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Where have all the flowers gone?花はどこへ行った〜ピート・シーガーが思い描いた“理想の世界”とは?

2022.01.27

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この「Where have all the flowers gone?(花はどこへ行った)」は“アメリカンフォークの父”と呼ばれた男、ピート・シーガーの代表作であり、反戦歌として広く知られている。
1955年にシーガーが作詞作曲したもので、ロシアの作家ミハイル・ショーロホフの小説『静かなドン』で引用されているコサック民謡の歌詞にヒントを得たのだという。

あしの葉はどこへいったの?少女たちが刈り取った
少女たちはどこへいったの?少女たちは嫁いでいった
どんな男に嫁いでいったの?ドン川のコサックに
そのコサックたちはどこへいったの?戦争へいった


当時、シーガーはこの部分を読んで心を動かされ、飛行機の中で20分ほどで曲を書き上げたという。
コサック民謡を下敷きにしたその歌詞は当初3番までしかなかった。

花はどこへ行ったの?長い時を経て
花はどこへ行ったの?長い時が流れて
花はどこへ行ったの?少女達がみんな摘んでいってしまった
人々はいつになればそれを理解するのだろう…


シーガーは1960年に発表した自身のアルバム『Rainbow Quest』に収録したメドレーの中で、この歌を初めて録音する。
それからしばらくの間、シーガーはこの歌のことを忘れていたという。
そのまま埋もれてしまう運命だったこの歌は、ジョー・ヒッカーソンという男によって新たな命を吹き込まれることとなる。
アメリカの民族音楽研究家・収集家で作詞家でもあったヒッカーソンは、この歌と出会ったとき、不思議な魅力と共に、何か物足りなさを感じたという。

「歌詞が3番までで終わってしまうのはもったいない。その先の物語を少し書き足してみたい。」

あの兵士はどこへ行ったの?長い時を経て
あの兵士はどこへ行ったの?長い時が流れて

その墓場はどうなったの?長い時を経て
その墓場はどうなったの?花畑になった

花はどこへ行ったの?長い時を経て
花はどこへ行ったの?少女達がみんな摘んでいってしまった
人々はいつになればそれを学ぶのだろう…


ヒッカーソンは、花→少女→若者→兵士→墓地→花というように、花で始まり一回りして花に戻って終わるような歌詞を書き加えた。
書き加えられた歌詞を読んだシーガーもその出来映えを気に入り、ヒッカーソンを“共作者”として認めて1961年に著作権を登録し直したという。
同曲はその後、キングストン・トリオやピーター・ポール&マリー歌唱によってヒットする。


この曲は、60年中頃から70年代初頭に激化していったベトナム戦争への反戦歌として世界中に広まっていく。
シーガーは生前、こんな言葉を残している。

「多くの人が自分たちにできることを少しずつ考えて世界は形成されていくんだ。」

それは、シーガーが思い描いていた“理想の世界”なのかもしれない…。

<引用元・参考文献『国境を越えて愛されたうた』竹村淳著/彩流社>


 

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