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人間性を奪われることへの怒りを歌ったホージア

2018.03.15

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教会に連れていってくれ
君の嘘の神殿で
僕は犬のように崇拝するだろう
僕は自分の罪を口にし
君はそのナイフを研ぐのだ


「大人になっていく過程の中で、僕はカトリック教会の偽善をずっと目の当たりにしてきた」
「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」の作者であり、シンガーのホージアはローリング・ストーン誌のインタビューでそう語っている。
「そしてそのことで溜まったフラストレーションと怒りを歌詞に詰め込んだのさ」

 ホージアが生まれたのは、カトリックの信仰が色濃く残るアイルランドのウィックローという町である。ウィックローはアイルランドの東海岸、首都ダブリンの南に位置している。アイルランドで暮らす人々の9割近くがカトリック教徒と言われているが、ホージアはクエーカー教徒の家庭で育てられたことも、彼が堅苦しさを感じる一因になったのだろう。

 そして、この楽曲を一躍、世に広めたのは、ブレンダン・カンティーという弱小プロダクションにいた男が手掛けたビデオの映像だった。ブレンダンは、ホージアの曲をバックに、ロシアで弾圧されるゲイの姿を描いてみせたのである。

 ホージア自身は、ゲイではない。だが、そこに流れているのは「同じテーマだ」と、ホージアは言い切っている。


死なき死を与えておくれ
神よ、あなたに我が命を捧げよう


 ここでは、宗教は「愛する者」である。
 自らの生を明け渡すことで、永遠の命を得ようとする主人公。だが、その対象は教会ではない。愛する者だ。
「恋に落ちるという経験をしてわかったことは、恋愛というのはある種の死なんだ。すべての死なんだよ」
 ホージアは地元、アイリッシュ・タイムスのインタビューで哲学者のように語っている。
「君が信じてきたものすべては、死んでなくなってしまう。そう、それは死と再生の感覚なのさ」

 ニューヨーク誌では、もう少しわかりやすい言葉で説明してくれている。
「セクシャリティ。それはどんな傾向にあったとしても、自然なことなんだ。性行為というのは、まさに人間的なものなんだよ。それなのに、教会のようなある種の組織では、ある傾向の性を罪なもの、神の意志に反するものとして否定するのさ。だから、この歌はね、愛するという行為で人間性を取り戻そう、と歌っているんだよ」



Hozier『Hozier』
Sony

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