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音から生まれる物語 ~ 音楽と切り離せないクエンティン・タランティーノの映画

2017.05.29

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ここ数年、映像と音楽がマッチした映像作品が世界中で再び脚光を浴びている。
映画『LA LA LAND』の大ヒットを始め、日本でもアニメ『君の名は。』がその主題歌とともに社会現象を起こしたのは記憶に新しい。

洗練された物語と、その空気感を作り出すいい音楽。それがうまく繋がりあったとき、多くの人々に届くような作品が生まれるのだ。

以前から、音楽と映像がマッチした作品は多く存在してきた。
そのような名作を多数生み出しているのが、世界的映画監督クエンティン・タランティーノである。
彼の作品のほとんどは音楽と切り離せない。

彼は『レザボア・ドッグス』で1992年にデビューして以降、奇想天外で斬新な作品を世に送り出してきた。
そしてどの作品も、音楽へのこだわりが強く伺える。
タランティーノは映画音楽にオリジナルのスコアは滅多に作らず、自分が長年集め続けたレコードコレクションから、楽曲を選んで作中で使う。

その理由はタランティーノの創作の過程にある。
彼は脚本を書き始める前、自分のレコードコレクションの部屋を歩き回り、その中から気分に合わせたものを聴きながら構想を練るのだという。

脚本の中の言葉は音や歌から派生するんだ。脚本を書き始める時、僕は真剣に音楽のことを考えるんだ。音楽を聴きながらカンヌ国際映画祭にいるみんなが気に入っている様子を想像するんだよ。

構想段階から彼の作品には音楽がある。
だから、オリジナルのスコアよりも自分がインスピレーションを受けた楽曲を作中に使うのである。

彼の映画で印象的なのはオープニングの時に使用される音楽である。
物語が始まる前からその作品の世界に引き込まれてしまうような、魅力的な楽曲から彼の映画は始まる。

そんなタランティーノ作品の中から、印象的なオープニング音楽を5つ選んでみた。

1 「Little Green Back」ジョージ・ベイカー

タランティーノのデビュー作『レザボア・ドッグス』に使用された楽曲。オランダ出身のシンガーソングライターであるジョージ・ベイカーが1969年にリリースしたデビューシングル。元々彼の代表作として知られていたが、映画に起用されたことにより20年もの時を経て再評価された。

6人の黒スーツの男たちが歩く姿とブルージーなこの楽曲はとても印象的であり、今でもドラマからバラエティまで様々な作品でパロディにされている。

2 「Misirlou」ディック・デイル&デルトーンズ

彼の2作目でありアカデミー脚本賞を受賞した『パルプ・フィクション』で使用された。ディック・デイル&デルストーンズが1962年にリリースした楽曲であるが、元々オスマン帝国圏で19世紀頃から歌われていた伝統音楽であるという。そのため異国調でゆったりしたテンポだったものをサーフミュージック風にアレンジした結果、ブームに乗って全米で大ヒットした。

『パルプ・フィクション』はカップルがレストランで強盗を行うシーンから始まる。その時にこの「Misirlou」が流れ、早いカッティングのイントロとともにこれから始まる物語の狂騒を予感させる。
3 「Across 110th Street」ボビー・ウーマック

航空会社で働く黒人の女性運び屋が、武器の密輸に巻き込まれるアクション映画『ジャッキー・ブラウン』で使用されたもの。ソウルミュージックの伝説的シンガー、ボビー・ウーマックが1972年の映画『110番街交差点』のために書き下ろした楽曲。この『110番街交差点』は黒人街ハーレムを舞台にした犯罪アクション映画であり、『ジャッキー・ブラウン』を作る際にタランティーノが参考にしたという。エンディングで再びこの楽曲が流れたとき、オープニングとは違った聴こえ方がするのが物語の妙である。
4 「Bang Bang(My Baby Shot Me Down)」ナンシー・シナトラ

結婚式の日に夫を殺された元殺し屋が復讐のために日本へと向かう映画『キル・ビル』で使用された楽曲。アメリカのシンガー、シェールが1966年にリリースした曲をフランク・シナトラの娘ナンシーがカバーしたもの。知る人ぞ知るカバーであったが、この映画に使用されたことにより脚光を浴びた。『キル・ビル』といえば布袋寅泰による「仁義なき戦い」のテーマも有名だが、白黒映像とともに流れるこの楽曲も、復讐劇が始まる前の悲哀を表す印象的な音楽である。
5 「Django」ロッキー・ロバーツ&ルイス・バカロフ

タランティーノ初の西部劇「ジャンゴ 繋がれざる者」で使用された楽曲。1966年の映画「続・荒野の用心棒」のテーマ曲であり、主人公のジャンゴの境遇はこの歌詞から着想を得たようである。「ジャンゴ」が「続・荒野の用心棒」から多大な影響を受けており、そのテーマ曲を使用することによってリスペクトを示している。
タランティーノ自身、オープニングに使う楽曲へのこだわりは強く持っているという。

(オープニングは)音楽があったほうが、映画全体のリズムが得られる気がする。だから例えば「Misirlou」を映画のど頭で使うって発想は、ものすごいインパクトがあっていいと思う。だってこの曲はまるで「ヘイ、これから始まる映画は超大作だぜ、傑作だぜ。さあ、しっかり座って…」って言ってるようじゃん?逆に音楽から映画に向かって挑戦状を叩きつけられる感じだよ。

彼は音楽からインスピレーションを受け、音楽により物語のリズムを形作ることによって名作を生み出し続けてきたのである。

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