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エディット・ピアフを偲んで〜最期まで歌と愛に生きた人生、亡くなる一年前に結婚した20歳年下の夫

2025.10.10

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私はおそろしい人生を送ってきました。それは事実です。でも、素晴らしい人生でもありました。こんなことを言うのは他でもありません。私は人生を何よりも先ず、人生というものを愛してきたからです。


ピアフは、自分に訪れる死を意識しながら書いた自伝にそんな言葉を綴っていた。1963年10月10日、伝説のシャンソン歌手エディット・ピアフが、フレンチ・リヴィエラ(南フランスにある保養地として知られる地中海沿岸の名称)にある小さな町プラスカシエの別荘で死亡した。(享年47)死因は肝臓癌と公表された。

パリで行われた葬儀の日には、4万人以上のファンが集まり、多くの飲食店や商店が弔意を表して休業し喪に服した。第二次世界大戦後、パリの交通が完全にストップしたのは、ピアフの葬儀の時だけだった。

その恋多き人生は、スター歌手として活躍する一方で、事故による怪我とリューマチ性関節炎、それらの痛みをやわらげるためのモルヒネ中毒との闘いに費やしたと言われている。

ピアフは2回結婚しており、最初は37歳の時に歌手のジャック・パルと、1952年〜1956年の間夫婦生活を送っている。二度目は47歳の時に20歳年下のテオ・サラポと結ばれている。

テオは元美容師で、ピアフと出会った頃は歌手・俳優に転身したばかりだった。もともとテオがピアフの大ファンであったことが縁となり(彼女が他界する一年前の)、1962年に夫婦となった。テオは妻ピアフの死後、妻の残した多額の借金(700万フラン)を独力ですべて返済した。


1949年、当時34歳だったピアフは、最愛の恋人マルセル・セルダン(フランスのボクサー)と悲劇的な別れを経験している。ニューヨークでの試合が決まった恋人マルセル・セルダンに対して、ピアフは「とても待てないの、早く会いに来て!」と手紙を書く。

マルセルは船の予約をキャンセルして飛行機でニューヨークに向かう。しかし、その飛行機がアゾレス諸島上空で墜落事故に遭い、彼はそのまま帰らぬ人となる。最愛の恋人を失った彼女は、あまりのショックから正気を保つことができず、酒と麻薬に溺れていった。

「麻薬って、ほんとに地獄のお祭りよ。単調で、灰色で、汚いわ。それでも続けるしかないのよ」


当時、トップスターとして彼女が稼いでいた高額なギャラは、寂しさをまぎらわしてくれる取り巻きとの交友費と麻薬代にすべて消えていった。次第に借金まで負うようになり、身体も精神もボロボロとなったピアフのもとに現れたのが、20歳年下のテオだった。彼はピアフが癌で、余命いくばくもないことを医師から聞いていたにも関わらず、結婚を申し込んだ。

「テオ、私の顔をよくごらんなさい! こんなボロ切れのような女のどこがいいっていうの? もう女なんてものじゃないわ! 自分の足でちゃんと立つこともできない哀れな病人にすぎないのよ。こんな私と結婚なんかするものじゃないわ!」


「僕は君と結婚したいんだ。歳の差や病気のことで君は僕を幸せにできないと言うけど、僕は君を失うことのほうがもっと怖いんだ。今はまず自分がしっかり治療をすることだけを考えて欲しい。君の病気は僕が治してあげるよ! 妻が病気で苦しんでいる時、そばにいて看病するのが夫の役目なんだ! 今度のオランピア公演が終わったら結婚しよう!」


1962年9月、ピアフはスタッフからはステージに立つのは自殺行為と言われながらも、5度目のオランピア劇場公演を成功させる。そして10月9日、親友マレーネ・ディートリヒの介添えのもと、ピアフとテオは正式に夫婦となる。

1963年2月、ピアフは最後の力を振り絞るかのように、テオと共にボビノ座で公演を行う。翌月の3月18日、フランス北部リール市のオペラ座に出演したのが、生涯最後のステージとなった。

それらの公演は、歌の才能を持つテオを世に出すためのでもあった。一年あまりの結婚生活の後、テオの歌手としての成功を見届けるように、ピアフはこの世を去った。


<引用元・参考文献『わが愛の讃歌―エディット・ピアフ自伝』エディット・ピアフ(著)中井多津夫(翻訳)/晶文社>
<引用元・参考文献『エディット・ピアフという生き方』山口路子(著)/ KADOKAWA 中経出版>


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執筆者 佐々木モトアキ プロフィール
https://ameblo.jp/sasakimotoaki/entry-12648985123.html

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