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プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角〜“リングレッツ”旋風を巻き起こした学園映画

2024.02.26

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『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(Pretty in Pink/1986)


青春映画というのは、描かれる登場人物たちが観客と同じ世代だった場合、観る者は特に思い入れが強くなることがある。その映画が傑作であったり、新作として映画館に足を運んだなら尚更だ。そして1980年代半ばに青春期を過ごした人なら、忘れられないジャンルがあることを思い出すだろう──それは“ジョン・ヒューズの学園映画”だ。

雑誌編集に携わりながらコメディ映画の脚本家でもあったジョン・ヒューズが、初監督/脚本を担当した『すてきな片想い』(Sixteen Candles)が公開されたのが1984年。翌年は『ブレックファスト・クラブ』(The Breakfast Club)、『ときめきサイエンス』(Weird Science)、翌々年は『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(Pretty in Pink)、『フェリスはある朝突然に』(Ferris Bueller’s Day Off)、そして1987年には『恋しくて』(Some Kind of Wonderful)を発表。いずれも全米のティーンエイジャーたちに支持されてヒットした。

そこにはファッションや音楽があり、恋愛やお喋り、友情もパーティも詰まっていた。高校という場にはチアリーダーやアメフトなどの目立っているグループだけでなく、一匹狼的な不良、真面目な優等生、ナードとかギークと呼ばれるオタクだっている。

ジョン・ヒューズの映画はそんな花形以外のタイプを主人公に設定したことが新しく、大きな共感を呼ぶことになった。それは日本の高校や教室にもシンクロして、ちょっとオシャレな高校生なら見逃す奴なんていなかった。

上記6本の映画のうち、3本に主演したモリー・リングウォルドの人気は高く、現実離れしたハリウッド女優とは違った「こんなコどこにでもいるよね」的な普通のルックスもあってアイドル化。アメリカの有名雑誌のカバーはもちろん、日本の映画雑誌の人気投票でも上位にランクインしたりした。彼女の登場によって、それまでの美人すぎるブルック・シールズ、グラマーすぎるフィービー・ケイツ、可愛すぎるソフィー・マルソーらの時代は確実に終わりを告げた。

『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(Pretty in Pink/1986)は、そんなモリー・リングウォルドの魅力がフルに活かされた“ジョン・ヒューズの学園映画”の傑作でもある。作品タイトルは「ピンクが似合うコ」の意味で、モリーの大好きな色だったからと名付けられたという。まさに彼女のための映画でもあった。

また、プロムに着ていくドレスが高価で買えなくて、父親と友人から貰った二着のピンクのドレスを自分で一着のドレスにカスタマイズするシーンが秀逸だった。映画における彼女のファッションを真似る女の子たちが続出して“リングレッツ”と呼ばれた。

シカゴの金持ちの子弟が多い学校に通っている貧しい家庭環境のアンディ(モリー・リングウォルド)は、勉強もオシャレも抜群な女の子。チープだけど古着や小物など自分で工夫してセンスを磨いている。目立っているグループの女子から嫌がらせを受けつつも、放課後はレコード屋でアルバイトする日々。

そんな彼女にリッチな少年ブレーン(アンドリュー・マッカーシー)は密かに想いを寄せていて、デートがきっかけで二人は一緒にプロム(卒業ダンスパーティ)に行くことを約束。でも実は幼馴染みのダッキー(ジョン・クレイヤー)もアンディに恋していて……。

音楽的にはダッキーがレコード屋でオーティス・レディングの「Try a Little Tenderness」を口パクするシーンが印象的だが、サイケデリック・ファーズのタイトル曲(モリーがファンだった)やオーケストラル・マヌヴァーズ・イン・ザ・ダークの「If You Leave」が本作のムードを作っていた。後者は全米4位の大ヒットになった。

なお、ジョン・ヒューズは1987年を最後に青春/学園映画を撮らなくなってしまい、『ホーム・アローン』などのファミリー/コメディ映画へと活動を移していった。2009年8月6日に59歳で亡くなったが、“ジョン・ヒューズの学園映画”の影響を受けた青春映画やTVドラマは数知れない。

John Hughes 1950-2009

クライマックスのプロムシーン。ダッキーの決断が泣かせる。

予告編

『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』

『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』

詳細・発売日


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*日本公開時のチラシ
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*このコラムは2014年11月に初回公開されました。

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ジョン・ヒューズの学園映画〜80年代のスピリットを刻んだ永遠のマスターピース(外部サイト)

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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