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グレイス・オブ・マイ・ハート〜キャロル・キングをモデルにしたソングライター黄金時代

2017.06.19

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1950年代後半〜60年代前半。ニューヨークのブリル・ビルディングには、多数の楽曲出版社がひしめき合い、新進気鋭のソングライターたちがヒット曲を量産していた。ポップ・ミュージックの黄金期、アメリカのイノセンス時代のサウンドトラックなどと言われるこの時期は、「ブリル・ビルディング・サウンド」として歴史に燦々と輝いている。

ジェリー・リーバー&マイク・ストーラー、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィン、バリー・マン&シンシア・ワイル、ニール・セダカ&ハワード・グリーンフィールド、ジェフ・バリー&エリー・グリニッチ、ドク・ポーマス&モート・シューマン、バート・バカラック&ハル・デイヴィッドなど、ソングライターチーム(作詞作曲家たち)が多数活躍。ガール・グループやティーン・アイドルといったジャンルも形成された。

『グレイス・オブ・マイ・ハート』(Grace of My Heart/1996)は、このブリル・ビルディング内の楽曲出版社アルドン・ミュージックから巣立っていったキャロル・キングをモデルにした映画で、彼女が売れっ子ソングライターだった時代から、紆余曲折を経てやがてシンガー・ソングライターとして脚光を浴びるまでの、1950年代後半〜70年代前半のドラマが描かれる。

監督・脚本はアリソン・アンダース。マーティン・スコセッシ製作総指揮。キャロルを彷彿とさせるエドナ(デニース)役にはイレーナ・ダグラス。その他、エリック・ストルツ パッツィー・ケンジット、マット・ディロン ジョン・タトゥーロ、ブリジット・フォンダらが共演。

物語はビートルズやディラン登場前夜の1958年から始まる──レコード契約のかかった歌のコンテストで優勝したエドナ(イレーナ・ダグラス)だったが、「女性ソロが売れる時代は終わった」ことを理由に夢が断たれようとしていた。そんな矢先、プロデューサーのジョエル(ジョン・タトゥーロ)がエドナに才能を感じ、ソングライターとして契約。お嬢様だったエドナを下町出身の庶民派に見せるため、名前をデニース・ウェバリーにする。

以来、デニースは等身大の同世代の気持ちを反映したヒット曲を量産するようになり、一躍注目の存在に。彼女に惚れた同じソングライターのハワード(エリック・ストルツ)とチームを組んでからも、話題作を連発する。ハワードの会社にはシェリル(パッツィ・ケンジット)も加わり、女同士で組んで人気絶頂のアイドル歌手のケリー(ブリジット・フォンダ)に曲を提供してイメージチェンジに貢献。子供も産んだデニースの未来は明るく輝いているように見えた。

しかし、ハワードの浮気が原因で離婚。人気DJのジョンとの悲恋を乗り越えると、いよいよ彼女にシンガーとしてレコード制作の話が持ち上がる。時代はビートルズやディランが登場しており、サイケデリックやヒッピーの時代がすぐそこまで迫っていた。天才ヒットメーカーで人気バンドのリーダー、ジェイ(マット・ディロン)がプロデュースしたデビュー曲はヒットこそしなかったものの、二人は結ばれて一緒に暮らすようになる。

だが、そんな愛の日々も長くは続かない。ジェイがドラッグで精神状態を崩して死んでしまう。失意のエドナはヒッピーのコミューンで生活するようになるが、心配になって迎えに来たジョエルに励まされ、遂にソロアルバムのレコーディングを行って立ち直る。時代は70年代に突入。シンガー・ソングライターとしてのエドナが誕生したのだ……。

映画中の音楽は様々なミュージシャンが吹き替えしているが、マット・ディロン演じたジェイ・フィリップスの歌は、J・マスシスが担当。主題歌「God Give Me Strength」はバート・バカラックとエルヴィス・コステロが共作した。離れた都市に住んでいた彼ら。コステロは曲を完成させるために、バカラックの留守電に演奏と歌を録音したという。

●以下はモデルになった人物たち
エドナ/デニース:キャロル・キング
ハワード:ジェリー・ゴフィン
ジョエル:フィル・スペクターあるいはドン・カーシュナー
ジェイ:ブライアン・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)
シェリル:エリー・グリニッジ
ルミナリーズ:シュレルズあるいはクリスタルズ
クリック・ブラザーズ:エヴァリー・ブラザーズ
ケリー:レズリー・ゴーア

予告編


「God Give Me Strength」

「My Secret Love」

『グレイス・オブ・マイ・ハート』

『グレイス・オブ・マイ・ハート』


*日本公開時チラシ
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*参考/『グレイス・オブ・マイ・ハート』パンフレット

*このコラムは2017年1月4日に公開されました。

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
名作映画の“あの場面”で流れる“あの曲”を発掘する『TAP the SCENE』のバックナンバーはこちらから

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