アルペジオによる美しいギターのリフと、すべての贅肉を注ぎ落としたようなドラムとベース、そしてスティングの魅力的なヴォーカルによる「見つめていたい(Every Breath You Take)」はポリスの代表曲であり、ロックのスタンダード曲としても知られている。
妥協を許さぬ完璧ともいえる曲の構成と、トリオならではの緻密に計算されたアンサンブルとサウンド、そして独特の緊張感はこれぞポリスというべきなのだろう。
スティングはこの曲の誕生について、夜中に目が覚めて、頭の中にあの一節が思い浮かんだと語っている。
君の息づかいも、行動もすべて、僕は見つめているよ
特別な曲が出来たと直感したスティングは、イギリスに戻ってからロンドンのスタジオで、エンジニアと二人でデモ・テープを録った。
「この曲は、‘Message In A Bottle’ や‘Da Do Do…’でも起用した僕の代名詞とも言える9thのコードがベースになっています.
その9thのコードこそが可能性の領域を広げ、歌詞自体の曖昧さを効果的に引き立てながら、このシンプルかつ不思議な楽曲に、他では成し得ないような音調の精巧さをもたらしたんです。
不吉さと奇妙な心地良さを兼ね備えていて、それこそがいまだラジオで最もOAされる1曲であり続ける理由なのかもしれない」
スティングはデモテープで骨格が出来上がった「見つめていたい」を、バンドのアルバム『シンクロニシティ(Synchronicity)』に収録するため、ポリスのメンバーに聴かせた。
そのときにギタリストのアンディ・サマーズが、あの印象的なギターのフレーズを思いついたのである。
「スティングが『自分なりにやってみろ』って言うから、それであのフレーズを曲に合わせてみた。その時すぐに、僕たちは特別な曲が出来たと直感した」
アンディはその頃、キング・クリムゾンのギタリストだったロバート・フリップとアルバムを作っていた。そのなかで、ハンガリーの作曲家バルトークのヴァイオリン・デュエットを試していたのだが、そのときに「新しいリフを作り上げたんだ」と述べている。
こうして不吉とも言える内容の歌詞と美しいメロディーだけでなく、音楽史に語り継がれるほど印象的なリフが組み合わされたことの効果で、「見つめていたい」は世界的なヒットに結びついたのだった。
最大のヒットになったアメリカではシングルチャートで8週間もトップに立ち、アルバム『シンクロニシティ』も記録的なベストセラーになった。
しかしこのアルバムを最後に、常にメンバー内の確執が伝えられていたポリスは、グループとしての活動を停止する。
(注)スティングの発言は下記サイトからの引用です。
スティングのセルフカバー最新作から「Every Breath You Take / 見つめていたい」を公開。自身が語るこの曲が今も愛される理由とは?