ジム・シールズとダン・クロフツは1950年代後半から音楽活動をしていた。テキサス出身の彼らが参加していたグループ、チャンプスは1958年に「テキーラ」というヒット曲を残している。
だが、1965年にグループが解散すると、ふたりはセッション・ミュージシャンとして様々なアーティストと活動するようになる。
そのうちのひとりが、ジーン・ヴィンセントだった。
1956年に「ビー・バップ・ア・ルーラ」を大ヒットさせて一躍時の人となったジーンは、エディ・コクランやバディ・ホリーなどと一緒に、イギリス・ツアーを行っている。デビュー前のジョン・レノンやポール・マッカートニーも観客の中にいた。
だが、彼らに影響を受けたビートルズなどのイギリスの若いバンドがアメリカに上陸する頃には、ジーンの人気にも陰りが見え始めた。
ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれた時代である。ビートルズがアメリカ上陸を果たした1965年は、まさしくシールズ&クロフツが参加していたチャンプスが解散した年に重なる。グループを失ったふたりと、往年の人気を失ったかつてのロカビリースターの組み合わせでは、幸運が訪れるはずもなかった。
ビートルズの解散が近づいた1969年。もしくは、イーグルスが「スピリッツがなくなった」と象徴的に歌った1969年、ふたりはシールズ&クロフツとしてデュオでの再スタートをはかる。
だが、ヒット曲に恵まれるのは、3年後のことだった。
ごらん
窓のカーテンが揺れている
金曜の晩
窓の向こうには微かな明かり
何の問題もないことを知る
「思い出のサマーブリーズ」は、激動の60年代を乗り越えたアメリカの、ほんのひと時の平和を思わせる曲である。
サマーブリーズ
ステキな気分
僕の頭の中
ジャスミンの中
吹いてくる
ジャスミンは夏の花だ。夏。金曜日の夕刻。家には明かりが灯り、優しい家族と週末が待っているという幸福。
「とてもシンプルな歌だよ」とジム・シールズは、メロディ・メーカーのインタビューで語っている。「仕事から帰ってきた男が犬の鳴き声を聞く、みたいなね。多くの人が安心を求めているのさ」
不穏な夏だからこそ、平和な歌を聞きたくなるのだ。
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