気合を入れて見ていたはずの映画だったが、勘違いはあるものだ。
『M★A★S★H マッシュ』という作品をベトナム戦争を題材とした作品だと、なんとなく決め込んでいた。朝鮮とベトナムの戦争を取り違えていたのだ。
前線から5キロの「Mobil Army Surgical Hospital」(移動野戦病院)が舞台で、そこに飛来するヘリがファースト・シーン。
どうも景色がおかしい。ベトナムにこんな山渓があったろうかと思った記憶がある。
実際のロケ地は西海岸で、もともと架空の場所が選ばれている。
もっというなら、兵隊たちのロング・ヘアがまずありえない。朝鮮戦争の時代、兵士はひとり残らずクルー・カットだったはずなのだから。
種明かしをしてしまうなら、この映画はベトナム戦争を描く狙いで、題材を朝鮮戦争からとった作品だったのである。
公開は1970年。ウッドストックの翌年である。ベトナム反戦運動はピークにあり、そんな時、ベトナム戦争のパロディなど公開できる見込みはない。
監督はアンチ・ハリウッドの総師と呼ばれるロバート・アルトマン。ひとすじ縄ではいかない映画作りの天才。
戦闘シーン一つなく、野戦病院の日常だけで戦争を描き切ることで、意図的に二つの戦争をすりかえてみせたのだ。
途切れなく病院に運びこまれて来るのは、瀕死の兵士たちばかり。戦場の「ER」といったところだが、こちらは救命もヒューマニズムも縁がない。
列をなす手術のノルマに追い立てられる中で、外科医たちの正気も怪しくなり、モラルも何もかもけし飛んでいる。
そこに赴任してきた外科医3人組(エリオット・グールド、ドナルド・サザランド、トム・スケリット)が、さらなるハチャメチャな騒動を巻き起こす。そんな筋立てである。
スプラッター映画さながらの血まみれの手術シーンが続く中、「ここは戦場なんかじゃない、精神病棟だ」という台詞が効いている。
みな戦争に倦み果てていた。
朝鮮戦争を隠れみのに、ベトナム戦争を描きながらも、パターンは同じ。
宣戦布告もなく、見たこともないアジアの国の民族対立に介入しては、同じ過ちをくりかえす。
そして、犠牲となるのは、いつも兵士たちだった。
“どちらの戦争もやっていることは同じ、何一つ変わっていない”というアルトマンの痛烈な一撃が効いて、この作品は、1970年のカンヌのパルム・ドール賞をはじめ、ベルリン映画祭、ヴェネチア映画祭で最高賞を総なめにする。
アメリカよりもヨーロッパで圧倒的に支持されたのである。
収穫はそればかりではなかった。
この作品からまるで抒情詩のようなテーマソングが生まれた。
声高でなく、まるで語り掛けるようで、どこか冷めきったバラード「Suicide is Painless」は、いつまでも胸にしみる。
一説によると、この歌を書いたのは、アルトマン監督の息子。しかも14歳のときに書いた詩であるという。
もしそれが本当なら、この映画には二人の天才がいたということになる。
朝早くの霧ごしに僕は見た
物事のあるべき姿を
僕のために準備されている苦痛を
このことは僕にも分かるし、理解できる
自殺は苦しくない
いろいろ気分転換にもなる
それにやるかやらないかは自分次第

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