「本物の音楽」が持つ“繋がり”や“物語”を毎日コラム配信

TAP the POP

TAP the ROOTS

カンサスの「ダスト・イン・ザ・ウインド」から聴こえてくる祇園精舎の鐘の音

2026.07.19

♪ ほんの一瞬
  目を閉じる
  その一瞬は過去へと消えていく

  すべての夢は
  僕の眼の前を通り過ぎていく
  不思議な話だ

  風の中を舞う塵
  すべては風の中を舞う塵なのだ ♪


1974年にメジャーデビューを果たしたカンサスが、1977年に発表したバンド最大のヒット曲「ダスト・イン・ザ・ウインド」は、その印象的な歌詞から、様々な憶測をうんだ。

♪ 誰もが思いもしなかった壁は崩れ
  公正の祭壇は
  壊れた
  風の中を舞う、塵        ♪


その歌詞は、エマーソン。レイク&パーマーが1974年に発表した『恐怖の頭脳改革』に収められている「悪の経典#9第3印象」の歌詞がモチーフになっているのだ、と言った者がいた。確かに、カンサスはイギリスのプログレッシブ・ロックに影響を受けたバンドだった。

 祇園精舎の鐘の音
 諸行無常の響きあり
 沙羅双樹の花の色
 盛者必衰の理をあらはす
 おごれる人も久しからず
 唯春の夜の夢のごとし
 たけき者も遂には滅びぬ
 ひとえに風の前の塵に同じ


「ダスト・イン・ザ・ウインド」は日本の平家物語の影響を受けている。そう言った者がいた。確かに、絶頂期にあった成功の空しさを感じていたという説には、説得力があった。

 あなたは顔に汗してパンを食べ
 ついに土に帰る
 あなたは土から取られたのだから
 あなたは、ちりだから
 ちりに帰る


「ダスト・イン・ザ・ウインド」は旧約聖書、創世記第3章19節から取られたのだ。そう言った者がいた。この曲を書いてから少しして、作者のギタリスト、ケリー・リヴグレンがキリスト教福音派に改宗したことがこの説を後押しした。

「ダスト・イン・ザ・ウインド」には誰もの心に響く、何かがあった。この曲が生まれた背景には何があったのだろうか。

バンドは前年1976年に発表したアルバム『永遠の序曲』の成功と、シングル「キャリー・オン・ウェイワード・サン」の大ヒットで、更なる成功へのプレッシャーを受けていた。そして次回作『暗黒への曳航』の完成には、曲が不足していたのである。

そんなある日、バンドのギタリスト、ケリー・リヴグレンは自宅でアルペジオの練習をしていた。静かな午後、アコースティック・ギターの爪弾かれる音を聞いていたケリーの妻が、ふと、こう言った。

「ステキじゃない。歌にしたら?」

ケリーは、気が進まなかった。カンサスのサウンドには似つかわしくないと感じたのだ。だが、彼はそのままギターを爪弾き続けた。そして彼がアメリカン・ネイティヴの詩集を読んでいた時のこと。ある一節が彼の目にとまった。

“我々は皆、風を舞う塵”


その時、ギターのアルペジオがその言葉に寄り添ったのである。カンサスらしくないサウンド、そして歌だった。だが、その曲を聞かせると、レコーディング関係者たちは目を輝かせたのである。埋め合わせだったはずの曲はシングルとなり、カンサス最大のヒット曲となった。

そして「平家物語」が世のあわれを語ったように、「ダスト・イン・ザ・ウインド」は、明確なイメージとして定着することとなった。

dustinthewind

1989年の映画、キアヌ・リーヴズ主演の『ビルとテッドの大冒険』は、歴史の授業で落第を言い渡されそうになった主人公たちがタイムマシンで過去を冒険するコメディーだが、アレックス・ウインター演じるテッドは、ソクラテスに対してこう説教するのだ。

「結局、我々は風の中を舞う塵なのさ」


Point of Know Return


●Amazon Music Unlimitedへの登録はこちらから
●AmazonPrimeVideoチャンネルへの登録はこちらから


    TAPthePOPアンソロジー『音楽愛 ONGAKU LOVE』

    TAP the POPが初書籍を出版しました!

    「真の音楽」だけが持つ“繋がり”や“物語”とは? 
    この一冊があれば、きっと誰かに話したくなる

    今までに配信された約4,000本のコラムから、140本を厳選したアンソロジー。462ページ。

    「音楽のチカラで前進したい」「大切な人に共有したい」「あの頃の自分を取り戻したい」「音楽をもっと探究、学びたい」……音楽を愛する人のための心の一冊となるべく、この本を作りました。

    ▼Amazonで絶賛発売中!!
    『音楽愛 ONGAKU LOVE』の詳細・購入はこちらから

あなたにおすすめ

関連するコラム

[TAP the ROOTS]の最新コラム

Pagetop ↑

トップページへ