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オーティス・レディング〜フェードアウトしていく口笛に残された「未来」

2017.09.09

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1967年12月10日、バーケイズのメンバーとともにツアー中だったオーティス・レディングは、次の公演地であるウィスコンシン州マディソンへと向かう途中、自家用飛行機の墜落事故により還らぬ人となった。享年26。同年6月に出演した〈モントレー・ポップ・フェスティヴァル〉でのパフォーマンスが高い評価を得て、人種の壁を越え、今まさにスターダムへとのし上がろうという矢先の悲劇だった。

彼の死から6週間後に発表され、自身にとっても初の全米ポップ・チャート1位を記録した「(Sittin’ On) The Dock Of The Bay」。ツアー先のサンフランシスコでボートハウスに滞在中、サンフランシスコ湾をぼんやりと眺めている時に生まれたこの曲は、これまで多くの作品を一緒に作り上げてきたスティーヴ・クロッパーとの共作としてクレジットされている。レコーディングが行われたのは、事故の3日前のことだったという。

「オーティスが空港から電話をかけてきて、『これから直接スタジオに行く! ヒット曲が出来たんだ!』とまくし立てるように言ったんだ。長い付き合いの中で、彼がこんなことを言うなんて初めてのことだった」(スティーブ・クロッパー)

「(Sittin’ On) The Dock Of The Bay」は、オーティスがこれまでに発表したものとは異質の楽曲だった。生前に見せた魂がほとばしるような熱唱と、この曲で聴ける彼の歌声の印象が異なるのは、モントレーでのフェスティヴァル出演後にポリープの手術を受けた影響から。哀愁を漂わせながらも、どこか悟りきったようなおだやかな歌い方が心に沁み入ってくる。

ここに座って、心の重荷を降ろすんだ
この孤独は僕を置き去りにしないだろう
2000マイルも放浪して
やっとこの波止場を故郷にできたんだ

波止場に座って 船が旅立つのを眺めている
波止場に座って ぼんやりと時間をつぶしている


ツアーで各地を飛び回っては全身全霊をぶつけてステージに上っていたオーティスが、ぼんやりと水面を眺めながらもう一度〈歌〉と向き合い、これからの道を見出した「(Sittin’ On) The Dock Of The Bay」。オーティス・レディングにとってまさしく新境地となる曲であり、彼にとっての27歳はシンガーとして新たな評価を獲得する一年となるはずだった。

「僕がオーティスと最後に会ったのは金曜日。ひとりでスタジオに入って、エレキギターのトラック録りをはじめた時、ツアーに出発する直前のオーティスがスタジオを覗きにきて『行ってくるよ! また月曜日に』と言って別れたのが最後だった」(スティーブ・クロッパー)

次の月曜日に残りの録音が行われるはずだった「(Sittin’ On) The Dock Of The Bay」は、歌詞が完成していない部分を即興で吹いた口笛のメロディーが残されたまま、静かにフェードアウトしていく。


オーティス・レディング『The Dock Of The Bay』
ワーナーミュージック(1968年)


*本コラムは、2013年12月14日に初投稿された記事に加筆修正を施したものです。


TAP the POP 特集 ミュージシャンたちの27歳~青春の終わりと人生の始まり〜

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