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ジョニーキャッシュが働く男たちの歌でつづったフロンティアの物語

2024.09.11

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ジョニー・キャッシュには、後に三部作と称されるコンセプト・アルバムがある。

南部の黒人をテーマとした『ブラッド・スエット・アンド・ティアーズ Blood, Sweat and Tears』(1963年)、アメリカインディアンの悲哀を描いた『ビター・ティアーズ Bitter Tears: Ballads of the American Indian』(1964年)。そして、開拓時代を歌った『シングス・ザ・バラッド・オブ・ザ・トゥルー・ウエスト Sings the Ballads of the True West』(1965年)の三作。

だが、それらの原点となるアルバムが、1960年にリリースされた『ライド・ジス・トレイン Ride This Train』である。

キャッシュが実際に機関車に乗り、その昔の幌馬車隊の轍(トレイル)の跡を追いかけるようにアメリカ各地を旅し、行く先々に伝わる物語を歌とナレーションで綴ってゆくという手法で、まだ貧しかった時代のアメリカを正面から見すえようとする。

おおよそ1820年から1890年にかけてといわれる西部開拓時代。アメリカは国土を西へ西へと広げていった。これほど短い時間に、一気に国土を拡張した国は歴史上かつてない。

人々は森を切り開き、家を建て、土地を耕し、「大草原の小さな家」を作っていった。
(「大草原の小さな家」とは、1975年から1982年にかけてNBCが放映したヒューマン・ドラマで、NHKから放映され、日本でも爆発的なヒットとなった)

物語のように、善意の人々がささやかな暮らしを築いていくその反面、先住民たちは追い払われ、今はタスカルサ、ココモとかインディアンたちの地名のなごりが残されているばかりだ。

南部のコットン・フィールドで綿花をつむという、貧しい小作人の時代を過ごした一家に育ったキャッシュに、ひときわ鮮烈に映ったのは、ハンマーをふるう黒人鉄道員、炭鉱夫、木樵り、一攫千金を夢見る油田堀りなど、汗みずくで働く肉体労働の男たちの姿だった。

目まぐるしく時代が変わるなか、多くの職業が消え、そして新しい職業と入れかわっていった。

「アメリカ人にとって、歌を歌うということは、アメリカを歌うことだ」といわれる。フロンティアの時代は、音楽の宝庫だった。

アメリカとは何かを生涯問い続けたキャッシュは、音楽によってアメリカの実像を残そうとしたのだ。




Johny Cash『Ride This Train』
Ernie B’s Reggae

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