久世光彦が2006年に急逝したことをきっかけに誕生した音楽舞台の「マイ・ラスト・ソング」は、 シンガー・ソングライターの浜田真理子がピアノの弾き語りで、久世がエッセイに書き残したさまざまなジャンルの歌をうたい、 久世のことを恩師と慕う小泉今日子がトークと朗読で出演するというものです。
そこには久世がこよなく愛した歌や涙した歌の数々が、忘れえぬ人たちとの想い出や時代の息吹とともに描き出されていきます。
ほんとうに歌が好きだった久世には、「自分が覚えられない歌はよい歌ではない」という持論がありました。
そして朋友だった作詞家の阿久悠とは、いつも歌を通じてお互いの感性を確認し合うという仲でした。
ふたりが出会って間もないころに作詞を手がけるようになった久世は、小谷夏という名前で堺正章や天地真理、沢田研二の歌を書いています。
そして市川睦月の名前で書いた香西かおりの「無言坂」で、1993年にはレコード大賞にも選ばれたこともあります。
久世は自分が死んだ後、五十年経っても百年経っても残っていく、そんな歌を書きたいとも言っていました。
久世光彦にまつわる歌の物語と、後世に伝えていきたいエピソードを特集としてお届けします。