TAP the ROOTS

レナード・コーエンが花束を捧げた憧れの聖女

2015.04.30

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『アルジャーノンに花束を』は、ダニエル・キースが1959年に発表した小説が原作になっている。

精神遅滞というハンデキャップを持つ主人公チャーリーは、ハツカネズミで成功した手術を受け、驚異的な知能を得るようになる。
だが、すべてがうまくいくわけではない。彼は徐々に孤独を感じ、知らなくてもよかった事実をも知るようになる。また、突然の知能発達は、感情のバランスを崩してしまう。
そして彼はある日、ハツカネズミのその後を知ることになる。。。

原作の最後では、主人公は知的障害施設に戻ることを決意する。そして手術を担当した大学教授に次のようなメッセージを残す。

「裏庭にあるアルジャーノンのお墓に花束を供えてやってください」

アルジャーノンとは、ハツカネズミの名前なのだ。

周囲とのコミュニケーションに悩む主人公チャーリー(2002年版のドラマではユースケ演じる藤島ハル)の気持ちを代弁するような形で使われたのが、ジェニファー・ウォーンズの「ソング・オブ・バーナデット」である。
アルジャーノンが一匹の数奇な運命に翻弄されたハツカネズミの名前であったように、バーナデットも、驚くような人生を送った少女の名前である。

♪ その昔、バーナデットという
  子供がいました
  そのお話を聞いたのは、
  ずいぶん前のこと
  女の子は天国の女王様の姿を見ると
  そのビジョンをずっと心に
  秘めていました
  女の子が見たことを信ずる者はなく
  女の子が聞いたことを信ずる者も
  いませんでした ♪


その時、ジェニファー・ウォーンズは南フランスへ向かうツアー・バスの中にいた。彼女はレナード・コーエンのツアーにコーラスとして参加していた。
「ジェニファーはカトリック信者として育てられた子だが、ツアー中、ずっと南仏の聖女のことを話していた。そして私にとっても、ベルナデッタ・スビルー(=バーナデット)は魅力的な人物だった」とレナード・コーエンは語っている。

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バーナデットは、フランス語では、ベルナデッタ。19世紀の中頃、南仏の田舎町に生まれた彼女は、ルルドの奇跡の主人公となる。
1858年2月11日、14歳だったベルナデッタは薪拾いをしている時、眩い光の中、美しい少女と出会う。思わず彼女が祈りを捧げると、美しい少女も同じようにロザリオの祈りを捧げた。そして何度も何度も、彼女は美しい少女と出会うことになる。
そしてある日、彼女は少女に名前をたずねる。
「無原罪の御宿り」と、少女は答え、自らが聖母マリアであることを告げる。そしてベルナデッタに「泉に行って水を飲み、顔を洗いなさい」と言うのだ。
湧き出た泉はルルドの泉と呼ばれ、その後、多くの人の病を癒すことになる。

この物語を知り、実際に南仏を訪れたのがオーストリア人作家、フランツ・ヴェルフェルである。
彼が書いた小説を原作として、1943年、ヘンリー・キング監督の映画『ベルナデッタの歌』が公開される。この映画でベルナデッタ役を好演した女優は、ジェニファー・ジョーンズといった。

song 2 pt2

レナード・コーエンは、どこかでジェニファー・ジョーンズとジェニファー・ウォーンズの姿をダブらせていたのかも知れない。
だが、ジェニファーは、この楽曲を共作することとなる決定的な話をレナードに打ち明ける。

「実は。。。私の名前はバーナデットだったの。それが生まれた時につけられた名前。でも、兄さん姉さんたちがジェニファーがいい、と言ったそうなの。それで10日かそこらで私の名前はジェニファーになった。。。」

ジェニファー、いやバーナデットは、そう言ったのだ。

「私はずっと、私と私の間、ジェニファーとバーナデットの間でお話をしてきたの。
ねえ、お願い、一緒に曲を書いてくれないかしら」

そしてレナード・コーエンは全面的な協力を申し出た。
レナード・コーエン自身は、この曲がお気に入りだ。

「でも、私はこの曲をひとりで歌うことはない」

レナードは楽曲という花束をバーナデットに捧げたのである。


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