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Luka〜スザンヌ・ヴェガが紡いだ幼児虐待をテーマにした名曲

2018.03.25

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2016年4月21日に急逝したプリンス。
彼の訃報を受けて、各界から悲しみの声と哀悼の言葉多く寄せられる中、スザンヌ・ヴェガが「プリンスからの手紙を見つけたわ」とツイートし手紙を写した写真を投稿した。
その手紙には“最愛のスザンヌへ”としつつ、こんな言葉が綴られていた。

「ルカは僕が長い間聴いてきた曲のなかで最も説得力のある曲だ。この曲を聴いたときに感じたことは言葉では言い表せない。君の事を心から神に感謝する。」




僕の名前はルカ
ここの二階に住んでいるよ
君の部屋の上だよ
僕を見かけたことあるよね…

もしも真夜中に
もめ事とか喧嘩みたいな騒ぎ声を
聞こえたとしても
「一体何があったの?」とか
そんなの訊いて来ないでね
とにかく無視してくれればいいから…


この「Luka」はスザンヌ・ヴェガ(当時28歳)が1987年に発表した2ndアルバム『Solitude standing』に収録した曲で、後にシングルカットされ全米3位を記録するヒットソングとなった。
作詞作曲を手掛けたスザンヌは、あるインタビューで創作の経緯についてこんなことを語っている。

「曲のモデルとなったルカという名前の少年は、昔私が住んでいた家の近くで遊んでいた子供達の一人なの。他の子とはちょっと感じが違っていて…だけど実際にどういう子かは知らなかったわ。彼の顔と名前がずっと頭から離れなかったの。ある時、その“違い”が虐待という角度で見えてきはじめて…2時間で曲ができあがったわ。」

僕がのろまだからダメなんだよね…
あまり大きな声は話さないように努力はしてるよ
僕が普通じゃないからいけないのかも
偉そうになんかしているつもりはないんだけど…


カリフォルニア州サンタモニカで生まれたスザンヌは、生後数ヶ月の頃に母親に連れられニューヨークへ移り、多くの社会的問題を抱えた地域で幼少時代を送る。
母親の再婚相手がキューバ系で姓がヴェガであったため、その姓を名乗るようになる。9歳の頃から詩を紡ぐようになり、14歳の時にはすでに曲に乗せて歌詞を書いていたという。
その後、ラガーディア高校でモダンダンスを学びながらも、音楽へとのめり込んでゆく。
1977年に高校を卒業すると、コロンビア大学バーナードカレッジで英文学を学ぶ傍ら、
グリニッチヴィレッジの小さな劇場のステージに立つようになる。
そして1984年にレコード会社との契約を結び、翌1985年(当時25歳)にデビューアルバム『Suzanne Vega』を発表する。
彼女が書く内省的で社会批判を含んだ曲は、MTV全盛期だった音楽シーンにおいて異色ではあったが幅広い世代から好意的な反響を得る。
その翌年に発表したのがこの「「Luka」だった。


当時のアメリカでもうすでに社会問題となっていた“幼児虐待”をテーマにした歌詞が大きな反響を呼ぶこととなる。
それから約35年の時が流れ、人類は様々な面において大きく進化してきたのだが…
目を背けたくなるような児童への陰湿な性的虐待や非人道的な権利侵害は、今も世界各地で起きている。
WHO(世界保健機構)によれば、成人の4人に1人は年少時に身体的虐待を受け、女性の5人に1人、男性の12人に1人は年少時に性的虐待を受けた経験があり、毎年15歳以下の児童4万1000人が自宅で殺害されていると報告した。
日本においてもその数は増加傾向にあるという。
児童虐待は、そのほとんどが家庭内で起き、外部の人からは気付きにくい。
被害者が幼い子供達であり、自ら被害を訴えることができにくいことなどから、その被害が周囲に知れた段階では被害がとても大きい状態となっていることが多いという特徴がある。
今日もどこかに助けを求めている子供達がいる。

あの人達は僕が泣くまで殴るだけなんだ
だからもうその後は「どうして?」なんて聞かないで
ただとにかく諦めて…口答えもしないんだ


日本には児童虐待の防止等に関する法律がある。
その第六条には「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに(中略)児童相談所に通告しなければならない」と書かれている。
我々国民には“通告する義務”があるのだ。
通報した人の名前は漏らさないことになっており、通告がもし間違っていたとしても責任は問われない。
児童相談所も年々増え続ける陰湿な事件に、うまく機能しないこともあるというが…それでもまず“気づいた人が声をあげること”が重要なのだ。
声を上げられない子供達を守るために…
この世で最も憎むべき犯罪の一つ、児童虐待を一日も早く撲滅するために…
我々大人達はもっと積極的に取り組み、行動しなければならないのではないだろうか?約35年前に書かれたこの「Luka」という歌が、今、我々に問いかけてくる。
あなたのすぐ近くに“ルカ”のような子供はいませんか?

「大丈夫、僕は平気だよ」
もし君が訊いてきたら僕はそう答えるよ
またあの家に戻ったんだ
でもどっちみち君には関係のないことだよね

できれば一人になってみたいかな
そしたら何も壊されることはないし
何も投げつけられることもないだろうからね
「大丈夫?」とか「元気?」とか
そんなの訊いてこないでよ…お願いだから








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