ララー
ララララ、ララー
叙情的な女性のコーラスに哀愁を帯びたバイオリンのメロディーが絡んでいく。そして。。。
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燃え上がるバイオリンの調べとともに
あなたの美しさへと
この私を踊らせ給え
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レナード・コーエンが1984年に発表した「哀しみのダンス」は、そんな歌詞で始まる。難解な歌詞を書くことが多い彼だが、この作品はその時代背景もあってビデオ・クリップが作られたため、死を迎えるまで愛し合うことを歌ったラヴソングだと、誰もが考えたものだった。
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恐怖を乗り越え
私が無事、召されるまで
踊らせてほしい
家路へ向かう鳩が
オリーブの枝を拾い上げるように
私をすくい上げ給え
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ビデオ・クリップでは様々な人種のカップルが踊り、口づけする様子が描かれていた。
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愛が果てるまで
私を踊らせ給え
愛が果てるまで
私を踊らせ給え
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だが、曲が発表されてしばらく経ってから、レナード・コーエンは耳を疑うようなキーワードを明かしたのである。
それは、ナチスによるユダヤ人強制収容所の物語だった。
アウシュヴィッツの強制収容所に女性オーケストラが結成されたのは、1943年のことだった。それは、親衛隊の命令だった。オーケストラは、強制労働への出迎えに、そしてガス室への見送りに、曲を演奏していたのである。
当初、中心となったのはポーランド人、ゾフィア・チャイコフスカ夫人だったが、指揮者は後に、ウィーンの女性オーケストラの女性指揮者だったグスタフ・マーラーの姪、アルマ・ロゼに替わっている。
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見張りがいなくなったら
あなたの美を見せておくれ
バビロンでそうしたように
あなたの動きを感じさせておくれ。。。
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見張り、とは、まさに収容所の見張りのことだった。
だが、レナード・コーエンは、ユダヤ人の強制収容所そのものを歌にしたかったわけではない。実際、セックスを感じさせる上記の歌詞はこう続く。
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愛が果てるまで
私を踊らせ給え
愛が果てるまで
私を踊らせ給え
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愛が果てるまで、は、ここでは男の射精を思わせる仕掛けになっている。
そう、レナード・コーエンはユダヤ人である自らだけでなく、すべての人間を強制収容所にいる人間にたとえたのだ。
我々人間は、100%死を宣告された存在なのである。
11月7日。
召されることになったその日、レナード・コーエンの耳元では、オーケストラの演奏が響いていただろうか。
それを確かめるすべはない。
だが、これだけは確かだろう。
彼は、最後まで踊った。
聖なるダンスを。
退廃のダンスを。
美のダンスを。
快楽のダンスを。
言葉とメロディーのダンスを。
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愛が果てるまで
私を踊らせ給え
愛が果てるまで
私を踊らせ給え
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