絶対!(definitely)という言葉と、たぶん(maybe)という言葉は、揺れ動く人の心のようだ。
絶対にイエスという気持ちと、もしかしたらノーだという感情の交差点。そんなふたつの言葉を組み合わせた「ディフィニトリー・メイビー」をデビュー・アルバムのタイトルに選んだのは、オアシスだった。
今年、デビュー20周年記念盤が発売された「ディフィニットリー・メイビー(邦題は「オアシス」)」が発売されたのは、20年前の9月のことである。
この不思議な魅力をもったタイトルは、映画にも使われた。2008年に公開された「ラブ・ダイアリーズ」の原題が「ディフィニトリー・メイビー」だった。
だが、このタイトルの曲をミュージック・シーンに定着させたのは、おそらくジェフ・ベックである。
1972年、通称「オレンジ・アルバム」と呼ばれる「ジェフ・ベック・グループ」と題されたアルバムの最後に収録されているのが、「ディフィニットリー・メイビー」だ。
ジェフ・ベックというと、エリック・クラプトンやジミー・ペイジのギターとくらべて、ワイルドなイメージがあるが、この曲でベックのギターはまさに、歌っている。
ロマンチックに、そしてある時はアンニュイに、彼のスライドバーは弦の上を舞い踊る。
この曲には当初、別のタイトルがつけられようとしていた。
「キマリだな!(definitely)」と誰かが言った。
「どうだろうな(maybe)」とまた別の誰かが言った。
そして結局、この曲はそのふたつの言葉を合わせたタイトルになったというのである。
だが、不思議とこの曲には、ベックが奏でるギターの音色には、このタイトルが似合っているのだ。
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