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日本人が好きな洋楽①「悲しき願い」~アニマルズから尾藤イサオ、そしてサンタ・エスメラルダ

2024.12.04

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日本で「悲しき願い」がリバイバル・ヒットしたのは、1978年の春から夏にかけてのことである。

当時はディスコ・ブームの真っ盛りで、東京の新宿や渋谷、六本木、池袋、大阪の梅田や心斎橋など、都市の繁華街には次々にディスコが開業して人気を博していた。

そして7月にはジョン・トラボルタ主演の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』が公開されて、ますますブームが過熱していくことになるのだが、その直前に大ヒットしていたのが、サンタ・エスメラルダの「悲しき願い(Don’t Let Me Be Misunderstood)」だった。

「悲しき願い」は、アニマルズのシングル盤が1965年に、全米チャートで15位まで上がったヒット曲である。そしてサンタ・エスメラルダのヴァージョンもまた、アメリカでは1978年2月18日に最高15位でアニマルズと同じ順位だった。


サンタ・エスメラルダは、ヨーロッパとアメリカのミュージシャンやソングライターによって作られたグループだ。

世界的文豪のヴィクトル・ユーゴーが残した代表作『ノートルダムのせむし男』に登場するヒロイン、エスメラルダというジプシーの娘からグループ名が付けられたといわれる。

彼らの「悲しき願い」は、スパニッシュ・ギターやカスタネットなどが使われたフラメンコ調で、ディスコ・サウンドとラテンのミクスチャーが成功して、1977年にまずフランスでヒットした。

そこからヨーロッパとアメリカにまで広がったのだが、日本ではラジオの「オールジャパン トップ20」で1978年4月から5月にかけて1位を続けた。そして年間の洋楽シングルTOP100でも、ベストテンの4位にランクされる大ヒットになったのである。

オリジナルの「悲しき願い」は、サンタ・エスメラルダのヴァージョンとはかけ離れたスローなブルースで、1964年にジャズ・シンガーのニーナ・シモンの歌として発表された。それを取り上げてカヴァーしたのが、イギリスのアニマルズだった。


彼らは1960年代半ばに、ビートルズやローリング・ストーンズ、デイブ・クラーク・ファイブ、ザ・フーなどと共にアメリカし進出して成功を収めた、いわゆるブリティッシュ・インベイジョンと言われたバンドで、ブルースとR&Bをレパートリーにしていた。彼らのヒット曲「朝日のあたる家」もやはり、アメリカのトラディッショナルなフォークソングだった。

アニマルズの「悲しき願い」が世界中でヒットしたのは、オリジナルよりもテンポをあげたこと、男性のエリック・バードンによって、訴えかける歌い方に迫るものがあったこと、そしてイントロやブリッジに特長あるギターのリフが新たに加えられたことだった。


男性が訴えかける哀切なヴォーカルと印象的なリフは、サンタ・エスメラルダのヴァージョンでも、そっくりそのまま受け継がれてヒットに貢献している。

日本ではアニマルズのレコードが出てすぐ後に、尾藤イサオが日本語ヴァージョンを発表してヒットさせた。その歌詞は少ない言葉数というハンデがありながらも、オリジナルのブルースに相通じるものがあった。

そして「誰のせいでも ありゃしない みんな俺らが悪いのか」というフレーズは、当時の流行語になるくらい子供から大人にまで広く浸透した。


尾藤イサオは、1977年にサンタ・エスメラルダのヴァージョンがヒットした時も、それに合わせて新たに録音したヴァージョンを出してリバイバルヒットさせた。

なお、サンタ・エスメラルダのヴァージョンは、2003年の映画『キル・ビルVol.1』にも使用されて、21世紀になってまたしても注目を集めた。そして今でも、生命力のあるスタンダード・ソングになっている。


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