ねぇ母さん
たくさんの人たちが涙を流しているよ
兄弟たちが次々と死んでいくよ
僕たちの手でなんとかしないと
ここに今、愛をもたらすために
ねぇ父さん
これ以上戦争の被害を広げないで
戦争は何も解決してくれない
愛だけが憎しみに勝つ
何とかして見つけだそう
この世界に愛をもたらす方法を
これはマーヴィン・ゲイの名曲「What’s Going On」が誕生するまでの話である。
──1970年3月16日、マーヴィン・ゲイ(当時30歳)にとって最高のデュエットパートナーだったタミー・テレル(当時24歳)が、脳梗塞によってこの世を去る。
タミーの死後、彼はショックから立ち直ることができず…しばらく隠遁生活を送っていた。
対人恐怖症に陥り、自宅に引きこもり、所属していたモータウンレコードへの不信感も募り、薬物依存への道を辿ってゆく。
モータウンの創業者ベリー・ゴーディの姉にあたる17歳年上のアンナと21歳の時に結婚して、幸せと成功を掴んだ彼だったが…すでにこの頃は夫婦関係も冷めていたという。
当時、タミーの死が彼にとってどれほどの出来事だったのか?
あるインタビューで語られた言葉がそれを物語っている。
彼女の死は本当に辛かった。
彼女と僕が恋人だったからじゃない。
そうだったらよかったと思うが、僕達の関係はプラトニックなものだった。
辛かったのは、あんなに才能のある美しい人が、あんなに若くして死んだということだ。
この世で自分が愛していた人、好きだった人、仲が良かった人を失うのはなかなか大変なことだよ。
それに僕らは二人共まだ若かったし…ものすごい打撃だった。
また別の女性と一緒に仕事をするなんて考えられない…。
僕は本当に彼女を愛していたよ。
彼はタミーの死によって物事を哲学的に捉えるようになり、音楽以外のことにも関心を向けるようになっていった。
愛する者の死が、彼の心に新たなインスピレーションを与えたのだ。
そして翌年の1971年、数ヶ月に渡って音楽活動から遠ざかっていた彼は、アルバム『What’s Going On』で復活を果たす。
そのオープニングを飾ったタイトルナンバーは、次世代のスティーヴィー・ワンダー等が切り拓いていくこととなる“ニューソウル”の起点となってゆく。
アルバムのジャケットに写る彼は“モータウンの貴公子”と呼ばれた60年代の頃の雰囲気とは違っていた。
冷たい雨に打たれながら遠くを見つめ、思索的な表情を浮かべる髭面の男。
彼は自ら初めてプロデュ-スをしたアルバムに、深刻な社会問題に対するメッセージソングを収録した。

ベトナム戦争に従軍していた彼の弟フランキーから送られてきた一通の手紙が、この曲のモチーフとなったという。
その手紙には、戦地で見た地獄のようなありさまが切々と綴られていた。
悲惨な殺戮が繰り返される戦争や理不尽な問題に対して「この世界はどうなっているの?何が起こっているの?」と力強く問いかけるリフレインに重ねて、彼はすさんだ人々の心に愛を甦らせようと呼びかけた。
この歌の作詞・作曲者のクレジットには、マーヴィン・ゲイの他にモータウンのスタッフだったアル・クリーヴランド、そして人気グループ“フォー・トップス”のレナルド・ベンソンが名を連ねている。
共作者のベンソンは、当時サンフランシスコで反戦運動を行っていた若者と警官隊の衝突を目撃し、それを元に歌詞を書き始めていた。
そして、クリーヴランドの協力を得て曲にまとめようとしていたが…この時点ではタイトルも決まっていなかったという。
当時、その曲を聴いたマーヴィン・ゲイが“What’s Going On”というフレーズ(曲名)を考え、歌詞を追加し、更にメロディーの装飾を加えて楽曲が完成した。
リリースから程なくして初回プレス盤10万枚はすぐに売り切れ、当時(1971年)のモータウンにおいて最速の売り上げを記録した。
ねぇ、いったい何が起こっているの?
この世界はどうなっているの?何が起こっているの?
ねぇ、世界はどうなっているの?
■シンディ・ローパーは1986年のアルバム『True Colors』で「What’s Going On」のカヴァーを発表した。
■U2のボノがエイズの研究および被害者救済を目的としたチャリティシングルの制作を提案し、2001年9月5日から7日にかけて、ジャーメイン・デュプリのプロデュースにより、多数のアーティストが参加した「What’s Going On」のカヴァーがレコーディングされた。
しかし、その直後にアメリカ同時多発テロ事件が勃発したのを受けて、エイズとテロ被害支援の両方を目的としたチャリティプロジェクトに変更された。
こちらのコラムの「書き手」である佐々木モトアキの音楽活動情報です♪
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【佐々木モトアキ公演スケジュール】
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佐々木モトアキの楽曲「You」のミュージックビデオです♪
映像編集、ポートレート(写真)撮影共に、佐々木モトアキ本人が手掛けております。
とてもシンプルな技法ですが、何よりも登場する皆さんの表情が素敵です✨
人が“目を閉じている”表情。
その“瞼(まぶた)に浮かんでいる”誰かの顔。
繋がってゆく“一人ひとりの想い”が、100通りの、いや1000通りのドラマを描いてくれています。

佐々木モトアキ
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