TAP the SONG

父親を失った少年の辛く悲しい夏の思い出が、9.11の悪夢と重なってヒットした曲

2015.08.21

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グリーン・デイのヴォーカル、ビリー・ジョー・アームストロングの父はジャズ・ミュージシャンだったが、トラックのドライバーで生計を立てていた。

幼い頃から歌の才能を発揮していた6人兄弟の末っ子だったビリーに、父は音楽の手ほどきを教えてくれた。
そんな父が食道癌と宣告されたのは1983年4月のことで、夏の闘病生活を経て秋を迎えた9月10日に亡くなった。

11歳だったビリーはベッドで毛布をかぶって泣きながら、「起こさないで、9月が終わるまで」と母親に言ったという。
父を失くしたビリーは母が再婚した相手、継父に馴染めなくて音楽に没頭していく。

ビリーはサンフランシスコの対岸にあるイーストベイに住む仲間たちと一緒に、パンクバンドを始めて地元のマイナー・レーベルに認められる。
グリーン・デイとして最初のアルバムを出したのは1990年、父の死から7年の歳月が過ぎていた。

Like my father’s come to pass
Seven years has gone so fast
Wake me up
When September ends

親父が逝ってしまったあの時のように
7年が過ぎるのはあっという間だった
起こさないで
9月が終わるまで


グリーン・デイ初のメジャー作品として1994年に発表したアルバム『ドゥーキー(Dookie)』は、カレッジ・チャートで支持されて大ヒット、全米だけで1000万枚を越すセールスを記録する。

DOOKIE グリーン・デイ

1995年の『インソムニアック(Insomniac)』、1997年の『ニムロッド(Nimrod)』、2000年の『ウォーニング(Warning)』と、確実にヒット・アルバムを出し、ライブを重ねたグリーン・デイは、王道のロックバンドへとなっていく。

そして「ウェイク・ミー・アップ・ホウェン・セプテンバー・エンズ」が収められたアルバム、『American Idiot(アメリカン・イディオット)』が2004年の9月に発売された。

gugreen_day_2015

アルバムが作られた背景には、9.11同時多発テロをきっかけにブッシュ大統領が2003年3月に中東で始めた戦争があった。
それによって動揺していたアメリカの現実が、コンセプト・アルバムの骨格となっていた。

11曲目に収められていた「ウェイク・ミー・アップ・ホウェン・セプテンバー・エンズ」の歌詞は、”9月”という単語から9.11同時多発テロを連想させるものだった。
そしてオフィシャルビデオにはイラク戦争に駆り出される田舎の若者の物語が描かれていた。

冒頭のショートストーリーは田舎町に暮らす若いカップルが、いつまでも一緒にいようと気持ちを確かめるシーンから始まる。

不安そうな女の子は、私を置いて行かないでと願う。

「ずっと離れたくない ずっと一緒にいてね 愛してる」
「わかってる、わかってるよ」
「私を置いて行かないでね」
「もちろん」
「ほんとうに置いて行かないでね」
「わかってるよ、わかってるさ」


しかし、男の子は志願兵となる道を選ぶ。
兵役につけば収入が保障されるし、米国民を守るという使命を果たすことで尊敬される。
その後は大学にも行けるようになるし、除隊後は奨学金を受給して大学にも行けるからだ。


永遠の愛を誓ったパートナーが自分のもとから離れて行ってしまうことに、彼女は泣き叫んで反対する。

避けては通れない過酷な現実を前にして、どうすればいいのか。
答えが簡単に見つかるわけはない。

どうしようもないのだと、男の子は兵士となって戦場に行った。

Here comes the rain again
Falling from the stars
Drenched in my pain again
Becoming who we are

また雨が降ってくる
星空から降ってくるんだ
ぼくの傷口にどんどん染み込んで
自分が誰だかわからなくなる


『アメリカン・イディオット』も全米No.1のヒットとなり、2005年のグラミー賞で「最優秀ロック・アルバム賞」に輝いた。

父を亡くした悲しみを歌った「ウェイク・ミー・アップ・ホウェン・セプテンバー・エンズ」も、非戦・反戦のメッセージと共鳴してヒット曲になった。

As my memory rests
But never forgets what I lost
Wake me up
When September ends

自分の記憶を消そうとしても
失くしたことを忘れることはない
起こさないで
9月が終わるまで

Like my fathers come to pass
Twenty years has gone so fast
Wake me up when September ends
Wake me up when September ends
Wake me up when September ends

親父がこの世を去った時のように
20年もの年月が足早に過ぎて行った
9月までは起こさないで
9月が終わるまで
9月が終わるまで


ビリーはアルバムを出した時のインタビューで、「音楽によって何かが変えられると思いますか?」という質問にこう答えている。

影響は与えられると思うし、その時起こっていることの写真を撮るような意味合いはあると思うんだ。
だって音楽は音楽の歴史に残るだろう。
そして歴史から学ぶのはそれを繰り返したくないという想い。
だから音楽というメッセージ、もしくはコメントは戦争みたいなことを繰り返さないようにするのに役立つんじゃないかな。



(注)ビリー・ジョー・アームストロングの言葉は、「Green Day / General Interview for the album『American Idiot』 2004.08.06@Tokyo」からの引用です。

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