TOKYO音楽酒場

【26軒目】秋葉原・しょっと おかめ──高架下で20年続く、ロックな立ち呑み酒場

2015.10.13

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いい音楽が流れる、こだわりの酒場を紹介していく連載「TOKYO音楽酒場」。今回は、パッと見ると渋い居酒屋。だけど、中身はロックへのあふれんばかりの愛情がほとばしる、秋葉原の立ち呑み居酒屋を紹介します。

日本最大の電気街、最近ではオタク・カルチャーを象徴する街として有名な秋葉原。海外からの観光客も多い電気街改札口の裏側、昭和通り改札口を出ると街の雰囲気は少し変わる。昭和通りを挟んだ両側を飲食店や居酒屋、キャバクラなどの看板が彩る。大きな通りを渡って、総武線の線路沿いを浅草橋方面に向かうと、高架下に酒場が軒を連ねる。しばらく歩けば、大きなおかめが描かれた看板が見えてくる。店の前には、早い時間から気持ちよさそうに外呑みする人たちの姿が。一見、普通の立ち呑み酒場のようなこの店が、今回訪れる〈しょっと おかめ〉だ。

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アルミサッシの引き戸をガラリと開けると、店の中にはレッド・ツェッペリンやエリック・クラプトンなど70年代のロック・ミュージシャンたちの写真、レコードジャケット、偉大なアーティストたちの来日コンサートのチケット半券などが、壁じゅういたるところにみっちりと貼られている。

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外観と店内のギャップに戸惑いながらも飲むスペースを確保しカウンターへ。飲み物は缶ビールや缶チューハイを冷蔵ケースから自分で取り出すか、レモンサワーなどのジョッキものをオーダー(もちろん酒はかなり濃い!)。つまみは焼き鳥や揚げ物などを直接注文するか、すでにカウンターに並んでいる小皿料理、もしくは乾き物をチョイス。1000~1500円もあれば、十分に満足できる安さも魅力だ。

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マスターの齋藤信夫さんは、20年前にこの店をはじめた。

「実家は川崎で寿司屋をやっててさ、親父が死んじゃってから10年ぐらい店を継いでたんだよね。だけど、喧嘩して家を出ちゃって。その頃、知り合いから秋葉原に物件があるから立ち呑み屋をやらないかって誘われて。俺、そんなに酒飲まないし、立ち呑みも行ったことなかったから最初は断ったんだけどね。何も持たないで家を出てきちゃったから金も無かったし、前の屋号だった〈おかめ〉って名前もそのまま居抜きではじめたのがこの店なんだよ」(齋藤さん)

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「前の店は、店長が酒癖が悪くて暴れる人だったらしくてさ。それで最初の頃は、みんな寄り付かなくなっちゃってたのね。店が暇すぎて客が来ねえもんだから、床に寝っ転がってたぐらい(笑)。2、3ヶ月はそういう状況が続いて、さすがにこれはヤベェなって思ったね。だけど、次第に口コミで広がってって近所のサラリーマンなんかも来るようになって。店の中も殺風景だったから、家からレコードジャケットを持ってきて張り出して。すると、昔の音楽仲間とかも来るようになってね。お客さんもレコードや楽器を持ち込むようになって、だんだんこんな感じになっちゃったの」(齋藤さん)

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マスターの齋藤さんは、ただのロック好きのおじさんではない。十代の頃から横浜を拠点にドラマーとして活躍。本牧や伊勢佐木町あたりのナイトクラブで夜毎演奏していたという。

「俺は今64歳なんだけど、ゴールデン・カップスの連中なんかは3、4つ年上。俺らがガキの頃は、横浜にも今以上にアメリカ人がいてさ。飲んで踊らせる店がいっぱいあったわけ。そこでR&Bを演奏するバンドをやってた。ドラマーとしてもより上手い奴とやりたいから、いろんなバンドの前座もやったね。ジョニー吉永がやってたイエローとか、頭脳警察とかカルメン・マキ&OZとかいろいろやったね。クリエイションのメンバーなんかとは、最近またちょくちょくあの頃の昔話をしてるね」(齋藤さん)

齋藤さんが大きな影響を受けたのは、1971年に初来日したレッド・ツェッペリンだったそう。

「店に貼ってあるチケットは、ビートルズ以外全部観に行ったやつ。71年だけでもピンク・フロイドとかフリーとか、BS&T(ブラッド・スウェット&ティアーズ)、そしてツェッペリンでしょ? それ以降も、(エリック・)クラプトンにディープ・パープルと、いろいろ来たんだよ。ZEPの初来日の時は、渋谷のウドーに徹夜で並んでチケット取ってさ。東京の2日間行ったんだけど、当時のミュージシャンはみんな見に来てたよ。それまではストーンズやビートルズ、ベンチャーズみたいに直立不動で立って演奏するような感じだったのが、汚ねえ格好でダラダラ出てきて『お前らに俺たちの音を聞かせてやる』みたいな感じではじまるわけじゃない? で、はじまったミュージシャンが怒り狂ったような音を出してるわけよ。俺も、洗礼を受けたどころじゃなくて、向こうはここまでいっちゃってるんだって声も出なかったのを覚えてる。俺なんかはドラマーだから基本的にはバックだし、フロントマンといえばやっぱりボーカルやギターなんだけど、ZEPってジミー・ペイジだけじゃなくて、4人全員が機能してるんだよね。あれに似たバンドは、ザ・フーとフリーで全部UKなんだけど、メンバー1人欠けてもダメなんだっていうバンドをベースマンとかドラマーは好むわけ。メンバー全員がしっかりと噛み合って、いいサウンドができるんだよ。この4人じゃないと、この独特なサウンドは作れねえよなってバンドが好き。当時はとくに、それが生まれる瞬間っていうのを目の当たりにできたから、興奮したよね」(齋藤さん)

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ぱっと見、近寄り難そうな齋藤さんだが、好きなロックのこととなれば、堰を切ったようにいろんな話を聞かせてくれる。そんなマスターの人柄に惹かれて、ロック好きの常連さんが集まるようになった。8年ほど通っているというトミーさんは語る。

「僕はハードロックが好きで、以前はオリジナル曲でバンドをやってたんです。最近2年ぐらい前からまたバンドをはじめて。エアロスミスのコピー・バンド(アダムスミス)をやってます。一番最初は『大人のロック』って雑誌で紹介されてるのを読んだのがきっかけ。以前から店の前は通ってたんですけど、外見は普通の居酒屋じゃないですか? でも中身はロックな立ち呑み屋っていうのを知って。それで入ってみたんです。最初のうちは月に2回ぐらいだったんですけど、それからだんだん頻繁に来るようになって。今ではほぼ毎日駒込から来てます(笑)」(トミーさん)

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「カウンターに並んでるつまみも、家庭料理ですけど1皿200円ぐらいで毎日飲む人間にはありがたいですよね。じゃあ、毎日通う交通費はどうなるんだって話なんですけど(笑)。それでも来たくなる魅力がこの店にはいっぱいある。マスターの人柄がいい、店の雰囲気もいい、安くて美味しい。3拍子揃ってますよ」(トミーさん)

「前の店は冷奴とおでんと乾き物しかなかったけど、焼き鳥とかも出すようにしていった。そうしたら若い子が来るようになって。で、20年も同じようにやってると飽きてくるから、最近は小鉢系をはじめたりね。すると小鉢を狙って、客も通ってくれるようになる。そうやって少しずつ肉付けしてるうちに、いろいろ出すようになっちゃったんだよ(笑)」(齋藤さん)

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2年ほど通っている常連のマサさんも、店の近所に引っ越して来てからすっかりハマってしまったという。

「立ち呑みが好きなんで、引っ越してきてから近場にいい店ないかなって探してるうちに、おかめを見つけて。ガラッと開けたらAC/DCが流れてて、すごいアガりましたね。外観と内観のギャップに衝撃を受けて『ここしかない!」って思いました(笑)。いつも飲むのは缶チューハイ。つまみはあまり食べないことも多いですね。この店は常連さんがほとんど。話したい人同士は話すけど、そうじゃない人も一人でゆっくり飲める。あまりベタベタと干渉しないような感じで、お互いがちょうどいい距離感を保ってるのがいいんですよね」(マサさん)

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「今来てる連中は、4巡目の世代ぐらいかな。最初の人たちはリタイアしちゃったりして、だんだんと世代交代してるね。近くにあるタワーレコードの連中も来るよ。今ジジィ世代の連中に、当時の話を聞きたがるよね。『あの来日公演、マスター見たんでしょ?』とか、そういう話をよく聞かれるな」(齋藤さん)

そっけなく放ったらかしにしているようで、お客さんの気持ちを小まめに汲み取ってくれるマスターの心遣い。そして、あふれる音楽への愛情──そんな居心地良さに、仕事帰りの音楽好きたちが当たり前の習慣のようにふらっと立ち寄っては、ロックを聴きながら一杯やって、リフレッシュして家路につく──見た目は居酒屋、だけどその本質はイギリスの街じゅうにあるパブのような役割を果たしているのが、しょっと おかめという店なのかもしれない。

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撮影/相沢心也



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しょっと おかめ
東京都千代田区神田佐久間町3-37
18:00~24:00 日祝休

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