イギリスで役者、ダンサー、音楽プロモーターとして活動していた青年が、トラヴェラーズの音楽と出会ったのは25歳のときだった。
トラヴェラーズとは、ブリテン諸島を渡り歩くジプシー(漂流民)のことだ。
彼らは差別を受けながらも伝統と文化を守り続けた。そしてそこには、ほとんど世間一般に知られることがなく、トラヴェラーズの中だけで歌い継がれてきた歌があった。
25歳のときにトラヴェラーズの録音を聴いて「恋に落ちた」青年のサム・リーは、様々なトラヴェラーズを訪ねては共に生活しながら、彼らが先祖から受け継いだ歌の採取をし始める。
そこでサムは、彼らにとって歌は厳しい生活の中で苦しみを和らげるものだということを知った。
僕はその苦しみにも共感できたし、伝えたい、発散したいという情熱とともに、娯楽的要素も含めた「歌わずにはいられない」という気持ちの美しさや力強さにも心揺さぶられたんだ。
そうして彼らから教えてもらった歌が150曲以上になった頃にデビューすることになったサムは、トラヴェラーズの歌を単に歌うのではなく、新たなやり方で表現した。
自分のなかで生まれた断片的なアイデアを、既存の古い曲に組み合わせて歌を仕上げていく。それを世界中の様々な民族楽器や自身の声によって、伝承された歌に独自の解釈で現代的な感覚を加えたのだ。
そもそも血筋がユダヤ系だというサムは、自分も移住する人々の血が流れているかもしれないという。
僕はジプシーではないし、イングリッシュでもない。僕はユダヤ系で、ブリテンのフォーク・ミュージックの世界に属していない。つまり、常に、外から内側を覗きこんでいるアウトサイダーなんだ
アウトサイダーであるがゆえに、伝統や形式にとらわれることなく自由な発想で表現することができる。
様々な伝統をもつ世界各国の民族楽器がサム・リーのもとで1つの世界を描き、そこでは時間も空間も超えた新しいフォーク・ミュージックが、聴くものをトラヴェラーズの世界へと連れて行く。
現在制作中の2ndアルバムは使用している楽器がさらに増え、サウンド面で前作以上の拡がりを見せながら、よりパーカッシブな仕上がりになっているという。
イギリスで5月に先行リリースされた4曲入りのEPではその一部を聴くことができる。
■サム・リー&フレンズ 来日公演2014
12/5(金)武蔵野市民文化会館 小ホール(with リアム・オ・メンリィ)
12/6(土)すみだトリフォニーホール(ケルティック・クリスマス)
12/8(月)京都 磔磔
12/10(水)渋谷クラブクアトロ(with リアム・オ・メンリィほか)
12/11(木)マウントレーニアホール シブヤ プレジャープレジャー(with 東野珠実、稲葉明徳〈雅楽奏者〉)
※東京文化発信プロジェクト事業の一環として実施
12/12(金)焼津文化会館 小ホール(with 上間綾乃)
12/13(土)所沢市民文化センター ミューズ キューブホール(with 上間綾乃)
プランクトン:03-3498-2881
http://www.plankton.co.jp/samlee/index.html
<引用元>サム・リー | sotokoto interview | ソトコト