和歌謡に慣れ親しんだ人まで、幅広い世代が一緒に楽しめるコンサートです! “国の重要文化財”という、いつもと違う空間が醸し出す特別なひとときを、感動と共にお過ごしください!!
▼日時/2025年6月7日(土曜) 開場17時/開演18時
▼場所/横浜市開港記念会館講堂(ジャックの塔)
▼出演
浜田真理子 with Marino(サックス)
畠山美由紀 with 高木大丈夫(ギター)
奇妙礼太郎 with 近藤康平(ライブペインティング)
タブレット純(司会と歌)
佐藤利明(司会と構成)
▼「チケットぴあ」にて4月5日(土曜)午前10時より販売開始 *先着順・なくなり次第終了
SS席 9,500円 (1・2階最前列)
S席 8,000円
A席 6,500円
「チケットぴあ」販売ページはこちらから
▼詳しい情報は公式サイトで
「オトナの歌謡曲ソングブックコンサート in YOKOHAMA」公式ページ