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「うつらない/歩いてみたら」に込めた never young beach 安部勇磨の思い

2019.01.28

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2015年にインディーズからリリースされたアルバム『YASHINOKI HOUSE』が話題となり、そのトロピカルな演奏と2000年代のオルタナティヴなロックに、日本語の詞を乗せて朗々と歌う独特なスタイルが、「西海岸のはっぴいえんど」などと形容されるnever young beach。
通称“ネバヤン”と呼ばれる彼らの若いファンの多くは、「ネバヤンの曲を聴くとハッピーになれる」と口をそろえる。

2017年には、彼らの通算3枚目となるアルバム『A GOOD TIME』でメジャー・デビュー、それまで順調に駆け抜けてきたように見えた彼らだが、2018年は今までとは様子が違っていた。
オリジナルメンバーであったギターの松島皓が脱退、4人編成となって初めてのシングル曲「うつらない/歩いてみたら」を、アナログ・レコードで10月にリリースした。女性コーラスも加わって、今までのネバヤンのカラーとは少し趣の違う楽曲になっている。

never young beachのギター&ヴォーカルでソングライティングも手がける安部勇磨は、2020年のオリンピックに向けていろいろなことが加速していることを感じるという。

ぼくの好きだった景色とか街並みというものが、なくなっているというのをすごく感じたんですね。※1

平成生まれの、それも東京のど真ん中で生まれ育った安部だが、「商店街」や「路面電車」など、昭和を思わせるようなキーワードが、今までの楽曲にも度々登場するほど、昔ながらの下町の風景をこよなく愛する。
そんな安部は、尊敬する細野晴臣やはっぴいえんどなどの時代のミュージシャン達から直接話を聞いたりする機会があり、本を買って昔の東京について調べてみたという。

50年でこんなに変わるんだ、それってすごいなって思う反面、ぼくは怖い、このままのスピードで変わっていったら、どこに向かってしまっていくんだろうなと…
※2

決してネガティヴではないが、独り言のような感じで曲を書いた、そんなことも初めてだったと語る安部は、自分自身の変化を受け入れながら、正直に思ったことを歌っていかなくてはいけないとも思ったという。

「うつらない」



また、この新曲は10インチのアナログ・レコードと、サブスクリプションのみでリリースされた。
アナログ・レコードを好む安部のこだわりがここにも表れている。レコードに惹かれる理由の一つは、レコードのプレスからオーディオの針の一つ一つに到るまで“人の手を感じる”からだという。

レコードは傷ついたり、汚れたりするからこそ、大事にしようって思える。楽器も塗装が剥がれたり、経年で変化しちゃったりするから愛着があるし、大事にしますよね。簡単に買い換えることに慣れると、僕はあまりいいものが生まれないと思っているので、レコードにときめいてしまうんですね。※3

今回の新曲「うつらない/歩いてみたら」は、レコードにフィットする音作りを意識したと言うとおり、シンプルに削ぎ落とされた温かみのあるサウンドになっている。




「これからは零か百かの時代になると思う」と安部は語る。
音楽で言えば、アナログ・レコードを好むか、ストリーミングでいいと思うか。欧米ではすでにその二極化が進んでいるが、いよいよ日本でもそのような若者が増えつつあるということかもしれない。

そう言えば、まだアナログ・レコードしかなかった49年前にも同じように汚れた雪について歌った歌があった。

「しんしんしん」


約50年の時代を経ても変わらない思い、そして大切にしたいものがある。それらを歌い継いでいきたい、そんな思いもnever young beachの新曲「うつらない/歩いてみたら」には感じられるのだ。


never young beach『うつらない/歩いてみたら』
ビクターエンタテインメント


※1、※2は、J-WAVE 「THE KINGS PLACE」2018年8月23日放送分から、※3は、ビルボードライブ大阪 Billboard Style 10月号「レコードで聴きたい音がある」安部勇磨より、引用しました。

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