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「郷土料理のような音楽」を目指す、never young beach

2017.08.28

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過去のロックやポップスに新しい要素を取り込み、自分たちのオリジナティに昇華させることによって新たな音楽は生まれてきた。イギリスのオアシスやアークティック・モンキーズ、アメリカのニルヴァーナやストロークスがその筆頭であろう。彼らの音楽は新しさを感じさせながらどこかその国らしい、懐かしい響きを持ったものである。
日本のnever young beachもそのようなバンドである。彼らは海外のインディーロックの影響を受けながらも、どこか懐かしさを持った日本語ロックを鳴らしている。

彼らが結成されたのは2014年、当時音楽の道を志していたボーカルの安部勇磨とギターの松島皓が宅録でアルバムを制作。彼らはアルバムのリリースに際してnever young beachというユニット名をつける。この名前はボーカルの安部曰く「かっこいい単語をつなげただけ」だとという。

作品の反響もよく、手応えを感じた彼らはSNSで仲間を募りバンドを結成した。そうして集まった3人のメンバーと共に、彼らはライヴ活動を開始。初めてのライヴで「ヤシの木フラミンゴ」に改名する。その名前はすぐに元のnever young beachに戻されたものの、彼らの懐かしさを感じさせる日本語のセンスは彼らの楽曲にも活かされる。

2015年、彼らはデビューアルバム『YASHINOKI HOUSE』をリリース。「あまり行かない喫茶店で」、「散歩日和に布団がぱたぱたと」など温かみを感じる日本語が使われたタイトルが多く並んだ。
彼らの音楽は洋楽のロックやR&Bのようなどこか新しいものを取り入れながらも、メロディや日本語の響きはどこか懐かしさを感じさせるものであった。

その後すぐさまツアーを行い、ツアーファイナルはチケットが完売するほどの盛況を見せた。そしてアルバムのリリースからわずか3か月後にはフジロック出場を果たし、彼らの評判は瞬く間に広まっていった。

彼らの新しいものと懐かしいものをミックスする感覚は音楽を聴いてきた環境によるものであった。インターネットが普及し過去の音源がアーカイブされていったことによって洋楽や邦楽を問わず、さらには過去の音楽も最近の音楽も分け隔てなく聴いて育ってきていた。
5人は自分たちの好きな音楽の持つ「新しい」、「かっこいい」と思う要素を参考にし、楽曲に落とし込んでいったのだ。

しかし彼らは、その状況に留まることなく翌年セカンドアルバム『fam fam』をリリースする。このアルバムの楽曲たちは、前作より更に日本の伝統的なポップスらしい情緒的なメロディを持っている。
しかもそれだけではなく多くのライヴを経験してバンドとして成長した彼らは、今まで聴いてきた音楽から受けた影響を自分たちのオリジナリティに昇華し始めていた。
様々な音楽に影響を受け、それを昇華させたnever young beachであるが、根底には「日本語でいい曲をつくりたい」という思いがあるという。はっぴいえんどに影響を受けている彼らにとって、細野晴臣や大瀧詠一が海外のロックを参照しながらも「日本人がやっているという感じ」を出していたことに憧れるという。

音楽って郷土料理みたいなものだと思っていて、その土地の色が出ていて、かつそこにいろんなものが混ざっているのが面白いと思うから、そういうバランスは大事にしたいですね
(CINRA.NET インタビューより)

彼らの歌う日本語の懐かしい響きや温かさは、そのような思いから生まれたものであるのだ。新作『A GOOD TIME』の楽曲も懐かしく温かみのある日本語とメロディ、そして「never young beachの音楽」とわかるような演奏が光っている。

never young beach『A GOOD TIME』
ビクターエンタテインメント
(文・吉田ボブ)

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