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少年少女を熱狂させ未来を創った、ビートルズ来日の立役者たちの物語 〜「ウェルカム!ビートルズ」〜

2018.03.27

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今や戦後日本の歴史の一部として語られる1966年のビートルズ来日。

ビートルズが日本に来た5日間は、日本の音楽やショービジネスのあり方を変えただけでなく、公演やテレビを通し
てビートルズを目の当たりにした人々の人生をも大きく変えた。 

そんな公演を実現させるために奔走したのは、音楽に魅せられた「ミュージックマン」たち、そして日本の発展を強く願っていた経済人たちだった。

 「ウェルカム!ビートルズ 〜1966年の武道館公演を実現させたビジネスマンたち〜」は、その影の立役者たちの知られざる物語にスポットを当てている。

この本では当時の資料を基にして、著者の佐藤剛が「東芝音楽工業」を設立した石坂泰三と、日本の音楽産業の礎を築いた石坂範一郎を中心に、ビートルズ来日に尽力した立役者たちの軌跡を追っている。

大企業東芝グループの会長、石坂泰三がかつてビクターレコードを傘下から手放してしまった後悔と執念によって生まれた、新興レコード会社「東芝音楽工業」。

会社を任された石坂範一郎は、知識と経験、そして音楽への深い情熱によって東芝を一大レコード会社へ成長させる。
 
その東芝が1964年にリリースしたのが、ビートルズの「抱きしめたい」、「プリーズ・プリーズ・ミー」であった。

ビートルズは日本の若者にも受け入れられ、一大ブームを巻き起こす。若者たちが熱狂する姿を見た範一郎は、ビートルズの来日公演を実現させるべく動き出す。

1960年代当時、ビートルズを日本に呼ぶためには幾多の障壁を乗り越えなければならなかった。

ビートルズを「異質なもの」とみなし、エレキギターと長髪を「不良のもの」と決めつけていた当時の世論や、何千人もの観客を収容できる会場の確保、そしてビートルズたちの来日日程の調整やギャラの問題。

全ての問題を取り除くために、ビートルズに魅せられた「ミュージックマン」たちが奔走した。

海外アーティストのプロモーター永島達司、日本のビートルズブームの火付け役となったディレクター高嶋弘之、取材を通しビートルズとの信頼関係を築いた「ミュージックライフ」誌の星加ルミ子と草野昌一、そして財界に顔が効く泰三への協力を取り付けた範一郎。

それぞれの人々が、自分の仕事に尽力し困難を解決していく。

この本を通して見えてくるのは、全ての人がビートルズの持つ新しい可能性に魅せられ、日本の少年少女たちの夢や笑顔のために、それぞれの仕事を全うしている姿である。

プロフェッショナルが誰一人欠けても実現できなかったのだ。

そのようなプロたちの仕事が日本を熱狂に巻き込んだ5日間を生んだ。そして、一つのバンドの公演が音楽当時の若者たちの人生をもビートルズは変えてしまった。

そんな若者の一人が桑田佳祐である。

来日公演から45年後の2011年。
彼はアルバム『MUSIC MAN』のリードトラックとして、「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」という楽曲を発表した。


この曲は、当時小学校5年生だった桑田が、ビートルズの来日公演をテレビで目にした時の衝撃から着想を経て生まれた楽曲だ。彼は「黒船のような出来事だった」と表現しながら当時の様子をこのように回想している。

それまで一部の音楽誌や『ミュージックライフ』などの記事でしか見たことのないビートルズが、テレビ画面の中で「Rock And Roll Music」や「Yesterday」を歌っている。その姿を見て、“うわぁーすげぇー、ジョン・レノンって金髪かよ”などと思っていた私の横には、ボロ泣きしている姉貴がいる。そんな状況の中、以来私の中で確実に何かが変わり、何かが始まっていたような気がするのだ。
(『MUSIC MAN』ライナーノーツより)


桑田の楽曲とコメントは、その当時ビートルズを目の当たりにした人たちの想いを代弁しているように感じた。彼のようにビートルズを観て何かが変わり、その後の生き方を定めた若者は多かったのではないだろうか。

だからこそ、今でも多くの人が当時のことを語り、来日公演の様子が今でも伝えられているように思える。来日に関わったミュージックマン、ビジネスマンたちの想いは、当時の少年少女たちに確かに届いていたのだ。
 
そして、ビートルズに魅せられた多くの人が日本の未来を創り、私たちが生きている今に繋がっている。僕は「ウェルカム!ビートルズ」を読み終えたとき、そう思わずにはいられなかった。


『ウェルカム! ビートルズ 1966年の武道館公演を実現させたビジネスマンたち』(単行本)
リットーミュージック

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