「♪ナーナナナナー」という、一度聞いたら忘れられないフレーズでお馴染みの「ダンス天国」。
ソウル・シンガーのウィルソン・ピケットが1966年にリリースし、全米R&Bチャートで1位、総合チャートでも6位まで上昇した大ヒット曲だ。
日本では、アイドル的な人気を獲得していたウォーカー・ブラザーズがカバーしたバージョンが1967年に大ヒットしており、こちらのバージョンのほうがしっくりくる人も多いかもしれない。
この歌のオリジナルを歌ったのは、R&Bシンガーのクリス・ケナーだ。
クリスはアメリカ南部に伝わる「チルドレン・ゴー・ホエア・アイ・センド・ジー」という黒人霊歌からヒントを得て、「ダンス天国」(原題「Land of 1000 Dances」)を書いたという。
冒頭の「子どもたちよ、私が遣わすところへ行きなさい」という歌い出しは、そのまま引用されているが、辿り着いた先は千の踊りの島であり、ツイストやジャイヴ、アリゲーター、ポニー、ワトゥーシなど様々なダンスが歌の中で紹介されていく。
アラン・トゥーサンがアレンジを手がけたクリス・ケナーのバージョンは1962年にリリースされたが、このときにはまだ「♪ナーナナナナー」というフレーズは出てこない。
「ダンス天国」に新たな生命が吹き込まれたのは1965年。
ロサンゼルスで活動するバンド、カンニバル&ヘッドハンターズは、レパートリーの中に「ダンス天国」を入れていた。
しかしあるときのライヴで、ボーカルのフランキー・ガルシアは演奏中に歌詞を忘れてしまう。
そのとき咄嗟に口から出てきたのが「♪ナーナナナナー」というフレーズだった。
このフレーズを他のメンバーたちが気に入ったことで、彼らは「ダンス天国」を歌う際に毎回このフレーズを入れるようになった。
彼らはスタジオでレコーディングするお金がなかったので、ライヴを録音してそのままレコードにする。
1965年の春にシングルとしてリリースされた「ダンス天国」は、無名の新人ながら全米チャートで30位を記録した。これによって知名度の上がった彼らは、その年の夏にビートルズのシェア・スタジアムでの公演で前座を務めている。
その年の12月、ウィルソン・ピケットはヘッドハンターズと共演したのをきっかけに、彼らのバージョンの「ダンス天国」をレパートリーに入れた。
そして翌年7月にシングルとしてリリースし、大ヒットさせたのである。
その後はアイク&ティナ・ターナーやテッド・ニュージェント、ロイ・オービソン、日本では黛ジュンなど様々なミュージシャンがレコードで、あるいはライヴでこの曲を取り上げている。
曲が本来持っていたグルーヴ感がアップテンポになることで強調され、さらに「♪ナーナナナナー」というキャッチーなフレーズが加わったことで、「ダンス天国」はスタンダード・ナンバーとなったのだ。
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