「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

季節(いま)の歌

雨の歌〜Have You Ever Seen the Rain(雨を見たかい)

2023.06.08

Pocket
LINEで送る

♪「Have You Ever Seen the Rain(雨を見たかい)」/クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル


晴れているのに雨が降るんだ
雨のように光って落ちてくるんだ
ねえ、知りたいんだよ 君はその雨を見たことがあるの?
ねえ、知りたいんだよ 君はその雨を見たことがあるの?



この「Have You Ever Seen the Rain」(1971年)は、60年代末から70年代前半にかけてアメリカが介入したベトナム戦争の頃にリリースされた。
当時、アメリカでは放送禁止になった地域もあったという。
その理由は、この歌がベトナム戦争で使われた無差別大量殺戮兵器・ナパーム弾を連想させるためだった。
ナパーム弾が落下するときに、空気との摩擦で、雨粒のように青白く輝くということに由来しているからだという。
水のようにきらめきながら“降り注ぐ雨(the rain)”にも見えるナパーム弾(ゲル化油脂焼夷弾)のスラングとして取られ、当時のアメリカ人、そして兵士達が持ち始めていたベトナム戦争に対する疑問の気持ちや、罪の意識を代弁することになった。

だが、作詞作曲者のジョン・フォガティは1997年にオフィシャル・ウェブサイトで次のように発言し、反戦歌であることを否定している。
バンドのメンバーだった弟トムの突然の脱退宣言を「(いきなり降ってくる)雨」に喩えたという説である。

「このこと(現象)はベイエリアでは他の地区よりもよく起こるんだ。陽が照っているのに雨が虹と雨粒が降ってくることがある。風が吹くと雨が金門橋を越えてサンフランシスコ湾に飛ばされて来るんだ。『雨を見たかい』はCCRの崩壊についての歌なんだ。“Have you ever seen the rain coming down, sunny day?”の部分は、sunny dayが黄金時代のクリーデンスを示唆している。しかし、ぼくたちに雨が降り掛かって来るのが見えたということを言っているんだ。」

その真偽は謎のまま…現在も多くの人たちは、ベトナム戦争を歌ったものだと信じている。
曲の発売から30年後…2001年4月4日に“最後のナパーム弾”が処分された。
その後もアメリカ軍がナパーム弾や、これに代わる非人道的な無差別大量殺戮兵器をアフガニスタンやイラクで使用したとの報道もあった。
アメリカ国防総省の公式見解は「ナパームのように見えるナパームとは違う兵器を使用しただけ」ということだった。
そして50年後の今、一部の大国において更に強力な兵器が開発されているという。
結局、より強力な大量殺戮兵器の出現によってナパーム弾はその役目を終えたということだけなのだ。
この地球上において、殺戮兵器、化学兵器、生物兵器の「雨」が降らないことを心から願うばかりだ…

43aaa1909fa008abc92b2210.L

クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル『Pendulum』

(1970/Fantasy)


Pocket
LINEで送る

あなたにおすすめ

関連するコラム

    関連記事が見つかりません

[季節(いま)の歌]の最新コラム

SNSでも配信中

Pagetop ↑

トップページへ