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ほんとうに最後のステージとなったビートルズのルーフトップ・コンサート

2026.01.29

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ビートルズのドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』が公開されたのは1970年のことだが、もとはテレビ・ショー用に企画されたものだった。

「トゥイッケナム・フィルム・スタジオに集まって、そのショーに向けてリハーサルを行うという計画だったんだ」


そう話すのは、アルバム『レット・イット・ビー』のミックスとプロデュースを手掛けたエンジニアのグリン・ジョンズ

リハーサルが始まったのは1969年の1月2日のこと、テーマは“ゲット・バック”、すなわち原点回帰である。ビートルズは『サージェント・ペパーズ~』以降のレコードでは、オーヴァーダビングを繰り返すことによってそれまでになく新しい、しかも複雑なサウンドを次々と生み出していった。

だがここにきて、初期のようなシンプルなバンド・サウンドに戻ろうということになったのだ。

ところが新曲を具体的にしようとセッションを重ねる中で、メンバー間の意見の対立がそれまで以上に浮き彫りとなった。ジョージがポールに腹を立てて、スタジオに一時は来なくなるという事態も起こった。

あれはすごく張りつめた時期だった。解散のはじまりと言うか。あの後はちょっとやりにくくなった。全員が発言権をほしがったせいだ。(『ポール・マッカートニー 告白』より)


その一方で、テレビ・ショーを放送するという企画もメンバーの反対によって白紙となり、映画にすることになったものの、ライブをする場所はなかなか決まらない。

ポールは初心に戻って小さなライブハウスで演奏することを提案し、ステージ恐怖症のジョンはサハラ砂漠など、人がいないような場所を希望した。その他にも到底実現できなさそうなアイデアが、次々と挙げられてはいずれも却下されていった。

最終的に候補として上がったのは、ビートルズが設立したばかりのアップル社の屋上だった(これもその案を最初に誰が出したかは、諸説あってはっきりしない)。撮影費用は安く済むし、ジョンも人目を気にせずに演奏できるので、それがもっとも現実的なアイデアだった。

ちなみにロックバンドによる屋上でのライブは、ジェファーソン・エアプレインが前月にニューヨークでひと足先に実現させている。


1969年1月30日。紳士服店が立ち並ぶロンドンのショッピング通り、サヴィル・ロウは平日ということもあって、多くの人たちが働いていた。

そして時刻は正午を迎えてランチタイムに入ろうとしていたとき、突然、上空から生々しいロックが降り注いできたのである。道行く人たちは上を見上げたが、その姿を見ることはできない。

しかし、それはまさしくビートルズの音楽だった。

最初に演奏されたのは「ゲット・バック」。ビートルズが人前で演奏するのは3年ぶりということもあって、すぐに通りには多くの人たちが集まり、付近のビルの屋上にもビートルズの姿を人目見ようと次々に人が現れた。そのまま「アイ・ウォント・ユー」や「ドント・レット・ミー・ダウン」など、次々と新しい曲を披露していく。


近くに警察署があったため、すぐに警官がアップル社の前に駆けつけたが、彼らもビートルズのファンだったのか、あるいは演奏を聴いている人たちを気遣ったのか、なかなかビルの中に入っていこうとはしない。

結局、彼らが近隣で働く人からの苦情を受けて屋上へと上がり、演奏が止まったのは40分以上が経過してからだった。最後はジョン・レノンの言葉で締めくくられた。

「グループを代表してお礼を申し上げます。オーディションに受かるといいんですが…」


それはビートルズがデビュー前にオーディションに落ち続けたことを皮肉ったジョークだが、初心に戻ることをテーマとしたこのライブの最後にふさわしい言葉だった。

翌1970年に解散したビートルズは、このルーフトップ・コンサートが最後のライブとなった。ポールがビートルズの最後だと感じたのはライブの後、「プリーズ・プリーズ・ミー」を再現した写真を撮ったときだという。

みんなちょっとブルってたからね――「これはかなり最後っぽいぞ。これでふりだしにもどった。オレたちは始まって終わったんだ」。それ以外はみんな、「じゃあまた明日」って感じだった。あれはあくまでも映画用のコンサートだったのさ。


please_please_me
引用元:
『ビートルズ オーラル・ヒストリー』デヴィッド・プリチャード/アラン・ライソート著 加藤律子訳(シンコー・ミュージック)
『ポール・マッカートニー 告白』ポール・デュ・ノイヤー著 奥田祐士訳(ディスクユニオン)

*このコラムは2016年10月に公開されました。


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