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カラーズ/天使の消えた街〜生まれながら犯罪環境に置かれ育つということ

2019.08.21

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『カラーズ/天使の消えた街』(Colors/1988)が日本で劇場公開されたのは1988年の秋。映画はデート向けでもファミリー向けでもないので、ほんの一部で話題になっただけだったと記憶している。当時、狂乱のバブル経済に浮かれまくっていた日本の都市部のメインストリームの青春からは、ロサンゼルスのあまりにも厳しい現実は歓迎されなかったのだ。

ほんの一部とは、ヒップホップ/クラブカルチャーに関わる人々や真夜中の渋谷に集う少年たちのこと。感度の高い彼らは音楽やファッションに反応しつつ、近い将来、日本の都市部にも似た光景が描かれることを予感していたに違いない。事実、この後に起こったチーマー現象、カラーギャング、半グレ集団といったアンダーグラウンドな動きはそれを証明した。

アメリカではこの映画はかなりの衝撃を与え、同年のギャングスタラップの礎、N.W.A.のデビュー作『ストレイト・アウタ・コンプトン』と並んでストリートギャングの代名詞となっていく。

この時期のロサンゼルスにはすでに約600組織・約7万人のギャングがいて、1987年だけでも387件ものギャング絡みの殺人事件が発生していた。

中でも青いバンダナのクリップスと赤いバンダナのブラッズなどの対立が激化。住宅街であるにも関わらず、日常的に絶え間なく暴力が起こる荒廃エリア。空き地に死体、子育てを放棄してドラッグに溺れる母親、強盗や銃声は当たり前。そのど真ん中にいたのが、黒人やヒスパニックの若者たちだった。

警察や郡保安局も黙っていたわけではない。CRASH(Community Resources Against Street Hoodlums)やOSSといった捜索チームで対策にあたるが、その数わずか250人。

『カラーズ/天使の消えた街』は、このCRASH視点からギャングたちの抗争を追及していくストリート・ムービーの傑作。企画段階から関って主演したショーン・ペンは、ハリウッドのアウトサイダーとして知られたデニス・ホッパーを監督に推薦。音楽はハービー・ハンコックが担当。ロス・ロボスのオープニング曲やアイスTのテーマ曲が耳に残る。

また、脚本家のマイケル・シファーはテレコ片手にCRASHやOSSのパトロールに24時間体制で密着。ストリートギャングの実態に肉迫した。

自分の予備知識がほとんど吹っ飛んだ。生まれながらにして犯罪環境に置かれ育つ連中の行動様式、考え方は、こちらの想像をはるかに超えていた。


エキストラには本物のストリートギャングの少年たちが起用された。ある日のこと。現場に遅れてやってきた少年がいた。彼にはその場の状況は分からない。

突然、撮影用の銃声がした。瞬間的に少年は床に腹ばいになった。連中は戦火の中東にも匹敵する戦闘地帯で生きていることが分かった。


ロサンゼルス市警。まもなく定年退職を控えるホッジス(ロバート・デュバル)は、この5年CRASHに所属し、ギャングと対話する日々を続けていた。「力でねじ伏せるより、連中の心をつかむこと」が彼の信条だ。

対する新米警官マクガバン(ショーン・ペン)は真逆のやり方でCRASHに配属。ベテランのホッジスとコンビを組むことになる。そんな時、クリップスのメンバーがブラッズの少年を射殺する事件が起こり、二人の捜査が始まる……。

この映画を観ていて悲しくなるのは、結末も解決もないことだ。映画公開後の1989年にはさらに年間554件ものギャング殺人へと悪化。1992年にはあのロス暴動が起こり、死者53人、負傷者2000人、逮捕者1万人(86%が黒人とヒスパニック)、放火3600件、崩壊した建物1100件、被害総額10億ドル。

本作が気になった人は、次に『ボーイズン・ザ・フッド』を観てほしい。これは警察ではなく、ギャング視点に立ったストリートムービーの名作だ。

予告編


『カラーズ-天使の消えた街』


*日本公開時チラシ

*参考・引用/『カラーズ/天使の消えた街』パンフレット

評論はしない。大切な人に好きな映画について話したい。この機会にぜひお読みください!
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