2016年11月7日、レナード・コーエンが82歳でこの世を去った。その最後の置き土産として残されたのが、同年10月21日にリリースされたばかりの遺作『You Want It Darker』だ。
レコーディングの時にはもう、レナード・コーエンは医療用の車椅子に座っていたという。身体もだいぶやせ細っていた。彼自身、癌の末期であることは自覚していた。そんな彼のレコーディングをプロデュースしたのは、彼の息子、アダムだった。
最後となった9月のインタビューで、レナードは若くして死に別れた父親との思い出を語っている。父親の死後、レナードは父親のクローゼットを開け、そこにボウ・タイを見つけ出す。
私はそのボウ・タイを手に取り、何がしかのメッセージを書いた。そしてそれを庭に埋めたんだ。それは私にとって、ある種の礼拝だった。
レナード・コーエンはそう語っている。そして遺作となった『You Want It Darker』で、彼はある古いヘブライ語を散りばめた。
Hineni
神に対する返答であるその言葉の意味は、
私はここにいる
光溢れているはずのこの世を暗くするのは、人間自身である。そんな意味を含めたアルバムに書き込んだメッセージと共に、レナード・コーエンは自らを埋葬しようとしたのだろう。
「You Want It Darker」
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