「フォークを歌うことについて最初に影響を受けたのはオデッタだった。彼女のあとにハリー・ベラフォンテ、そこからキングストン・トリオと聴いていったんだ。」
あるインタビューでボブ・ディランが語った言葉だ。
2008年12月2日、伝説の歌手オデッタ(享年77)がニューヨーク市内の病院で息を引き取った。
死因は心臓疾患(心不全)と発表された。
亡くなる3週間前に腎不全で入院していた彼女だったが、晩年は約10年間ほど慢性心疾患と肺線維症を患っていたという。
政治的なメッセージを歌に込めた最初のアフリカ系アメリカ人歌手と言われており、後進のアーティスト達に大きな影響を与えた彼女。
クラシックの発声法で訓練された力強い声で1950年代から聴衆を魅了し、若き日のボブ・ディラン、ジョーン・バエズらに大きな影響を与えた人物である。
黒人や農民、肉体労働者を題材とした歌が多く、ローザ・パークスなど公民権運動指導者からも支持されていたという。
アラバマ州バーミンガムで生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルスで育った彼女は、13歳からオペラを学び始める。
1944年(当時14歳)から約4年間、ハリウッドでミュージカルのアンサンブルメンバーとして舞台女優として経験を積む。
1949年(当時19歳)には、ミュージカル『フィニアンの虹』の全米公演に参加している。
その時の旅公演で“新たな刺激”を受けた彼女は、1950年以降、フォークソングを歌うようになる。
「サンフランシスコで出会った若い歌手やグループと親しくなって、私も歌おう!と心に決めたの。」
以降、彼女はニューヨークやサンフランシスコなどのコーヒーハウスやナイトクラブでギターの弾き語り演奏をするようになり、歌手としてのキャリアを重ねてゆく。
ラリー・モーアという歌手とフォークデュオ“オデッタ&ラリー”を結成し、1954年(当時24歳)にアルバム『The Tin Angel』を発表している。
ニューヨークで出会ったピート・シーガーやハリー・ベラフォンテとライブを共にし始めたころから、彼女はシンガーソングライターとして次第に注目されるようになる。
その後、26歳になった彼女は初のソロ名義アルバム『Odetta Sings Ballads and Blues』(1956年)をリリースする。
1959年(29歳)には、全米で放送されたテレビ番組『Tonight With Belafonte』に出演し「Waterboy」を熱唱する。
同番組ではハリー・ベラフォンテと共に「There’s A Hole In My Bucket(バケツに穴が)」もデュエットし、彼女の名前は一夜にして全米に知られることとなる。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが「彼女はThe Queen Of American Folk Music(アメリカンフォークミュージックの女王)だ!」と言って称賛したという。
1963年8月28日、彼女はワシントンD.C.で行われた人種差別撤廃を求めるデモ(ワシントン大行進)で群衆を前に「O Freedom」を熱唱する。
同年に彼女がリリースした『Odetta Sings Folk Songs』にはボブ・ディランの「Blowin in the Wind」が収録されており、その年最も売れたフォークアルバムとなった。
それは1999年9月29日(当時69歳)の出来事だった。
デビューから長年に渡る歌手活動を通じてスタジオアルバムを約20枚リリースし、オリジナルソング、トラディショナルソング、フォーク、ブルース、ジャズなどなど…ジャンルを超えて多くの名曲名唱を残した彼女に対して、当時の大統領ビル・クリントンは文化功労賞ともいえる“National Medal of Art”を授与した。
さらに2005年(当時75歳)には、アメリカ議会図書館より“Living Legend Award(生きた伝説賞)”が授与された。
2008年の夏、彼女がこの世を去る数ヶ月前のことだった。
77歳になった彼女は、なんと車椅子で歌いながら北米ツアーを決行したのだ。
同年10月4日のサンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークでのフェスティバルへも出演している。
人生最後のステージは、10月25日に行なったトロントでの公演だったという。
翌11月、彼女は体調を崩し腎不全と診断され…ニューヨークの病院で治療を受けるために入院。
12月2日、病院のベッドで静かに息を引き取る。
彼女は一ヶ月後(2009年1月20日)に行なわれるバラク・オバマ大統領の就任式で歌うことが決まっており、その日の出演を最期まで楽しみにしていたという…
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