あらゆる音楽を貪欲に吸収しながら、常に変化していく裏打ちのビート──レイ・マストロジョバンニが自身の名を冠したフル・アルバムは、スカというリズムの可能性と先鋭さを、あらためて世に知らしめる作品だ。

1981年、イタリア系アメリカ人の父と、岸和田の血を引く母の間に生まれたレイ・マストロジョバンニは、8歳まで大阪で生活し、その後オレゴンに移住したバイリンガルだ。ティーンエイジャーの頃からバンド活動をはじめ、2002年には〈POCKET FACE〉というスカパンク・バンドでデビューし、来日ツアーも敢行した。その後、日本に拠点を移してソロ活動を開始。2006年、初のソロ・アルバム『HAPINESS!!』でメジャー・デビュー。2010年にはソロでの音楽スタイルを発展させたバンド形態〈NEON GRAVITY〉としてアルバム『db』をリリース。サマソニなどの野外フェスへの出演も果たした。並行して、自身が主宰するイベントの開催や、アンジェロ・ムーア（フィッシュボーン）の来日ツアーなどサポートミュージシャンとしての参加や英語詞提供、さらにはモデル／タレント活動なども行いながら、地道に自身の音楽を追究してきた。

2014年にはソロ名義の作品としては久々となる、自主制作EP『MINT』をリリース。スカとヒップホップ、インディー・ロックをミクスチャーしたサウンドは大きな話題を集める。時を前後して、UKザ・スキンツを筆頭とする、ヒップホップやダンスホール・レゲエ、ニューウェイブなどを通過した現在進行形なスカ／レゲエや、世界各地で新種が出没しているグローカル・ビーツとも共鳴しあいながら、レイ・マストロジョバンニはさらに自由な精神で、スカとヒップホップを軸にさまざまなダンス・ミュージックをミクスチャーしていく。その最新スタイルが、今回リリースされたセカンド・フル・アルバム『REI MASTROGIOVANNI』と言えるだろう。

Base Ball Bear、オレスカバンド、WUJA BIN BIN、Cubetone、スネイルランプなどのメンバーが多数参加した本作は、アグレッシヴな三味線ソロがフィーチャーされた「DELIVA (feat. Moroboshimann)」にはじまり、フューチャリスティックな2トーン・スカといった趣の「MATT NEWMAN (feat. Minami from Cubetone)」、Nu-Discoに目配せをしたファンキーなバックビート「All That I Wish To Be (feat. Arisa Safu)」「REMEMBER」など、目まぐるしいほどに多彩なアプローチで楽しませる。

持ち前のポジティヴなヴァイブスで、多くの人たちを巻き込んでいくレイ・マストロジョバンニという男。彼が生み出す斬新なサウンドには、日本のみならず、世界の音楽シーンをも牽引していくほどのパワーを感じてならない。

レイ・マストロジョバンニ
『REI MASTROGIOVANNI』

（Hallelujah Circus Inc.）

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