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サザンオールスターズのように茅ヶ崎から新たな日本語のポップスを生み出したSuchmos

2018.12.29

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日本のポップスは海外から入ってきた最新の音楽を、日本らしく解釈して表現することによって進化してきた。
その中でも「洋楽的なメロディの中で日本語をどう響かせるか」ということを、日本のシンガーたちはいつも考え続けていた。

そして日本語を英語のように崩して歌ったサザンオールスターズの桑田佳祐をはじめ、様々なシンガーたちが新たな「日本語の響かせかた」を追求してきた。
甲本ヒロトや桜井和寿、椎名林檎、宇多田ヒカル。
日本語に新たな響きをもたらしたミュージシャンたちは、時代を代表するシンガーになっていった。

そして2010年代において、新たな日本語の響かせ方を生み出したバンドがSuchmos(サチモス)である。
ヴォーカルのYONCE(よんす)は桑田佳祐と同じ茅ヶ崎出身だ。

YONCEとロックの出会いは中学生の時だった。音楽好きだった叔父の家に行き、そこでロックの名盤たちとギターを渡されたのがきっかけで、ロックバンドに興味を持ったという。
ビートルズやエリック・クラプトンのような60年代のものから、2000年代の作品まで様々な音楽を聴いた中で、彼は90年代のロックに耳を奪われた。
ニルヴァーナのカート・コバーンやオアシスのリアム・ギャラガーのロックスターの佇まいと歌がYONCEの心を掴んだのだ。

大学生になった彼はバンドを結成し、地元のライヴハウスを中心に活動しながら、同年代のミュージシャン仲間と交流を深めていく。
その中で音楽への志や向き合い方が似ているミュージシャンたちと出会い、お互いに好きな音楽を毎晩のように聴き合いながら、音楽談義を繰り広げていた。
ミュージシャン仲間によってロックだけでなく、ソウルやヒップホップ、ジャズなどの様々な音楽を知ったYONCEは、彼らとともにロックバンドを結成した。

そうして誕生したSuchmosは、仲間に自分の好きな音楽を聴かせる感覚で、好きなフレーズを楽曲に入れ込んだセッションを繰り返した。
すると自然に、メンバーが好きな音楽の要素が混在した楽曲が生まれていったのだ。

Suchmosの5人が生み出すグルーヴィーな演奏に合わせて、YONCEの歌も独特の倍音と日本語をこもらせて歌うという、それまでにないスタイルに変わった。
そんな自由なセッションからファーストアルバム『THE BAY』が生まれる。

その中に収録されている楽曲「Pacific」には、彼らが作り上げようとしていた「新しい日本語ロック」における、一つの形が示されていた。

ロックだけでなくジャズやヒップホップ、ソウルが一体となったような味のある演奏に、言葉をこもらせて英語のように響かせるYONCEの歌が響く。

YONCEの故郷、茅ヶ崎の情景を歌った歌詞の中には、「愛の言霊」というサザンオールスターズの曲名が使われている。
彼らは海外のロックを取り入れ、日本のポップスの常識を壊していった桑田佳祐のように、新しい日本語ロックを作り上げようとしていた。

ラジオを通じて爆発的に広まったSuchmosの楽曲は、多くの人に知られるようになっていく。
デビューの翌年にはFUJI ROCK FESTIVALに出演し、2017年にリリースしたアルバム『THE KIDS』は20万枚以上に売り上げを伸ばした。
しかし、彼らはあくまでも自分たちの音楽を追求することに徹している。

「(音楽やファッションも)次はこういうスタイルが流行りです、みたいな感じになって、結局みんな同じような格好をしている。そういうふうに誰かに決められた価値観の中に組み込まれていくことに対して、俺は常に『NO!』を突きつけたい」
『SWITCH』2017年2月号より


この言葉の通り、大ブレイクを果たした後も、時流に流されることなく活動を続いている。
NHKのワールドカップのテーマソングに抜擢された「VOLT-AGE」も、今までのサッカーの応援歌のイメージとは違って、バックビートが印象的である。

サッカー選手が抱く静かなる闘志、自分たちの音楽に対するスタンスを重ねた歌詞、そしてサイケデリックな演奏。
Suchmosは自分たちのスタイルを貫き通しながら、日本のポップスの新たな可能性を切り開いている。

 

(注)本コラムは2018年7月9日に公開されました。
Suchmos『THE ASHTRAY』
F.C.L.S.

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